熱気球について
(仕組みと構造)
熱気球は、「空気より軽いから浮かぶ」単純な乗り物で、他の空中を飛ぶ乗り物とは本質的に異なります。ハングライダー、パラグライダーなどを含めたグライダーや飛行機の仲間は、「速度」がなければ(失速すれば)直ちに墜落します。ヘリコプターは機械的構造が複雑でどこかに欠陥があればやはり墜落します。熱気球は、原理も構造も単純な分だけ、空中を浮かぶと言う意味では最も安全な乗り物だと言えます。
熱気球の仕組みや構造について、簡単に解説します。
<熱気球の仕組み>
熱気球は「熱い空気は冷たい空気よりも軽い」という原理に基づくものです。球皮と呼ばれる大きな風船の中の空気を加熱すると軽くなり、浮力が得られます。球皮が大きいほど、また球皮中の空気温度が高いほど大きな浮力があり、より重いものを持ち上げることができます。
熱気球では、上昇と下降の調整が出来ます。けれども舵がないので、方向は「風まかせ」です。しかしながら、朝夕の風の穏やかな状態の時には、地上付近、中層、上層と、高さによって無数の風の層があり、各々違った方向に吹いています。だから、気球の高度を調整することによって、ある程度、行きたいと思う方向に進めることも出来るのです。
<熱気球の構造>
熱気球は、熱い空気を蓄える「球皮」、球皮内の空気を加熱する「バーナー」、人が乗る「バスケット」の大きく3つに分けることができます。一般的な3〜4人乗りの熱気球で、高さ約25m、直径約17m程度です。私達のクラブの気球もほぼ同じ大きさです。
<球 皮>
熱気球の大部分は球皮です。球皮は、下端の開口部の難燃布を除いて、軽くて強度の高いナイロン等の化学繊維を、裂けにくいように織った薄い布でできています。ナイロンは、瞬間的に炎があたっても先ず溶融するので、燃え上がることが少なく、危険は少ないといえます。
球皮は、水滴を逆さまにしたような形です。熱の発散を最小限にし、しかも空中で安定に保つためです。シワができたり部分的に力がかかったりしないように計算して作られています。私達のクラブの気球の場合、気温15℃程度なら約600kgを安全に持ち上げることが出来ます。燃料と機体の総重量約320kgを差し引いた残り280kgが人間の乗れる安全な重さとなります。
球皮の頂上部にはパラシュートと呼ばれる排気弁があり、下降したい時、熱い空気を少し逃がしてやれば、浮力の調整ができます。
<バーナー>
気球のエンジンともいえるバーナーは、錆びにくいステンレス製で、大きな球皮内の空気を短時間で加熱できるように工夫されています。シリンダー(ボンベ)内のプロパンを液体のまま取り出して、バーナーのコイル部分で強制気化することにより、家庭用ガスレンジの1000倍くらいの勢いで燃焼させます。風で消えにくい構造の種火用パイロットバーナーを点火しておき、メインバーナーのバルブを開くと、大きな音をたてて勢いよく数メートルの炎が燃え上がります。
熱気球のバーナーは必ず2つの燃焼系統を持ち、たとえ上空で片方が使用できなくなっても、もう一方の燃焼系統がすぐ使えるようになっています。
気球の飛行中はバーナーを焚き続けているわけではありません。上昇するときには焚く時間を増やし、水平飛行のときは自然に冷却される分だけ少しずつ間隔をあけて焚き、また、ゆっくり下降したいときには焚く時間を短く間隔を長くして自然に球皮内の温度が下がるように調整するのです。
<バスケット>
バスケットは人が乗る部分で、籐(とう)でできています。籐は、着陸のときの衝撃を吸収してやわらげてくれることと、軽くて丈夫であり、しかも復元力のある材料だからです。バスケットの大きさは、3〜4人乗りでだいたい1.1×1.4m位、深さ約1.1mで決して広いとは言えません。
バスケットはステンレスのワイヤー(通常8〜16本)で球皮にぶらさがっています。バスケットには容量20kgのプロパンガスシリンダーが通常3〜4本積み込まれ、約2〜2.5時間の無着陸飛行が可能です。シリンダーは軽量化のためアルミ製の物が多く、安全のため燃料残量計が取り付けてあります。
飛行するときには地図、コンパス、GPS、高度計、昇降計、球皮内温度計、無線機、予備の着火器、消火器等を搭載します。