ベルダンディーは落雷に撃たれたかのように横たわった。アンティアにかけよった時に、ガイ
アを囲んでいたリンクがはじけて、その破片が直撃したのだ。しかし、運よくウルド達の近くに
投げ出されていた。
「お姉様、しっかり」
スクルドは泣きじゃくってベルダンディーによりそった。
ガイアとアンティアは見つめ合うような状態で、漆黒の煙を吐き続けて、部屋は少しその色
に染まるように見えた。
「私を早く、…アンティアとガイア様の間に…」
ベルダンディーはかぼそくうったえた。
「何言ってるのよ。そんな体の状態でどうしようというの」
「神様から、…アンティアをガイア様に融合させるの。…私はその媒介なのよ」
ウルドに力弱くこたえた。
(…螢一さん)
螢一はベルダンディーのつぶやきを聞いた。というより心に呼びかけるのを感じた。 螢一は
手鏡を見つめた。
(…ガイアに通じる扉へ…)
螢一は、風の強くなった庭に出て、扉の上に立った。そして必死に彼女を感じようと集中し
た。すると、螢一は気がつかないが、地上の精気が彼に集中してきたのだ。
「早く私をアンティアとガイア様の間に連れてって」
必死の形相でベルダンディーは懇願した。しかし、部屋の重圧はふくれてきて、空間もゆが
み始め、三人はいつのまにか空中にういているような状態だった。
「無理よ。こんな状態になっていては、近づくこともできないわ」
「いいえ、三人が力を合わせればできるわ。念を集中して飛ぶのよ」
二人はベルダンディーに促されて、念を集中した。三人は進み始めた。はたから見ると、ゆ
っくりで、虫がふらふら飛ぶように進んだ。
「ありがとう、姉さん、スクルド。二人の間の中心のところに私を投げて」
とまどったスクルドだったが、ウルドは有無を言わせずベルダンディーの体を押し出した。ベ
ルダンディーはその中央で止まり、ガイアの方へ向き、ガイアから発せられるカオスの波動を
受け止めた。ベルダンディーの体は漆黒の色に変色してきた。そのまま後ろに振り返り、カオ
スの波動に共鳴しているアンティアの目を凝視した。ベルダンディーは呪文を唱えた。すると、
アンティアはひきよせられるようにベルダンディーに向かっていった。
アンティアはベルダンディーにぶつかった。いや、アンティアはベルダンディーに溶け込むよ
うに重なった。そのままガイアの方へと進んでいった。
ベルンダンディーを通り過ぎた時、アンティアは我に帰った。ベルダンディーの後ろ姿を感じ
て、自分の使命を悟った。そのままガイアに溶け込んでいった。
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