『必要とする者・必要とされる物』 



 この世に生を受けて18年。
 この18年の時を流れて、蛮の元に一通の手紙が届いた。
 手紙の差出人は、『20世紀最後の魔女』と言われ、数年前に亡くなった祖母からで、手紙を届けに来たのは、祖母の弟子であり親代わりでもあるマリーアだった。


「あなたが誕生した日に、ウィッチクイーンが書かれた手紙よ。」

 マリーアが差し出した手紙を素直に受け取れば、時の流れを感じさせる物だった。
 封筒をひっくり返せば見慣れた祖母のサインがあり、今日の日付も示されていた。

「しかも、渡す日付指定でかよ……予言の書っなんて言わねぇよな」
「私は内容までは聞いていないわ。指定した日付に渡してくれって頼まれていただけだから」

 ゆっくり封筒を開け、中の手紙を取り出す。
 開けた手紙の文面に目を向ければ、『必要とする者・必要とされる物』としか、書かれていなかった。

「ケンカ売ってんのかっクソババァ!!」

 蛮の額に青筋が浮かび、無意識に手に力が入る。勢いに任せて破り捨ててやろうとすれば、マリーアに止められてしまった。

「破っては駄目よ。魔女が血を使う時は、目的に対して思いを込める。この手紙には蛮を守る為のウィッチクイーンの思いが込められているから」

 再度文面に視線を落とせば、文字の色に気付く。
 年月により黒く変色しているが、間違いなく血の跡だった。
 魔女の血の役割や意味は、儀式の内容で大きく変化する。そして、本人の願いが強いほど、結果に膨大な差が生じるのであった。

「ウィッチクイーン亡き今、正確な理由は不明だけど。今のあなたの星回りは複雑な状態にあるわ。自分だけの力だけでは、回避が出来ないほどに。三日三晩は肌身離さず持っていなさい」 

 マリーアの忠告も頷けるものはあった。
 昔、祖母から直接忠告もされた。


『お前の星回りは複雑な状態にある。特に18〜19歳の間は、命に関わる危険も数多くあるだろうが、お前を必要とする者もおる。己を必要とする者の為にも生きよ』
 母親の暖かさが恋しくても、自分の存在を忌み嫌う母親には近づけなくて、幼い頃一度だけ祖母の腕の中で泣きじゃくった事を思い出した。


「危険は数知れず体験してきたんだぜ。今更って感じもするが、言いつけ守らねぇと反動が怖いからな」

 あの時の祖母の瞳を思い出し、蛮は手紙をズボンのポケットに仕舞い込んだ。

「蛮、待って」

 マリーアの言葉に『まだ、用があるのかよ?』って振り返れば、柔らかい手に顎を取られた次の瞬間、額に一瞬の暖かさを感じた。

「おい!」

 呆気に取られて怒鳴り返せば、魔女たる気品さで見すえてくるマリーアの眼と合って、突然抱きしめられた。

「ウィッチクイーンの名の元に、聖なるご加護を……。やっぱ、蛮は抱き心地が良いわね」
「何しやがる。ババァ」



 この時には、手紙の言葉の意味も忠告の意味も曖昧な状態だった。
 でも、確実に運命の歯車は回っていた。


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※コメント
  GetBackers 奪還屋 初小説です。
  裏的要素は含まれるかと思います。
  そして、話数のメドは考えていませんが、シリーズものです。

  GetBackers 奪還屋に自分が興味を示すとは思っていませんでした。
  ビデオで数巻見て、漫画買って、ネット徘徊して、気付いたら小説を書いてました。
  テニプリに続く浮気です。
  GWの小説書かずに何をしているのでしょうか……撲殺的自分
  仕事も無視しています。



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