御前試合、当日。
闘技場の周りには、女官や神将達が観客として集まっている。
来賓席はその少し奥、一段高い所だ。

1回戦で、トライローが闘技場に上がると、観客がざわめいた。
彼女は、手に何も持っていなかったのだ。
そう、彼女の選択肢は、『素手で戦う事』。

対する相手の得物は『棒』。

リーチの面では圧倒的に不利ではあるが、
機動性でカバーできる自信が、トライローにはあった。

(私の修行の成果、見ていて下さい。イルヴァーナ様!)

一度だけ、来賓席の彼の姿を確認し、
トライローは気を集中する。

「始め!」

審判の声と同時に、
トライローは相手の懐へと飛び込んだ。

彼女の動きの速さに、相手は反応できない。
その間に、トライローは相手の棒を手刀で叩き落とし、
相手の背後へ回り込む。

そして。

背中に一発。強烈な掌底を叩きこむと、相手はたまらず倒れこんだ。
すかさず、腕をとって、後ろ手に、押さえこむ。

「そこまで!」

…一瞬の出来事。
圧倒的な実力差だった。

こうして、トライローは、順調に勝ち上がっていった。


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