名前を呼んで



ちょっとしたキッカケから
私には先生ができた。。
とはいっても、そう大層なものではなく。

「踏み込み遅れたよな、今」
「うるさい!わかってる!」

私が修行していると、
奴は時々、ふらりとやってくる。
そして大抵は、近くの木の上に陣取って
私の修行に茶々を入れる。
それが、奴の「指導」。

態度も悪い。
言葉も悪い。
インドラ様の御指導とは比べ物にならない。

けれど贅沢は言っていられない。
私はもっと強くならなければいけない。
インドラ様やヴィシュヌ様、
そして、たくさんの仲間達が私達に託した、
この天空界を守るために。


――ヒュ


唐突に後ろから飛んできた木の枝を弾き飛ばすと、
眉間にビシリと衝撃が走った。

「痛っ!」

跳ね返って、コロコロと地面に転がったのは、小石。

「はい、死んだ。…って、もう何回目だ?」
「…7回目」
「正解」

奴の言う事は本当に無茶苦茶だ。
必死に修行をしている最中に突然攻撃を仕掛けてきて、
それを全て避けろというのだ。

「本当にできるようになるのか、こんなこと」
「オレはできる」

毎回の事ながら、
さらりと言われて頭が痛くなる。
そりゃ、石を投げるのが並の神将であるなら、私にだってできるかもしれない。
けれど、奴は違うのだ。
いい加減、気づいて欲しい。
たとえ全神経を集中したとしても、
今の私では、お前の攻撃を避けることなんてできないのだということに。
そうだろう、アカラナータ。

「…全く、何度も同じこと言わせんなよ、那羅王」

そんな私の心の声が聞こえるはずもなく。

木の上の「奴」は片手で新たな小石を弄びながら、ニヤリと笑った。


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