家にもどると、そのメキラが来ていた。

「おかえりー」

白金の髪に白いローブ。
「霧の死神」という通り名に不釣り合いな出で立ちの彼は、
勝手にコーヒーを入れ、くつろいでいた。

「も〜、どこ行ってたんだよ〜」
「滝。いつもの」

そうイルヴァーナが答えると、メキラはゲンナリした顔になる。

「本当、イルは滝が好きだよね…」
「…術の開発に行き詰った時は、滝行が一番なんだよ」

雑談もほどほどに。
せっかくなので、先ほどの彼の件について、聞いてみることにした。

と。

「ああ、あっくんね。まさか、こんなに派手に壊れるとはね」

悪びれる様子もなく、メキラが答える。
やはり、メキラが原因らしい。

「…ちなみに、今回は何を言ったんだよ。尋常じゃないぞ、アレは」
「え、大したこと言ってないよ〜」

そう、言って笑うと、メキラはコーヒーを一口。

「なんだったかなあ、『弱くなったね』だったかな」
「うわ…」

思わず、口にでる。

アカラナータは確か、異常なまでに強さに固執していたと記憶している。
それは…へこむ、かも。

しかし、へこんだのは彼だけではなかったようで。
「でもさ、あんなにひっぱるとは思わなかったんだよ…理由もすぐわかると思ったし」

メキラは、コーヒーをさらに一口飲むと、
スプーンでぐるぐるとカップの中身をかき混ぜた。
彼が、心底困っている時にやる癖だ。

そんな彼は、やはり、責任を感じていたらしい。

「しかし、まさかここに来るとはね〜。追いかけるのも、大変だったよ」
「アナンタ君に場所はおしえといたから、あとは大丈夫だと思うけど」

やはり、ここには、アカラナータを追って来たらしい。

やれやれ、とイルヴァーナはため息をついた。
そんなに心配するぐらいなら、やらなければいいのに、と。

「そうはいかないの。だって事実だからさ」

一応、師匠としては指摘してあげないと。

そう言うメキラは、それでもやはり不安そうで。

「…笑顔がひきつってるぞ、メキラ」

イルヴァーナは、無くなってしまったコーヒーを
足してやってから、メキラの顔を軽く叩いた。

「とりあえず、夜になったら、様子見に行ってやるから」

そう説得すると、ようやく、少し安心したようで。
彼は追加のコーヒーを飲むと、大人しく帰っていった。


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