虫歯



虫歯とは?
虫歯は歯に穴があく病気です。虫歯は穴が大きくなると歯の中心部にある歯髄(※1)に近くなります。この歯髄は感覚があるので、虫歯になると歯がしみたり痛みを感じたりするのです。
※1 歯髄は歯の神経と呼ばれている組織で、血管やリンパ管神経組織があり、歯に栄養を与える大切な役目を果たしています。


なぜ歯に穴が開くのでしょうか?
虫歯は1800年にミラー博士によって発表された「科学細菌説」が現在でも正しいとされています。
口の中にいる細菌(※2)は、口の中に入ってきた糖を分解して酸を作ります。ところが、お口の中が酸性になると唾液の力によって中性に戻されるので(※3)これだけでは虫歯になりません。問題は、糖分の中でも特にショ糖(砂糖)が、酸と伴に粘着性で水に溶けないグルカンという物質を形成することが問題です。細菌はこの物質によって、歯の表面に付着して細菌の集合体(※4)になります。この状態は細菌が歯に密着しているので、唾液で細菌の出す酸が洗い流されることはありません。歯に付着した細菌は口の中に入ってくるすべての糖分(※5)から酸を作り出し、歯を溶かしてしまいます。これが虫歯です。
※2 主にミュータンス菌(S. Mutans)      ※3 唾液の緩衝能
※4 細菌の集合体を歯垢(プラーク)と呼びます。
※5 果糖(果物に含まれる糖分)、乳糖(乳製品の中に含まれる糖分)等


糖分(特に砂糖)が口の中に入らなければ
虫歯にならないのですか?
ある大学の研究でナイジェリアの都市部と、文明に殆ど接していない部族の虫歯の状態を調査した結果、都市部においては多くの虫歯が認められ、文明に殆ど接していない部族においては1%程度の虫歯の発生率しかありませんでした。このような傾向は、1930年にワシントン・エー・プライスが発表した論文の中にもあります。欧米文化の進入と伴に糖分が入ってきたために虫歯が多発したようです。その中でもニュージーランドの先住民族では、過去の頭蓋骨の調査で数百年の間1万本に1本の虫歯しかなかったそうですが、近代文明と伴に糖分入ってきた時から虫歯が多発したようです。


歯を磨いているのに虫歯になるのはなぜ?
日本人の殆どの方は、毎日2回以上磨かれています。ところが、殆どの方が何度も虫歯を繰り返しています。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?目を閉じて部屋を手探りで掃除して綺麗にできるでしょうか。それと同じことを歯磨きでされていませんか。つまり、今のされている方法で本当に磨けているのでしょうか? 歯の裏側・奥歯の奥側・ 歯と歯ぐきの境・歯と歯の間は?歯磨きをされるときに全ての歯の面を磨かれていますか?磨けたかどうかを見て確認されていますか?

虫歯を予防する方法 その1
虫歯を直接的に予防するためには、2つの点をコントロールする必要があります。
1つ目は糖分です。糖分の摂取量と摂取時間(※6)が多くなれば、虫歯になる危険性が高くなります。
2つ目は、歯の表面に付着している歯垢を完全に取り除くことです。歯の表側や咬み合わせの面だけではなく、歯の裏側や歯と歯の間など、歯のすべての面を確実に清掃することとが大切です。
※6 口の中に入っている時間です。飴を舐めることや砂糖入りの飲み物を長時間ダラダラと飲むと長くなります。

<プラークコントロールの意味>
プラークコントロールという言葉をよく耳にするようになりました。本来の意味は、虫歯の原因であるプラーク(細菌の塊)を虫歯にならない程度にまで減らすようにコントロールするという意味です。


虫歯を予防する方法 その2

虫歯を間接的に虫歯を予防する方法があります。
「フッ素」という薬品を有効に使うことにより虫歯の予防ができます。フッ素は歯の表面を固くしたり、細菌の働きを抑制したりします。高濃度と低濃度のフッ素を組み合わせて使うことにより、より高い予防効果があります。 食品をキシリトール、パラチノースなどの酸を作らない糖分にすることによって、虫歯になりにくくすることも出来ます。


虫歯は早期発見が大切です
虫歯といえば、穴が開いている状態をイメージされると思います。ところが、大きな穴がいきなりできるのではなく、歯の表面が少し溶けた状態から徐々に穴が開いていきます。初期の虫歯を発見できれば、治療も簡単に済みますし歯に与えるダメージも少なくなります。しかしながら、歯と歯の間や詰め物やかぶせの隙間中の状態は直接に見ることができません。そこで、定期的な検診(※7)とレントゲン診査(※8)で早期発見することが大切です。
※7 集団検診ではなく、歯科用の診療椅子に座っていただいて強力なライトで照らしながら1本ずつ 確認することです。小さい虫歯はこの位しないと発見できません
※8 パノラマ(お口全体が写る大きなレントゲン写真)では、細かい虫歯は発見できません。3〜4本  づつ写る小さなレントゲン写真を撮影する必要があります。