インプラント

 

インプラントとは?
1、2本の歯を失った場合は、前後の歯を削って3本の歯を入れる治療(固定性のブリッジ)、多くの歯を失った場合は残った歯にバネをかけて義歯(取り外し式の入れ歯)を入れる治療が通常の方法です。残念ながら、どちらの方法も残っている歯に負担をかけてしまいます。そのため、歯を永く使うための治療方法として、理想的な方法ではありませんでした。 インプラントは顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む方法で、乳歯、永久歯、の次に存在する歯という意味で第3の歯と呼ばれることがあります。なぜなら、歯を失ったところにインプラントを埋め込むことにより、新たに歯が生えてきたような状態になるからです。残っている他の歯への負担を軽減できるだけではなく、自然に近い機能回復が可能な理想的な方法だと考えられます。

インプラントが他の治療方法より優れている点と問題点
<優れている点>
・ 義歯のように取り外して清掃する必要がありません
・ 歯に近い形なで違和感が少なくてすみます
・ 歯と同じように咬むことができます
・ 見た目にも自然な歯と変わらないようにできます
<問題点>
・ 咬んだときに響くような感覚があります。(※1)
・ 手術を伴います。
・ 長期間の治療が必要になります。(※2)
・ 高度な技術と手術を伴いますので、健康保険外の費用が必要です。
(※1)歯と骨の間には歯根膜という組織がありますが、インプラントは骨に直接くっついているのでるので、咬んだときの感覚が歯と多少違います。
(※2)術前の検査、埋入手術、冠の作成等に最短で6ヶ月は必要です。


インプラントの成功率と失敗する場合
初期のインプラントに比べて成功率はかなり高くなってきましたが100%ではありません。 しかし、術前の十分な準備と手術中の管理と治療後のメインテナンスを十分に行えばかなりの確率で成功します。 失敗するのは、骨の状態が悪い場合や糖尿病や免疫力が低下する全身疾患が原因で埋めたインプラント周囲に骨が出来ない場合が考えられます。 また、治療完了後の管理不足(歯磨きやクリーニングの不足、咬み合わせの変化)や全身疾患の問題でインプラント周囲の骨が溶ける場合が考えられます。その他にも、咬む力が強すぎて破損するケースもあります。      

生存率(どれだけもつのか)
インプラントがどのくらいの期間使えるかという点に関しては、個々の状態によってかなり差があります。相対的な比較としてのインプラントは健康な歯よりは弱いのですが歯周病が進行した歯・歯の根の条件が悪い歯・歯の神経を失って歯の量が少ない歯よりは強いです。このことは、十分な管理を行えば健康な歯とほぼ同様にかなり長期間使可能ということです。しかしながら、インプラントになることは、ご自身の元々健康な歯を失った事実があります。つまり、歯を失ったところに単にインプラントを埋めるのであれば、以前あった歯と同様に悪くなります。長く使うためには、歯を失った原因を明確にし、再発しないような治療と管理を十分に行うことが大切です。


インプラントを成功させるためのポイント
インプラントを成功させるためには、単に歯を失った部分にインプラントを入れるという考えでは難しいです。

(1)精密検査
インプラントが失敗する原因は、歯を失う原因と同じ歯周病や咬みあわせの問題が ほとんどです。これらを防ぐためには、まず、お口全体の状態を詳しく調べることが大切になります。今までどのような原因で歯を失ったか、虫歯や歯周病の状態、歯の磨耗状態など、現在の状態を詳しく調べることによって、過去の歯が悪くなった傾向がわかります。これは、将来同じ問題を繰り返さないための対策を考え、歯を長持ちさせるための重要なデータになります。

(2)感染予防
インプラントの手術中の感染予防を徹底する必要があります。そのためには器具の滅菌はもちろんのこと、手術を行う周囲の感染予防も大切なことです。また、手術中と手術後の感染予防のためにお口の中の細菌を減らす必要があります。そのためには、お口の中の徹底的なクリーニングと伴に、歯周病や虫歯の問題や細菌の住み家になるような箇所は治療を行う必要があります。

(3)咬合管理
無理な力が加われば物は壊れます。インプラントが壊れないようにするためには無理な咬み合わせの力が加わらないような、咬みあわせの管理が必要になります。

(4)メインテナンス(定期健診)
ご自身での日々の管理が最も大切なことですが、より長く維持するために、定期的な検査と専門家によるクリーニングが必要です。


だれでもインプラントは出来るのですか
殆どの場合が可能です。成長が終った頃から、体力と気力さえあればいくつまででも可能です。しかし、埋め込む部分の骨の状態、上顎洞、下歯槽管の位置によって通常の方法で可能な場合と、高度な治療を伴う場合があります。また、全身疾患がある場合は外科処置を伴いますので、主治医との相談が必要です。

難しい症例に対して
歯周病で歯を失われた場合、顎の骨が少ない場合、骨の密度が少ない場合、骨の幅がない場合、上顎洞(鼻の空洞)が大きい場合等は、インプラントを埋入するのが難しく特別な技術を必要とします。このような場合には、より専門的な知識と技術を兼ね備えた歯科医と施設が必要です。残念ながら関西か関東の都市部でないと、そのような施設と専門医はいません。


インプラント治療を行う前に
インプラントの治療は残っている歯への負担を軽減し、違和感が少なく、よく咬める良い方法です。しかしながら、健康な歯に比べるとあらゆる面で劣っています。失った歯の治療にインプラントを考える前に、今残っている歯を失わないための予防を考える必要があります。なぜなら、今の残っている歯も失われた歯と同様に失う可能性があるからです。残っている歯を長く使う方法を考えることが、埋め込むインプラントを長く維持し、お口の健康守っていくために最も大切なことです。歯を抜いてインプラントを埋めると いう治療を繰り返さないために最も大切なことです。


インプラントの終末

体が元気で通常の生活を送れるのであれば、日々のお口の衛生管理や定期健診での通院も可能ですし、問題が起こった時にも対応できます。しかしながら、老化とともに体の自由が利かなくなることや、病気になることもあります。そのような時に、通常の治療が行えなくなった場合のことも考える必要があります。インプラントも歯と同様に機能していれば何ら問題はありません。しかし、管理できない状況やお口の中に残っていることが、悪い影響を及ぼす状況になったときには、残念ながら除去しなくてはなりません。このような時、より簡単に除去できることが必要です。そのためには、インプラント上部の歯の部分ができるだけ独立した設計で簡単に取り外せることが、問題解決をより容易にできる結果となります。
長寿社会になり、体の自由が利かなくなっても十分に生活できる環境になったからこそ、このような点も考えた設計が必要になるのではないでしょうか。