子供の歯の予防 その1
―3歳までに行う予防ー

3歳まではできるだけ糖分を与えないこと 3歳までは甘いお菓子をできる限り与えないことです。
虫歯は細菌と糖分でできます。糖分がお口の中に入らなければ歯磨きをしなくても虫歯になることは殆どありません。

●毎日、磨いてあげられますか
小さな子供にとって歯磨きの大切さは理解できません。
3歳まで、虫歯ができないように毎日毎日歯磨きをすることはかなり難しいことです。眠い時、機嫌が悪い時、歯磨きを嫌がる時など、調子よくできることのほうが少ないと思います。その結果、無理に仕上げ磨きをすることが多くなってしまいます。無理にすると、もっと嫌になります。もっと嫌になると無理やり仕上げ磨きをすることが多くなり悪循環になってしまいます。そして、歯磨きが大嫌いな子を育てることになります。お母さんは子供のために頑張って磨いたことが、歯磨きが嫌いで磨かない子供を育てることになります。いつまでも、仕上げ磨はできません。歯磨きが自らできるようになるためにも、3歳までは少々歯を磨かなくても虫歯にならない食生活にしてあげることが必要なのです。

●3歳まで糖分を制限する問題点は?
長い人生の中で3年間だけ甘いお菓子を制限することに何か問題はあるでしょうか
甘くて美味しいお菓子を知ってから制限するのは本人も親もつらいものです。最初から知らなければ何もつらいことはありません。せめて、親がコントロールできる年齢まで挑戦してみませんか。

●副産物
甘いお菓子を一つ覚えると3つ嫌いな物が増えるといわれています。たくさんお菓子食べる子供で好き嫌いの少ない子供や、食事の時しっかり食べる子供は少ないと思います。甘いお菓子を食べない子供は好き嫌いが少なく、しっかり食べる場合が多いようです。また、甘い物を知らなことで怒らなくてすむことがあります。飲み物の自動販売機の前でも、スーパーやレストランへ行っても、お菓子コーナーの前でも駄々をこねることは少なくなります。なぜなら、知らないからです。

●糖分に対する考え方
現代の日本で糖分不足での栄養バランスが悪くなったという話は殆どないと思います。糖分の摂取は牛乳、炭水化物、果物から十分にできます。甘いお菓子やジュースで摂取する必要はないのです。

●糖分を制限する具体的な方法は
<飲み物>
喉が渇いたときや水分補給のために飲み物は必要ですが、このときに栄養分補給をする必要ありません。糖分や色々な栄養素の入った飲み物は避けてお茶や水にしましょう。
<おやつ、間食>
子供の胃は小さいのですぐにお腹がすいてしまいます。そのため、3度の食事以外にも栄養補給する必要があります。つまり、食事が4、5回に増えことです。その時、甘いお菓子で栄養補給する必要はありません。糖分の入っていない簡単な食事(おにぎり、サンドイッチなど)にすることが大切です。
<こんなのいいかも・・・>
野菜スチックやおにぎりもいいのですが、「クラコット」「グリッシーニ」(塩分がないものです)「おしゃぶりこんぶ」「干し芋」「バナナ」は携帯に便利で子供も喜びます。


         フッ素を積極的に利用する
フッ素は安全で虫歯予防の有効な薬品です。これを積極的に用いることで高い虫歯予防効果が発揮できます。

☆低濃度のフッ素
低濃度のフッ素(250〜500ppm)をできるだけ長時間お口の中に滞留させておくことによって虫歯予防をおこなう方法です。 このときの主なフッ素の予防効果は再石灰化の促進(虫歯を修復する)と虫歯菌を弱らせることです。

<具体的な使用方法>
歯が生え始めた頃から低濃度のフッ素を歯ブラシに2、3滴付けて本人に持たせることです。 少し大きくなったら、本人の歯磨きや仕上げ磨きのときに行って下さい。 「ブクブク」うがいが出来るようになったら、寝る前の歯磨きを行った後、低濃度のフッ素で  「ブクブク」うがいをして下さい。 寝ている間が最も長時間お口の中に滞留するので、寝る前に行うのが理想的です。

※乳幼児は歯ブラシで喉を突かないように親の監視下でおこなって下さい。

<フッ素の中毒量、致死量>
フッ素は海草、お茶にも含まれている成分で微量であれば問題はありません。通常使われる低濃度のフッ素の場合、フッ素のボトル(200cc)を全部飲んでも初期の急性中毒の下痢をする場合が少しある程度なので、日頃の使用で問題が起こることは全くありません。但し、十分な管理は必要です。

※もし、間違ってたくさん飲んでしまった場合は牛乳をたくさん飲むと中和されます。

☆高濃度のフッ素
高濃度のフッ素(1.23%)を5分程度、弱い電流を用いて歯に浸透さす方法です。
このときの主なフッ素の予防効果は歯の表面を溶かして固い歯を作るので、虫歯の酸に強い溶けにくい歯になります。

<具体的な使用方法>
歯科医院で行える方法です。トレー(歯を覆う物)に入った高濃度のフッ素を口の中に入れて5分程度弱い電流を流す(痛みは全くありません)方法です。
少し気持ち悪いのと5分間、動けないので3歳でも難しい場合がほとんどです。


             歯磨き

歯を磨くという習慣は、お口の健康を守っていくために生涯必要な大切な習慣です。しかし、小さな子供にとって歯磨きの大切さは理解できません。そこで、3歳までは子供にとって楽しい遊び道具の一つもしくは、嫌いではなく毎日使う道具と感じてもらうことが目標です。

<歯磨きの習慣をつける>
3歳までは歯を磨くことが目的ではなく歯ブラシに慣れることです。
4〜6ヶ月頃は何でも口に入れるようになる時期です。この時から歯ブラシで遊ばせると良いでしょう。3歳位までは磨けていることよりも、磨く習慣と本人が磨くという意思を大切にして下さい。自分で磨いたらほめてあげて下さい。習慣は短期間で出来ることではなく、毎日毎日繰り返すことによって出来ることです。少しくらい出来なくてもあせることはありません。生涯必要な習慣ですから長い目で気長にしてみましょう。

<歯磨きの技術を学ぶ>
正確に磨くことは出来ません。最初は歯ブラシをお口の中に入れるだけで十分です。少し大きくなったら、歯ブラシを動かすことを教えてあげて下さい。歯を磨くことが理解できるようになったら、何処を磨いているのかを意識して磨けるように少しずつ教えてあげましょう。

<例>  (1)咬んだ状態で左右の奥歯と前歯 

      (2)開けた状態で上下左右の奥歯 

      (3)歯の上に歯ブラシを当てて上手に動かすこと   
少しずつ少しずつ出来るようになれば良いのです。

<仕上げ磨き>
仕上げ磨きに基本的な考えは子供が自分の力で磨けるようになるまで、保護者が磨けないところを磨いてあげることです。そのための出発点は、仕上げ磨きに慣れることが目的です。
仕上げ磨きが親子のコミュニケーションや子供が甘える方法になってもかまいません。仕上げ磨きをする習慣をつけることが大切です。この時の注意点は、汚れを取ろうとして強くゴシゴシ磨かないことです。最初は慣れることと習慣にすることが大切です。慣れてきたら少しずつ汚れが取れるように磨いて下さい。仕上げ磨きに興味が出てくると「お母さんのお口も磨いてあげる」と言われます。喜んでさせてあげて下さい。大切なのは、自らの力で磨けるようになるまでの期間の補助だという認識です。お手伝いする所が少しずつ減るように教えてあげながら、仕上げ磨きをして下さい。

●仕上げ磨きのポイント
順番を決めて全ての歯の面が磨けるようにするのが良いでしょう。 (例えば 歯の表側、歯の裏側、かみ合わせの面)奥歯のかみ合わせは凸凹しているので注意が必要です。
磨き方は力強く歯ブラシでこするのではなく、歯ブラシの毛先を使って汚れをこすり取って下さい。仕上げ磨きを嫌がる原因は、力を入れすぎたために歯ブラシが歯ぐきに当たって痛い場合が殆どです。なお、歯ブラシでは歯と歯の間は磨けません。乳歯は歯と歯の間から虫歯になりやすいのでフロスを使って下さい。嫌がるのを無理やり押さえつけて行う仕上げ磨きは、子供が嫌になるだけなので絶対にしてはいけません。

      

         周囲の協力を得ること

「虫歯のないきれいな歯に育って欲しいので、3歳までは甘い物を与えないようにする」と祖父祖母、周囲の親族、親しい人に宣言することです。
 時には、「こんなに美味しい物を知らないのは不幸だ」 「糖分をとらないと脳の発育が悪くなる」などと言われることもあると思います。しかし、そんな理屈はありません。 また、ご近所やお友達の家へ遊びに行ったときにお菓子を出されたら 「歯医者さんに言われたの」「主人に言われて食べさせられないの」などと、他の人の責任にすると良いでしょう。
 お菓子をもらった場合には「ありがとうございます」と受け取っておいて、子供には「お母さんが預かっておくからね」と言って持たせないようにすることです。
 ほとんどの家庭では子供がいたらお菓子、喉が乾けばジュースという固定観念があります。その気持ちは感謝して受け取ったうえで、食べささないようにすることです。


            最後に

 3歳を過ぎれば色々なことが理解できるようになります。そのため、制限することが少しづつ難しくなってきます。親の管理下で実行できる3歳まで挑戦してみませんか。努力しただけの結果は必ずあります。後悔することなど一つもありません。信じることです。