歯科治療が苦手な方へ

歯科治療が苦手な方はかなり多いと思います。「痛い」のが苦手、「キーン」という音が苦手、「匂い」が苦手など、中には歯科医院の前を通ることさえ嫌な方もおられるようです。殆どの方が多かれ少なかれ苦手な所だと思います。しかしながら、歯が悪くなれば避けては通れない所なので、歯科医院との付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか


治療前に「嫌なこと」は正直にすべて伝えること
やっとの思いで行くことを決められたのですから、治療が完了するまで通院された方が良い結果になります。そのためには「嫌なこと」を減らすのが重要になります。そこで「嫌なこと」は正直に細かい所まで具体的に伝えられることをお薦めします。先生に嫌な顔されるのではないかと心配される前に言ってみることです。嫌なことをすべて無くするのはできませんが、軽減するのはできます。

痛いことが苦手な方へ
 痛みを軽減するのは可能です。
(1)治療中の痛み
痛みを伴う可能性が高い場合は、治療前に麻酔を行います。それでも痛いときには我慢せずに「ウ〜」「ア〜」と言って痛いことを伝えてください。麻酔の追加や痛みを軽減する処置を行ってから治療を再開することができます。但し、炎症や腫れがひどい場合はなかなか麻酔が効きにくい場合もあります。多量の麻酔薬は出来れば使わないほうが良いので、「痛み」を確認しながら麻酔薬を追加していきます。なお、麻酔量が多い時は、治療後も長時間が麻痺していますのでご注意ください。
ひどくなる前に治療することが痛くなく麻酔の量を減らす最善策です。
 
(2)麻酔注射の痛み
痛みを止めるために注射の痛みを我慢しなくてはいけません。これが嫌な方はかなり多いと思います。残念ながら、歯は敏感な組織なので麻酔をしないで我慢して処置をすることは出来ません。最も確実で安全な方法が麻酔です。痛みを無くすために少し我慢して頂くことになります。
麻酔の針をさす時に表面麻酔・細い針・麻酔薬を体温に近い温度にすることで痛みを少なくすることができます。

(3)虫歯を治療した後の痛み
虫歯を治療した後は、「軽い痛み」や「歯がしみること」が起こります。治療前は何ともなかったのにどうして? という疑問が出るのは当然です。これは、虫歯になった部分を徹底的に除去しているからです。(虫歯の部分を残すと、虫歯の進行は止められません)そのため、歯髄(歯の神経)の近くまで削る結果となり、治療後の痛みやしみる症状が出てきますが、むしろ当たり前のことなのです。しみなくなるまでの期間は虫歯の程度や個々の抵抗力によってまちまちです。1週間位で収まるものから6〜12ヶ月位かかる場合もあります。熱いものや冷たいものをさけて、気長に治まるのを待ってください。但し、いつまでたっても治らない場合や、どんどん悪化する場合には歯の状態を確認する必要があります。

<ちょっと一言>
歯の神経と呼ばれている歯髄は血管やリンパ管神経線維などが歯の根の先から入り込んで、歯に栄養を送っている大切な役目をしています。そのため可能な限り残した方が良い組織です。痛みをなくすために歯の神経をとることがありますが、歯にとっては大きな損失です。なぜならば、神経を失った歯は神経が生きている歯に比べて、強度と免疫力がかなり低下するからです。ですから、歯の神経を失った歯は、長く使うことが難しくなります。私の主観ですが能力的に1/5以下になるように思います。 木に例えるとわかりやすいと思います。生きている木はしなやかで強風に耐えるのですが、死んだ木はもろく少しの圧力でボキッと折れてしまいます。

(4)歯髄(歯の神経)の治療をした後の痛み
虫歯が進行して歯髄まで達した場合には歯髄組織を取り除く処置が必要になります。また、歯髄を取り除いた後でも残った細菌が悪さをして再治療になる場合もあり ます。このときに、根管(歯の神経が入っている管)にある汚れた組織を除去し消毒薬できれいにしますが刺激を伴います。そのため、根の先の周囲に炎症が広がっている場合は、治療後に違和感や痛みや腫れを伴う場合があります。このような場合は、薬で症状を軽減する方法しかありません。また、治るまで少し時間がかかりますので、強く咬まないように安静にすることです。


音が苦手な方へ
「キーン」という独特の音が嫌な方も多いようです。
この音の正体は「エアータービン」という歯を削る道具です。この道具は金属よりも硬い歯を少ない振動で、しかも歯髄組織に悪い影響を及ぼさないように削るために超高速回転をしています。そのためにあのような音が出ているのです。歯を削る器械としては最も優れた道具であることをご理解ください。しかし、どうしても苦手だという方には音の少ないモーターを用いることも可能な場合もあります。


匂いが苦手な方へ
歯科治療ではさまざまな薬品を使います。器械や治療道具を消毒する薬品、歯の中を消毒する薬品、歯の痛みを和らげる薬品などがあります。匂を少なくするために、密閉容器の使用や取り出す薬品の量を減らせますが、無くすることは出来ません。少し我慢していただくしかありません。


歯科医院へ行くのが楽しみな方?
 歯の治療は楽しみだという方はおられません。しかし、歯科医院に来るのが楽しみという方がおられます。ちょっと変わった人でしょうか? いえいえ、そうではありません。治療が完了して健康なお口に回復された方が、健康な状態を維持するために1〜6カ月おきにお口全体のチェックとクリーニングを受けに来られている方です。 このときは、歯を削ることも、麻酔も、匂いがきつい薬品も使いません。お口の状態のチェックと日ごろの管理では取れない汚れを掃除するので、お口が気持ちよくなるので楽しみにされているようです。歯医者さんとこのような関係もあります。
 

嫌な歯医者さんと、どのように付き合うのか
お口は取り替えることができません。また、歯をどんどん失って入れ歯になることで快適になることはありません。 生涯付き合うのお口であれば良い関係を保つことが心地よく豊かな人生を送れるのではないでしょうか。 では、どうすればよいのでしょう? 虫歯や歯周病などお口の病気を防ぐことが、歯科治療を減らします。治療が減れば当然、嫌な思いが少なくなります。このことは、生涯お口の健康を維持することになります。 悪くなってから治療するのではなく、健康な状態を管理する方法を考えられることが歯科医院とうまくお付き合いする方法ではないでしょうか。