不正子宮出血


 

1.不正子宮出血


 毎月子宮の内側にある内膜は厚く生長し、やがて崩壊して出血を起こします。
 正常な月経周期は月経第一日目から次の月経第一日目まで数えて、平均28日です。
 実際には28日より長い場合も短い場合もあり、その周期は21〜35日の間にあれば正常と考えて
 いいのです。   月経の出血期間は3〜7日です。
 不正子宮出血は周期的ではなく、持続が長く、量も多い、などで月経とは異なります。

2.月経周期


 月経周期は卵巣で作られる二種の女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲス
 テロン)により子宮内膜にある種の変化が生じて起こります。
 典型的な28日周期の場合には、5日目頃から子宮内膜が成長し厚くなりますが、これは卵胞ホルモンの
 働きによるものです。
 14日目頃になると排卵、つまり卵巣からの卵子の放出が起こります。
 排卵後は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが共同して働き子宮内膜は厚くなり充血して受精卵の到着に
 備えます。
 卵管の中で卵子が精子と出会うと、受精が起こります。
 受精卵は卵管の中を下って子宮内に入り、そこで子宮壁に付着し、そこから養分を取り発育を始めます。
 卵子がもし受精しないと、卵子はそのまま子宮内に入り月経血とともに流出してしまいます。
 受精が起こらなければ卵胞ホルモンと黄体ホルモンの量はたがて減少して28日目頃に子宮内膜は
 崩壊して月経出血が始まります。
 月経出血の開始は新しい周期がそこから始まったことを意味します。

3.不正出血の原因


 初経があってから数年は月経周期が不規則です。
 また閉経期が近ずくと月経周期は再び不規則になり、出血量は少なくなる場合もあり、また多くなる
 場合もあります。
 閉経期とは卵巣の機能がなくなって月経が終了してしまう時期を指します。
 初経後と閉経前に月経周期が不規則になるのは排卵が不規則となるためです。
 それ以外の時期では通常排卵は規則的に起こります。
 月経周期が35日以上あったり、21日以下である場合は正常ではありません。
 医師に相談しましょう。
 不正出血はホルモンのバランスが崩れた結果起こることがあります。
 ホルモンのバランスの変化は正常よりも長い出血を起こします。
 また月経の頻度が増す場合もあり、減少する場合もあります。
 排卵のない場合やホルモンの不均衡のある場合以外にも、体重の増加や減少、はげしい運動、ストレス
 疾病、薬剤の使用などによっても不規則な出血が起こります。
 妊娠も、それに気付かなければ、無月経や不正出血の原因になります。
 以上のほかに不正出血や出血過多の原因には次のようなものがあります。

 ■出血のかたまり方が異常なとき(血液凝固異常)
 ■子宮体部や子宮頚部の細菌感染
 ■流産
 ■子宮外妊娠(子宮の外側、特に卵管で起こる妊娠)
 ■子宮筋腫(これは良性の腫瘍で、癌ではありません。子宮の内側や外側にできます)
 ■子宮の内側にある内膜が異常に増殖して厚くなってしまう状態)
 ■子宮の内側(内膜)にできるポリープ(これも癌ではなく良性です)や腫瘍
 ■子宮体部、頚部、膣などにできる癌
 ■経口避妊薬(ピル)や子宮ループ(IUD)などのある種の避妊法に伴うもの
 ■甲状腺疾患などのホルモンの異状によるもの、膣からの出血でも、子宮以外のところから出血している
   場合があります。
 

4.診断


 不正出血の原因が何であるかを診断するために、医師は先ずそれがどのような出血であるかを聞き
 次に内診をします。
 出血の期間や日付けをカレンダーに付けておくと大変役立ちます。
 また、基礎体温を付けるように医師から言われることもあるでしょう。
 基礎体温の記録は排卵が起きているかどうかを知るために役立ちます。
 不正出血の診断にどのようなテストをするかは、貴方の症状がどのようなものであるかによって異なり
 ます。
 たとえば医師は生検(バイオプシー)という検査をするかもしれません。
 これは子宮の内側にある組織の一部を取って顕微鏡で検査をするものです。
 細菌感染があるかどうかを知るために、子宮頚部や膣から細菌培養をすることもあります。
 妊娠の有無、出血による貧血があるかどうか、ホルモンの問題があるのではないか、などを知るために
 血液検査を行います。
 その他、下記のようにいろいろな検査方法があります。

■超音波検査
  超音波を使用して体内をみる検査です。
  子宮や卵巣に異常がないかを調べます。
■ヒステロスコピー(子宮鏡)
  直接子宮の内部を見るために使用されます。
  細い望遠鏡のような管(ヒステロスコープ)を膣から子宮頚部を通って子宮内部に入れ、直接内部を
  検査することができます。  この検査は外来でもすることができます。
■ラパロスコピー(腹腔鏡)
  直接おなかの中を観察することができます。
  おへそのところに小切開を入れ、望遠鏡のような細い管(ラパロスコピー)を腹腔内に入れて内部を
  見ます。  この方法で手術を行うこともできます。
■子宮内そうは術(D&C)
  小手術で、子宮頚部を拡大して子宮内をそうはしたり、吸引したりして、その組織に一部を取ります。
  採取した組織は病理検査に送られ、癌の有無などを調べます。
  子宮からの出血を止めるために子宮内そうは術を行うこともあります。
■子宮卵管造影法
  レントゲン検査の一つで、造影剤を子宮内と卵管内に注入し、その大きさや形が正常かを調べます。
  卵管内に詰まってないかどうかも、この方法で調べます。

 ここに書いた諸検査方法は外来で行えるものであり、また1日入院して麻酔をかけて行うものもあります
 

 

5.治療法


 不正出血の治療法は、それがどのような原因によるものかにより異なります。
 手術が必要になる場合もあり、またホルモンを使用する場合もあります。
 また鉄剤やその他の薬剤を使用する事もあります。

ホルモン療法
  ホルモンの使用はホルモンのバランスを正常に戻し、子宮からの出血が規則的になるようにします。
  何ヶ月かためすうちにホルモン療法が有効かどうかが判断できます。
  ご自分に妊娠お可能性がある場合にはホルモンの使用を始める前に医師に話しましょう。

その他の薬物療法
  出血の原因が細菌感染である場合には抗生物質が使用されるでしょう。
  イブプロフェンのような薬は生理痛に有効ですが、出血量の多い場合にも有効です。
  必要に応じて種々の薬が使用されます。

手術療法
  不正出血のある場合、外科的な方法でその原因になっているポリープや子宮筋腫を取り除くことが
  あります。
  場合によってはヒステロスコープ(子宮鏡を切除内視鏡として使用)で行うこともあります。
  新しい方法ですが子宮内膜破壊法という方法で子宮の内側を焼いて出血を永久的に止める方法も
  あります。
  内側を焼くには電気やレーザーを使用します。
  この方法を行うと、もう出血は全くなくなってしまいますが、将来子供を産むことはできません。
  ですからもう赤ちゃんを生まなくともよい年配の女性に向いています。
  時には子宮摘出をしなくてはならない場合もあります。
  これはたの方法でやってみても、うまくゆかず、出血を繰り返し、更にもう子供を産まなくてよい女性に
  最適な手術です。

 

6.おわりに


 貴方の月経周期が21日以下になり、出血期間が長すぎて7〜8日以上になり、あるいは出血量が
 多すぎるようになったら、医師を訪れましょう。
 貴方が更年期(閉経期)をすでに過ぎている場合は、ホルモンを使用していない限り、どんな出血でも
 異常と考えるべきですので、すみやかに医師に診てもらいましょう。
 不正出血にはさまざまな原因があります。
 診察を受け、また検査を受けてみなければ、出血の原因を確認する事はできません。



用語説明

■生検(バイオプシー)
  小さな組織片を切除する小手術。
  切除された組織は検査室に送られ顕微鏡検査を受ける。

■子宮内そうは術(D&C)
  子宮口を開き、子宮内をそうはし、または吸引して子宮内組織を調べる方法。

■電気焼灼
  電流を使用して組織を破壊する方法

■子宮内膜
  子宮腔の内側を被う組織

■子宮卵管造影法
  造影剤を子宮腔と卵管内に注入し、その大きさや形の異常を知り、また卵管が閉鎖していないか
  どうかを知るためのレントゲン検査法。

■ヒステロスコピー
  細い望遠鏡のような管(ヒステロスープ)を子宮腔内に入れ、子宮内を観察する方法。

■ラパロスコピー
  細い望遠鏡のような管を腹腔内に入れ、子宮や卵巣などを観察し、またそれによって手術を行う方法。

■閉経期
  女性の生涯で卵巣がその機能を停止し、そのため月経も停止する時期で更年期のこと

■超音波検査
  超音波を使用して胎児や腹腔内の臓器を調べる検査法。