1.年齢と頻度 |
子宮筋腫は、30歳以上の女性の20〜30%にあるといわれる頻度の高い病気で、近年ライフスタイルの
変化により増えているといわれています。
1.婦人科の腫瘍の中で最も頻度の高い病気です
子宮筋腫は、婦人科の腫瘍の中で最も頻度の高い病気で、30歳以上の女性の20〜30%にあるといわれ
ています。
成熟した女性の全ての年齢で発生しますが、もっとも多いのは40歳代、次いで30歳代、50歳代となり
子宮筋腫の80%が35〜50歳代の中年女性です
2.筋腫年齢は、20〜50歳前半まで広がっています
最近、筋腫ができる年齢幅が広くなる傾向にありますが、これは性の成熟による初潮が早まる一方、
老化による閉経が遅くなったためです。
したがって、かつては30〜40歳代といわれた筋腫年齢が20〜50歳前半に広がっています。
ちなみに最小年齢は13歳、最高齢は70歳という報告があります。
3.ライフスタイルの欧米化により増えているといわれています
近年、子宮筋腫の患者が増えているともいわれています。
これは、検診や外来で発見される機会が増えたことのほか、患者は日本より欧米に多い事、欧米化
したライフスタイルで育った若い世代に増えていることなどから、食事や生活環境に関係があるのでは
ないかといわれています。
筋腫は遺伝する病気ではありませんが、同一家族内で筋腫の人がいる場合筋腫ができる割合は、
いない場合の数倍といわれています。
しかしこれも、食生活や生活様式が似ていることからくるのではないかといわれています。
2.病因 |
子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍で、発育には女性ホルモンのエストロゲンが関係していると
いわれています。
1.筋腫のできる原因はわかっていません
子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍(できもの)です。
癌などの悪性腫瘍とちがって、発育してもまわりの組織を破壊することがなく、直接生命にかかわる
ことはありません。
また子宮筋腫が癌になりやすいということもありません。
現在のところ、筋腫ができる原因はわかっていません。
2.エストロゲンの働きとともに性成熟期に大きくなり、閉経とともに小さくなります
子宮筋腫は性成熟期(20〜50歳代)に大きくなり」、」閉経後、小さくなる事などから、卵巣からでる
女性ホルモンのエストロゲンが筋腫の発育に深く関係しているといわれています。
子宮筋腫は、思春期のころ子宮に筋腫核という小さな芽ができ、エストロゲンの影響でしだいに大きく
なります。
成長速度は人によりまちまちで短期間で大きくなったり、2030年たってもあまり大きくならない人も
います。
そして、エストロゲンの働きが低下する閉経期にだんだん小さくなっていきます。
3.子宮の構造と役割 |
子宮は、骨盤内にある厚い筋肉の層でできた袋状の臓器で、妊娠による胎児の発育や分娩に重要な
役割をしています。
1.子宮は、子宮体部と子宮頚部からできており、体部に胎児の育つ子宮腔があります
子宮は、妊娠による胎児の発育や分娩に大きな役割をもつ大切な臓器です。
子宮は骨盤の中にある袋状の臓器で、下は膣とつながり、前には膀胱、後ろには直腸があります。
成人の子宮は鶏卵の大きさで、洋なしを逆さにしたような形をしています。
性成熟期から閉経までほぼ一定の大きさですが、閉経後は小さくなります。
上部の太い部分を子宮体部、膣につながる細い部分を子宮頚部」といいます。
子宮体部の上方で、左右両側に卵管がのび、卵巣があります。
子宮体部には子宮腔があり、胎児が育つ場所です。
2.子宮筋層の外側は漿膜で、内側は内膜で覆われています
子宮は厚い筋肉の層でできていますが、この筋層の外側は腹膜の一種である漿膜で覆われており
筋層の内側である子宮腔は子宮内膜で覆われています。
25〜36日ぐらいの周期で、卵巣から排卵された卵子は卵管を通って子宮内に到着します。
この途中で精子に出会い受精すると、受精卵となり子宮内膜に着床し育ちます。
着床しない場合、子宮内膜が筋層からはがれ落ちて月経となります。
4.筋腫の種類 |
子宮筋腫は、できる場所により大きく分けて漿膜下筋腫、筋層内筋腫および粘膜下筋腫の3つのタイプが
あります。
1.漿膜下筋腫は自覚症状が軽いので、大きくなってしか気ずかない場合があります
漿膜下筋腫は、子宮の外側を覆う漿膜の下にできて、外に向かって生育するタイプです。
子宮の表面にコブ状にできるものと、茎ができてその先にキノコ状にできるもの(有形漿膜下筋腫)が
あります。
できる数は、1〜2個から鈴なりに多数できることがあります。
この筋腫は、比較的自覚症状が軽く、訴えのない人もいます、そのため相当大きくなるまで気ずかない
こともあります。
2.筋層内筋腫は、子宮筋腫の中でも最も多いタイプです
筋層内筋腫は子宮の筋層とよばれる部分にできるもので、子宮筋腫として最も多いものです。
大きさ、数はいろいろありますが、普通複数個できてきます。
小さいうちはほとんど症状がありませんが、大きくなると種々の症状がでてきます。
3.粘膜下筋腫は、小さくても激しい症状を示すことがあります
粘膜下筋腫は、子宮の内側を覆う粘膜の下にでき、子宮内部に向かって生育するタイプです
茎ができてその先にぶら下がったものを有茎粘膜下筋腫といい、この筋腫が子宮口から膣内に
飛び出したものを筋腫分娩といいます。
粘膜下筋腫は大きい場合だけでなく、小さくても激しい症状を示すことがあります。
5.症状 |
子宮筋腫は、無症状の場合も少なくありません、主な症状は大きくなるにつれて月経異常、不正出血
貧血、排尿障害、便秘、腰痛などです
1.一般に漿膜下、筋層内、粘膜下の順に症状が強くなっていきます
子宮筋腫は、無症状の場合も少なくありません。
症状は筋腫のタイプによりさまざまですが、一般にその症状が最も強いのは粘膜下、次いで筋層内、
漿膜下の順で漿膜下筋腫の場合なんの症状も示さない人も少なくありません。
子宮筋腫の示す症状には次のようなものがあります。
1.月経過多
月経時の出血量が増え、レバー状の血液の塊が出ることがあります。
2.月経痛
月経がひどくなると下腹部痛や張り、頭痛、不安感などが起こります。
3.頻発月経
月経の周期が25日より短くなり、人によっては月に2〜3回月経があることがあります。
4.不正出血
通常の月経以外のときに出血が起こります。
5.貧血
月経異常や不正出血などにより、鉄欠乏性貧血が起こり、息切れ、動悸めまい、つかれやすいなどの
症状がみられます。
6.頻尿、排尿困難、便秘、腰痛など
子宮筋腫が大きくなると、骨盤内にある膀胱・直腸や神経などが圧迫され、これらの症状がでてきます
7.不妊・流産
筋層内筋腫や粘膜下筋腫では、子宮内膜に受精卵が着床するのをじゃまするために、不妊の原因
となることがあります。
また、筋腫の場所によっては、流産や早産の原因となることもあります。
6.治療 |
子宮筋腫の対処法には、年齢、症状、筋腫の位置や大きさ、妊娠希望の有無などを考慮して、経過観察
薬物療法、手術療法の3つの方法があります。
1.医師から症状について十分な説明を受け、あなたの希望を医師に十分伝え、納得したうえで治療を
受けることが大切です
子宮筋腫の治療には、症状や大きさなどによる単なる診断だけでなく、医師・患者間の密接なコミュニュ
ケーションが必要です。
患者は医師に考え方や希望をしっかり伝え、医師の説明を十分に受けて、納得して治療を受けることが
大切です
2.対処法には経過観察、薬物療法、手術療法の3つがあります
1.経過観察
小さな筋腫で特に症状のないもの、ある程度の大きさと症状があっても閉経が近いものあるいは
閉経後のものなどは、定期的に診察し経過を観察します。
2.薬物療法
閉経が近く手術を希望しない場合、GnRHアゴニスト(女性ホルモンを一時的に抑える薬)などの
薬で筋腫を小さくしたり月経異常をやわらげ、閉経をまちます。
また、手術を行う前に、しばらくの間投与することもあります。
3.手術療法
一般に次のような場合は手術が考慮されます
・子宮の大きさが手拳大(成人のにぎりこぶしの大きさ)以上
・子宮の大きさが手拳大以下でも症状が強い
・筋腫の発育速度が速い
・筋腫が原因で、不妊や流産が起きている可能性がある
・筋腫が壊死したり筋腫分娩が起きたとき
・閉経後の筋腫で、圧迫症状があるような大きな筋腫または増大傾向を示し悪性化が疑われるとき