2001年3月29日 第2576号

職場実習経験の65%が本採用に−成果あげる障害者雇用プロジェクト

 平成11年2月から開始した「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は、2年間の実施期間を経て最終段階に到達した。このプロジェクトは、障害者が今の雇用・失業情勢の下では再就職も困難であり、その能力を生かす機会を得られないままに、地域の作業所に流れ込みかねない状況にあったことなどから、企業を取りまとめる事業主団体である日経連が協力して、まず職場実習の形で障害者を職場に受け入れるとともに、実習終了後に引き続き短期間のトライアル雇用を実施し、大手企業を中心に本格的な雇用に取り組む契機としてもらうことを最大の狙いとした。

 平成13年3月26日現在、47都道府県で、5432事業所から、7646人の受け入れ希望が日経連に登録されている(表参照)。この中で6405人が職場実習を経験し、そのうち4998人がトライアル雇用に移行し、3329人が本採用となっている。3月26日現在、トライアル雇用期間中が1024人で、プロジェクトが終了する際には、約4200人が本採用されるとみられる。
 これは、職場実習を経験した人の約65%が実際に採用されたことになる。
 プロジェクトがこのように大きな成果をあげたのは、実態として企業は職場実習とトライアル雇用を通じて、無理なく障害者雇用の経験ができること、障害者の能力・適性を実際に4カ月にわたって見極めることができること、適性に応じた実習・訓練が可能になること、などの理由による。
 障害の種類別では大きな特徴が見られた。全体の約56%が知的障害者の利用、約5%が精神障害者の利用であったことである。
 知的障害者が障害者雇用率の算定基礎に加えられたのは平成10年からで、一部でかなり前から知的障害者を積極的に雇用している企業があったが、全体としては知的障害者の雇用の歴史は浅い。また、精神障害者の雇用については今後の大きな課題となっている。知的障害者や精神障害者などこれまで雇用が難しいとされていた分野にもかかわらず、全体の約6割が知的障害者と精神障害者で占められていることはこのプロジェクトの成果である。
 景気が停滞する中にあっても、企業としては障害者雇用の取り組みをおろそかにすることはできない。障害者の社会的自立に向けた基盤づくりのため、職業を通じた社会参加を進め、障害者がその能力を十分に発揮して、働く喜びや生きがいを見出すことが重要。「完全参加と平等」というノーマライゼーションの理念の実現に向けて不断の努力を傾注することが、企業の社会的責任として求められている。

リニューアルし新事業展開

 厚生労働省は「障害者緊急雇用安定プロジェクト」を平成12年度限りの緊急措置としていたが、これを13年度から永続的な制度として位置付けることになった。
 昨年発表された「平成13年度厚生労働省重点施策」では「障害者雇用機会創出事業(仮称)」として、このプロジェクトはリニューアルされ、予算要求額は一般会計から2000人分、約6億円となっている。実施主体は、これまでの日経連から日本障害者雇用促進協会へと変更される。
 また「職場実習」がなくなり、事業の対象となるのは「トライアル雇用(3カ月)」のみ。トライアル雇用奨励金は雇用した対象者一人当たり月額5万9000円と変更はない。日経連には職場実習の意義が大きいのでありトライアル雇用だけでは新事業の利用が難しい、という意見も寄せられている。
 しかし、事業所を活用した既存の職業リハビリテーションとして、就業体験事業、職場適応訓練、職域開発援助事業などがあり、これらと新事業を組み合わせることによって、これまで以上の効果を発揮することができると期待ができる。
 新事業が具体的にどのように展開されるかはまだはっきりしていないが、既存のさまざまな事業の統廃合を図りながら、本来めざす障害者雇用推進施策として事業化されることになる。