高齢者の問題となる精神症状

老年期に出やすい主に困った精神症状
@不安・心気状態;落ち着かず何となく恐ろしい苦しい感情で、いても立ってもおられず、うろうろ動き回るなどの行動が観察される。死や病気、身体の具合が気になり、絶えずそれに注意を集中し、せんさくし、不安がっている。
A抑鬱状態;気分が沈み込んでおり、生きていることがむなしい等の抑鬱気分、何をするのもおっくうであるという行動抑制、考えが浮かばないなどの思考抑制、で死にたい気持ちもでてくる。うつ病になると、不眠・早朝覚醒・頭痛・全身倦怠感などがある。午前中の方が気分が重い傾向もある。鬱病の人は病気なので励ましたりせず、ゆっくり休めるように気遣う。
B幻覚・妄想;老人には幻視が多い。老人になると感覚器官が衰えて、幻覚が出やすくなる。最も多いのは被害妄想で、殺される、苦しめられる、のけものにされる、悪口を言われる等である。
Cせん妄状態;意識障害を主とする症候群。意識障害があると、自分の年齢や日付がわからず、場所がわからなくなる。行動はまとまりをかき、トイレがわからず廊下や玄関で放尿する。呼べば答えるが、質問しても当を得ない返事をする。目つきは力を失い、表情はしまりなく、外界への関心が低下する。せん妄は、痴呆の症状と類似しているが、せんもうの基本症状である意識障害が消失すればこれらの症状は消失する。痴呆ではこれらの症状は通常慢性的に見られる。
 意識障害と伴ってしばしば幻覚が現れる。戸口に人影が見えたり、部屋の壁に虫がはっていたりする。また興奮を伴うこともあり、多動となるが、不安恐怖のあまり、周囲の人に攻撃的・暴力的となる。せん妄は、夜に強く出現し、不眠で興奮・多動となる。昼間はぼんやりしていることが多く、これを夜間せん妄と呼ぶ。
 せん妄は、内科疾患や脳器質性疾患を背景に心肺機能の低下によって、脳の血流が変化することによって、引き起こされる。わずかの血圧低下、心不全、肺のガス交換不全によって脳機能が不全状態となる。また発熱、栄養障害、電解質異常により容易にせん妄が出現する。
D痴呆;ぼけ
a.記憶障害;物忘れがひどくなる。ガスのつけっぱなし、約束を忘れるなど。
b.見当識障害;見当識というのは、自分と家族との関係、自分と周囲との関係、自分が誰かという自己の基本的特性の認識である。また、今が何月、何日、何曜日という現在、過去、未来の時間的関係の認識、今自分がどこにいるかという地理的関係の認識などをいう。
c.失計算;易しい計算力が低下することは健康時には少ない。痴呆では、買い物をしてもけた外れなお金を払っても平然としていたり、自分の年齢より子供の年齢を大きく言うなどが観察される。
d.せん妄
e.幻覚
f.妄想
g.感情障害と人格変化;
 痴呆に伴う抑鬱状態であり、しばしば経験される。たまに多幸的になったり、躁鬱状態を繰り返すもののある。
 年をとっても基本的な性格傾向はがらりと変わることはないが、頑固、短気、わがまま、疑り深い等のマイナス方向への変化が目立つときは、痴呆による可能性を考えなくてはならない。
・感情失禁;ちょっとしたことで泣いたり、笑ったり、怒ったりするように感情の調節が傷害されたもの。
・強迫笑い・強迫泣き;別に楽しいことや悲しいことがないのに、急に笑い出し、ある時間の後急に止まる。
・上機嫌(多幸);うれしいわけでなく、痴呆老人がただニコニコえびす顔をしている。
h.言語の障害;物の名前が出てこず、説明的に言う。他人のしゃべることは理解するが、自分が話そうとすると言葉にならない。逆に話すことはできるが、耳からはいる言葉を理解できない。何を聞かれても同じ言葉を繰り返し答える。
i.鏡像認知障害;鏡に向かってニコニコしたり、話したり、興奮したりするが、鏡に映っているのが自分であることがわからなくなっている。
j.行動障害;
 自分の持ち物と他人の持ち物の区別がつかない。物をなくしたり、しまい忘れて「ない」と騒ぐ。家庭器具などの使用が危険で空だき、火の不始末、手洗いを汚す、不潔になる、迷子になる、規則が守れない、部屋を間違える。
 うろつく、眠れない、幻覚、興奮、大声を上げる。
 妄想に基づく敵意、攻撃、興奮、おびえる、警察に訴えたり、保護を求めたりする。
 攻撃的・乱暴行為、ひねくれ行為、嫌がらせ、反発、拒絶的、ろう便、食糞などの不潔行為。 
 自殺企図、自傷行為、うそをつく、心気的・酵素的で同じ話を何回も繰り返す。拒食、過食、異食、性的異常行為(露出、性器いじり、ひわいな言動)衣服を脱いで裸になってしまう、やたらにつまらない物を集めてくる、衣服・布団などを裂いてしまう。物を壊す、破く、燃やす、盗み、他人の寝室へ入ってくる、のぞく。   

ぼけかたの程度
・ちょっとしたぼけ;世の中の出来事に興味が低下、時に介助が必要
・ぼけ;しばしば介助が必要。薬の飲み忘れ、お金の管理がしっかりできない。
・かなりのぼけ;会話ができない。食事をしたことを忘れる。
・ひどいぼけ;自分の名前も忘れてしまう。

 以上、困った症状をあげましたが、老人も色々な人がいます。全部あてはまるような人はいないでしょうが、困ったことをしてもある程度はわかってあげることができるようになればいいかと思います。
「ぼけても心は生きている」「ぼけても安心して暮らせる社会を」を我が国のボケ老人を抱える家族会が掲げているスローガンである。

リンク:日本老齢精神医学学会  慶成会老年学研究所