ミルトン・ハイランド・エリクソンは、20世紀最大の心理療法家、誰でも催眠(トランス)にかけられるなどの書籍紹介文で昔知った。

最初は、どうもうさんくさい、フロイトは催眠術を使わなくても心理療法はできるように発展させたのにいまさら催眠などと思った。

しかし、その紹介文に興味をそそられて、「ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー」(一週間のセミナー)という本を図書館で借りて読んだ。それは非常に面白い内容であった。催眠を中心とした療法ではあるが、それだけではなく、様々な技法を効果的に使っているのである。これはすごい、たいしたものだと思った。

ミルトン・エリクソンは、17歳まで小児麻痺の為に歩けず、赤ん坊が自分で歩き出す過程を観るうちに、同じ様にすれば歩けるのではないかと自らリハビリテーションを考案、実際歩けるようになり、深い洞察を得たということも催眠に役立っているそうだ。

このセミナーを行なったころ、再び体が不自由になっていたミルトン・エリクソンは、車椅子に乗った状態であった。また、色弱があるため、紫色を好んで身の回りにおいたなどのエピソードがあった。

エリクソンの心理療法は「短期(効果的)」「積極的介入」「催眠誘導」という3つの傑出した点があり、G・ベイトソンらと共に精神医学史上有名な「ダブルバインド理論」を構築。

催眠に抵抗している患者に対し、「あなたは今トランスにはいりたいですか、あるいは自分のペースで入りたいですか」とか、「深いトランスか、あるいは軽いトランスに入れます。」と暗示したりする選択を患者にさせることは二重束縛の状況である。

家族療法、ブリーフセラピー等の心理療法に影響を与えたり、ジェイ・ヘイリーなどの弟子により、戦略的心理療法などの心理療法が発展していっている。

東豊氏の「セラピスト入門」の中にもミルトン・エリクソンの名前が出てきているが、システム・アプローチにも影響を与えている。「セラピスト入門」は勉強になった、それはシステムアプローチの考えは以前からあったようだが、その本で私は初めて興味深く知ったということである。

私は催眠そのものよりも、それに付随して使用している技法の方に関心を持っている。

例えば、エリクソンの催眠を使わない時の技法の一つは、催眠の抵抗に対するアプローチと同じで、症状を保持を困難にするような試練課題を患者に与える。その課題を選ぶ原理としては、症状よりももっと厳しい課題を選ぶ。その際、その課題は患者にとって役立つものであり、有害なものであってはならない。

それまでの既成概念にとらわれず、相談に役立つことは何でも使うというスタイルで、それはとてもユニークな方法を使っている。

ミルトン・エリクソンの著作を読んで、催眠に関する偏見が払拭された。私にとっては、フロイト、ユングを知ったときと同じ位のインパクトがあった。

リンク:日本エリクソン・クラブ埼玉ミルトン・エリクソン研究会