第15回心の健康会議

メインテーマ 教育の将来と心のケア

開会挨拶: 大塚 義孝 専務理事(木田会頭代理)

会頭体調不良のため、代理でお話します。今回は沖縄での第1回から第15回目になります。Part1は柳田先生の「教育の将来と心のケアをめぐって」で、Part2では、シンポジストに河合会長を始め、各界の指導的メンバーが揃っています。今日は、一般の人を含めてですが、臨床心理士は2000人の参加となっています。臨床心理士の歴史は17年になりますが、今年2月からの医療心理師の国家資格を議員立法で成立させようという動きもあります。医療心理師は、高卒や大卒で医師の使い走り(?)で資格化しようというものです。それに対して、前文部科学大臣の河村建夫衆議院議員が広い領域での心理士の議員立法を出す予定です。河村先生は、山口県で予定があるため今回出席できませんが、後ほど馬場先生が代読致します。端的に言えば、臨床心理士を国家資格に使用という議員立法です。又、条例に基づいて専門職大学院を九州大学に発足いたします。

今回は、臨床心理士の申込者全員が出席できたとのことらしいです(筆者が1週間前に確認した情報)。

河村建夫衆議院議員(自由民主党 政務調査会副会長、衆議院経済産業委員会 筆頭理事)祝辞

(馬場禮子理事の代読)第1回を那覇市で行った心の健康会議が、第15回目になったようですが、様々なテーマで、テーマの範囲が活動の範囲を表しているようです。教育は経済原理によってのみではないと考えています。医療心理師の国家資格化の議員立法に対して、13,253名認定されており、指定大学院も133校になっている臨床心理士の国会資格化を各省庁との調整を図っていきたいと思います。

PART 1

基調講演:「教育の将来と心のケアをめぐって」

柳田邦男[やなぎだ くにお](ノンフィクション作家)

1936 年栃木県鹿沼市生まれ、NHK 記者時代の 1972 年に「マッハの恐怖」で第 3 回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1974年から執筆活動に入り、現代人の「いのちの危機」をテーマに、戦争、災害、事故、公害、病気などのドキュメント作品や評論を書き続けている。1995 年にはノンフィクション・ジャンルの確立への貢献と「犠牲?わが息子・脳死の 11 日」の執筆に対し、第 43 回菊池寛賞を受賞。最近は、とくに言葉と心の危機、少年事件、大人と絵本などについて積極的に発言。主な著書に、「脳治療革命の朝」「死の医学への序章」「言葉の力、生きる力」「絵本の力」共著「阪神・淡路大震災」共著他多数。

私は臨床心理士に対して、普段は取材者として教えを受ける立場で、大勢の臨床心理士の前で話をするのは気が引けますが、テーマは「教育の将来と心のケアをめぐって」であり、今回のメインテーマの周りをめぐるということでならお話できるかと引き受けました。カウンセリング自体はお話しませんが、作家として考えていることをお話したいと思います。

まずは、現在の子供を取り巻く養育環境等が危機的になっていることを、10項目お話したいと思います。

1.  高齢化について

新潟中越大震災が起こった地域で高齢化率が高いため、若い人が少ないということで救援活動が容易にすすまなかった。特に災害時に高齢化社会の問題が出ます。

2.女性の社会進出

女性が生き甲斐を求めて社会進出するのは良いが、子供が家庭に残されてしまう。

3.若い世代にとってお金が一番大切なことになる

大切なことの手段であるはずのお金が一番大切なものになっている。高校生の一番欲しいものは、1にお金、2に携帯電話、3に車だそうである。

4.生き方が二極分化

自己中心的な人と、NPO等をする等人に役に立ちたい人と二極分化している印象を受ける。

5.IT社会・メール社会

後ほど詳しく話します。

6.行き過ぎた効率主義

コスト・効率主義が世の中を動かす第一主義になっている。精神性等コスト効率だけでは測れないこともある。戦時中の精神性の批判で科学主義が出てきたが、コスト主義も行き過ぎているように感じる。

臨床心理士は広範囲で活躍しているが、病院経営でコスト優先で、賃金(Pay)を安くするために医療心理師を使う等になると、悪貨が良貨を駆逐するということも起こりやすい。

7.リストラ

リストラが容赦なく起こると、家族への影響が多大です。

8.外国人との共生

外国人労働者、工場や風俗等様々な分野で働いている。また、国際結婚が進んでいるが、母が日本に慣れないと子供も不適応を起こす場合もある。

9.成熟経済

景気の良い企業と不況業種の差が広がっている。

10.制度と経済の縛り

良いことも制度や経済に縛られてしまう。

次に、問題を大きく3つピックアップしてお話したいと思います。

一つは、「言葉とITネット社会」二つ目は「大人と子供とむきあうこと」三つ目は、「死と祈りについて」です。

まずは「言葉」です。

7〜8歳の子供の言葉の表現能力が低下しています。例えば、どうして自分が辛いかを言語化できず駄々をこねるような子供が増えてきます。

子供の成長期には親が充分関わることが、言葉の表現能力の向上に役立つと思います。テレビやゲームばかり子供はしており、親は家にいない。子供は生身の人間とあまり接触していないのです。テレビっ子世代が子育てをするようになってます。テレビばかり見ていた人が子供を育てているのです。子供部屋にまでテレビを置いて親子の会話が減ります。

テレビを見ている者同士のコミュニケーションは減ります。NO−TV運動というものがあります。1日だけではなく、1週間くらいテレビを見ないのです。

その結果ですが、家族の会話が増えた。テレビを見ていて支度をしない子供に親ががみがみ言わなくなった。親が子供の成長に気がつくようになった。親子で一緒に遊ぶ時間が増えたということがあります。テレビに子守りをさせていたのです。

当たり前のことですが、テレビで変わってしまったことがあります。

言語表現能力を遅らせることがあります。また、小学校6年の殺害事件を起こした女子生徒は、幼児の頃テレビの前に放っておかれていたようです。

最近の母親は母乳を与える時テレビを見ながら与えていますが、子供は母の視線を感じず、疎外と感じるそうです。

テレビの功罪ということを考えると、テレビの作成にも関わったことのある私は罪の方が気になっています。NHKもテレビの功罪を取り上げていたこともあるようですが、自己否定につながるので、おそるおそる取り上げていたようです。

テレビ局という情報の提供側が子供への影響を考えて欲しいと思います。

親も、2歳以下の子供にはテレビを見せない、3歳以上の子供にもテレビを選択的に見せるように心掛けるといいと思います。

乳幼児には絵本を読み聞かせることの重要性を話します。乳幼児に絵本を読み聞かせていると、2歳半には絵本を見て暗唱するようになることがあります。

親は1日に1時間でも絵本を読み聞かせるのがいいと思います。肉声による子供との関わりは、親との接触(風呂上りのお母さんのシャンプーの匂い等)により、子供の記憶に残り、将来への財産になると思います。

次に、「携帯ネットの社会」についてですが、技術の進歩は必ず負の側面を持ってくるので、そのための手当てをしなくてはならないと思います。

かつて技術革新が公害を起こしたように、最近はテクノストレス等が言われています。

20世紀の負の側面は、目に見えやすいかたちで現れましたが、21世紀の負の側面は目に見えにくいかたちで現れるように思います。

IT社会は非常に有用で、インターネットで全世界の情報が手に入り調査・研究にはとても役立つものだと言えます。ただし、生徒が宿題をネットで調べたため、同じの回答が沢山出てくると言った事もあります。

韓国ではネット依存症(ひきこもり症)が若年に増えていることが問題になっているそうです。

小学生の7割がホームページを持つようになっていると言います。しかし、匿名での掲示板の書き込みは、どうかと思います。匿名を使っての中傷悪口などもあり、2重人格的行動がでてくるように思います。成人ではなく、子供は使い分けることがうまくできないかもしれないので、実際の生活に持ち込まれているかもしれません。生身の人間と付き合うことが少なくなり、バーチャルの世界と実際の世界の混同が出てくるかもしれません。勿論パソコンを否定するわけではなく、非常に有用なことも事実です。

次に「むきあう」ことについてお話します。

昔が全部良かったわけではなく、子供の数が多く口減らしとか、身売り等がありました。

また、私が子供の時も親とむきあっていたかというと、それほどではなかったと思います。しかし、兄弟が多く大家族で暮らすことにより、兄弟関係があり、ゲームも少なかったので、友人関係も持ちやすかったと思います。

むきあうことで、良くなった事例をお話します。

ダンボール工場で働く田口さん(50歳)がダンボール工場で、知的障害者を出荷等の仕事を指導することになりました。ダンボールを10枚束ねる作業ですが、仕事が遅く間違えるので、しかりつけたら、逆に足を踏みつけられたそうです。何とかしたいと、ネクタイをやめ、知的障害者と同じような作業服にスニーカーでマンツーマンで教えたり、一緒に昼食を取ったりすると、次第に間違わず作業ができるようになってきました。そして、家でもダンボールを束ねる練習をしたそうです。家での様子も変わって、親に手伝うことはないかと尋ねたり、生活面でとても良くなったため親が驚いたということです。

医療でも診断や治療では、その人の職歴等を詳しく知る必要はないと考えるかもしれませんが、上田敏先生がリハビリテーションではどのような仕事をしていたか等を詳しく聞くことで社会復帰のリハビリテーションの計画を立てられることができると言います。すなわち、相手のニーズをとらえた社会復帰を目指すと言うことです。

次に「死の臨床」について話します。

幼い兄弟が自分の兄弟が病気で死ぬという時に、「死」が理解できず、笑ってふざけたりしていましたが、親は最後を看取る時には分かっていて欲しいと思いました。そこで、「忘れられない贈り物」という絵本を読んで聞かせることにしました。死んでしまった動物の仲間が、生きていた時の想い出を心の贈り物として感じていること、死んでしまっても心の中には残っていること等を絵本は幼い兄弟に教えてくれたのです。この2歳8ヶ月の息子を亡くした家族はクリスチャンホームであったということもあるのでしょうが、祈りの習慣ができたそうです。人智の及ばないものへの畏怖から祈りは来ているかもしれません。

ホスピスケアの話です。37歳の夫を亡くした妻の思い出ですが、夫は幼い子供に死ぬ前にベッドサイドで話していたそうです。子供が大きくなった時、「僕、子供が作れるようになったんだよ」と母に話すのでびっくりして誰か妊娠させたのかと聞くと違うと言ったそうです。亡き父は、子供に両手は何に使うのかと尋ねて、子供がボールを投げるとか色々言うと、全部正しい、だがその両手はお前が好きな女性を抱きしめるためにもあるんだよと、精通について教えていたということです。

丁度「死と祈りについて」の話で時間となりましたので、終わりたいと思います。

PART

シンポジウム:「教育の将来と心のケア」

司会:村山 正治九州産業大学大学院)

シンポジスト:河合 隼雄(文化庁長官)

        梶田 叡一(兵庫教育大学長)

        村瀬嘉代子(大正大学大学院教授)

       山中 伸一(文部科学省大臣官房審議官)

       若林  彰(東京都知事本局企画調整部副参事)

司会 村山:まず主旨を述べたいと思います。21世紀の日本のあり方はどうあるべきか。ゆとり教育が見直しされたりしています。スクールカウンセラー事業は、地域での実践が大切ですが、それを政策施行に結び付けていくことも大切と思います。テーマについて、各界の指導的存在である各シンポジストに25分くらいずつお話を頂いて、後でまとめの話などをしたいと思います。3時間休憩なしでやりたいと思いますので、トイレ休憩等は自由におとりください。

河合 隼雄教育は、教えることと育てることがある。従来、学校では教えることを重点に行っており、育てることは家庭で重点的にと考えられていた。

家庭教育は、昔は意識されずうまくできていた。それは、大家族の中で育ち、皆で分け与え、もったいないという環境で育ったためである。神棚や仏壇も家の中にあり、宗教的なことも教えていた。それが、核家族化してテレビと子供だけで過ごすようになってきた。親の子供の叱責を祖父母とか誰も止めない環境である。

学校でも教えることと、心のケアを一緒にやることは難しくなってきている。学校で、カウンセリングルームに入る時に、「ただいま」と入り、授業に行く時に「いってきます」と出て行く生徒もいる。家が家庭の役割を果たしていない場合がある。

教師や親の見方と臨床心理士の見方は、悪くなったように見えてもポジティブな面もあると焦らずじっくり見る点である。自閉症の生徒が、隣の生徒を突っつくようになると困ったものと見るが、他の生徒への関心が出てきたとポジティブな面も見ていくことである。また、性転換希望の生徒が現れた時、「いやらしい」と先生が思ったり、先生が感激しすぎてしまうことがある。そんな時はじっくり話し合って考えていくことが大切である。

珍しい新たな犯罪事件などを新聞が取り上げると、同じようにやろうと思う人が出てくる。タブーに挑戦する人は偉いという錯覚が犯罪につながっているのではないか。

思いがけない事件等が起こった時の周りの人へのケアも必要である。最近は、警察の中に臨床心理士資格保持者がいる。生徒への現場検証や他分野の連携で配慮しなければならないこともある。

こころを扱う者は、謙虚さや繊細さが必要である。心の専門家と傲慢になっては、心は扱えない。

ずっと昔は、カウンセリングは1週間で研修が済むと言われていた頃もある。理髪を身に付けるのだって、1週間では身に付けられないであろう。但し、髪は切りすぎたり失敗するとどうしようもないが、カウンセリングではカンセラーが下手をしても、立派なクライエントの時は、良くなっていってくれることもある。

神戸の大震災の時の心の援助は、関西弁を出来ない人は来ないで下さいと言った(?)。そのくらい、相手の気持ちに立って考えることが大切である。

「いやし」について、今はとても安易に言われているが、いやしは苦しみを伴う大変な事業であることもあると考えて欲しい。

司会 村山:河合先生は、いつも具体的事例を使って本質的なことを話していただけますね。

梶田 叡一:大先輩の後で話しにくい感じもしますね。私は、自己意識やアイデンティティの研究をしてきて、心理学の隣の教育学をしてきました。但し、大阪大学に臨床心理の学科を整えたりもしています。私は、院生の指導では、こんな修士論文あるか!と叱って、院生のトラウマ作り(笑)をしたようなこともあったと思います。私に叱られて半年出てこなかった院生がいますから。しかし、トラウマが怖くて恋ができるか、と言いたいですが、だから私は恋をしなかったのかなと思ったりもします。

教育学という隣接した角度から現在の課題をどうするか考えています。例えば虐待が起こらないようにするにはどうしたらいいかとかです。

学力低下で、「ゆとり教育」の見直しと言われていますが、「ゆとり」か「学力」か、ではなく、どちらも大切です。ゆとり教育で、「がんばれ」と言わないようにしよう等ということも言われたりしました。河合先生が、本当の「ゆとり」は大切だが、「ゆとり」の名のもとにたるみが入っていないか、と言われた事は成る程と、覚えております。

生きる力には、3つ大切なことがあると思います。

1つは、今の問題に対応すること。2つ目は、予防と工夫。3つめはそもそも生きる力とは何かということです。

生きる力とは、「我々の世界」と「我の世界」を育てていくことだと思います。

我々の世界とは、時と場面に応じた行動で、教師のしつけなどがあると思います。我の世界は、自分一人で産まれ、自分一人で死んでいくというライフ・ステージの中で、年齢によって生きていく覚悟と言えます。私個人の意見としては、フリーターもニートも大いに結構と思います。食っていければよし、食えなくなったら死ねばよい、色々な生き方があると私は考えています。私は、人から尊敬される状態だけでなく、色々な状態があっていいのだと思ってます。但し、「我々の世界」では、自分の期待される役割を果たす必要は出てきますが。

但し、私は、自殺する人には賛成はできません。自分の命ではなく、与えられた命と考えるからです。本物の私を探しても本物の私はない、役割を果たすバーチャルな私ばかりだと思います。

先ほどの河合先生の話にもありましたが、「いやし」や「ケア」が軽く扱われるようになってきています。

生徒全体から見たら、心のケアが必要なのは1割くらいで、後の普通の9割は心の鍛錬で心を強くすることが必要だと思います。

心の鍛錬は、第一に自己コントロールが低下して我慢できないのを頑張るようにする。第二に、自分の原理原則(超自我)を持つようにすることです。自分はできているかといわれると、それは棚に上げて話していることもあります。

村上:梶田先生は、大学改革の達人です。心の健康・予防についてお話してくださいました。

村瀬(VAIOのパワーポイントを使用して)1事例の紹介。

過去から積み重ねあげられてきた実践の中からお話ししたいと思います。

教育とは、教える(知識)、育むことです。

人間の教育は、動物の教育(生殖)と違っています。

適切な情報と自らのシグナル、教える側と教えられる側の変容があります。

子供には可塑性があり、狼に育てられた子供は、狼の習性を得ることができます。その代わり、人間として生きていく可能性を失うことにつながったりもします。

人間として育てていくには、人間的環境の保証、原型は育児、伝達≒学習が必要です。

ここで、「自分」を再発見した事例を紹介します。

13歳の男児A君、知的障害があると見られており、万引き行為もありました。ビネー式の知能検査では、IQ90±510でした。

父母との面接で、何でも意見や要望を言ってくださいと言うと、父母は顔を見合わせて、今まで自分の意見等聞かれたことはないので、戸惑っていると答えました。父は、4歳から養護施設にひきとられて育ち、母は捨て子で2人とも施設で育ってきた。その施設のC先生が不憫に思い、2人を結婚させてくれた。そして、A君とB君が生まれた。雇用主に面倒見てもらっていたが、大奥様が亡くなり、新しい人には冷たくされ、A君もいじめにあうようになり、緘黙になった。父は、寮の管理人の仕事をしているが、寮に女性もいるので変わってほしいと言われている。

この先どうしたいか、父母に尋ねると4人家族揃って生きていきたいと答えた。

A君の進路については、中学校普通学級進学が適当となったが、以下のような目標が設定された。

両親に対しては、子供と努力する。生活の知恵、仕事のこつ、子供への接し方を身に付けること。

A君は、@自分の持てる力を伸ばすこと。A万引き仲間から離れること。B自分らしい道、好きなことを探ることが目標になった。

A君は機械いじりをしたいという希望であった。父は、幼い記憶を辿って、自分の墓石を見つけ、自分のルーツを知りたいという気持ちがあり、色々探して見つけて安心した。母は自分のルーツについては分からず、満足できなかったようだ。

父母は、雇い主から「あなたたちの将来の方針に関する大切な人がやってきます。」と伝えられると、3年ぶりに部屋を片付けて、とても綺麗になった。雇い主はできるのではないかと驚いたが、動機付けの大切さがわかった。

方針は、A君と弟のB君が卒業するまで、両親の雇用を継続すること。兄弟2人住み込み進学を目指した。両親への仕事や生活全般へのサポートが行なわれた。「学ぶこと、自らを受容すること」を心がけるように指導した。

A君が万引きをやめるというと暴行を受け、血まみれになって帰ってきた(覚悟の上であった)。A君に中学1年の時初めて通知表に3がついた。誉めてあげたらというと、母は私なんかが子供を誉めたりしていいのですか、と自分の子供を指導することにも遠慮があった。

A君・B君共に電気メーカーの住み込みの定時制高校を卒業し、正社員になることができた。両親には生活スキルを援助していた。

司会 村山:河合先生とも話したのですが、ここでやはり10分休憩を取ります。

山中 伸一:スクールカウンセラーの役割が学校の中で大きくなってきています。

平成6年頃からいじめの問題が出ていましたが、平成7年に7万人だった不登校児は現在20万人になってます。心の問題に教師だけでは対応できなくなってきたと言えます。

スクールカウンセラーは、平成7年から5年間、研究委嘱事業として行なわれていました。スクールカウンセラーの資格要件は、臨床心理士、精神科医、大学で心理学の教鞭を持つ者です。現在3113人のスクールカウンセラーの内、95%が臨床心理士です。

平成2年に臨床心理士資格認定協会が、先生のストレスへの対応や子供の悩み相談のため、発足しました。世界的に見て、臨床心理士は修士卒で経験を積んだ人がなっています。

スクールカウンセラー事業は2300校になっています。平成12年度には、効果があったと報告がされています。

教師は、生徒が校内でどうあるかという見方をします。生徒が教師に相談すると、生徒は評価されるとか、成績に影響あるのではと考えてしまいます。その点第三者であるスクールカウンセラーには気兼ねなく、相談しやすいという意見もありました。

平成17年までに1学年1学級以上ある中学校全てにスクールカウンセラー配置をします。約1万校ですが、予算の確保も必要です。

阪神大震災では、心のケアで臨床心理士やスクールカウンセラーに頼り、先生や生徒のケアもしました。池田小学校殺人事件後の心のケアもあり、スクールカウンセラーは欠かせない存在になりました。公共中学校にはスクールカウンセラーが配備されるようになります。

児童の学力低下(読解力等)が言われ、学業の意欲も低いようです。ゲームやテレビの時間は長く、お手伝いの時間は短い。将来の夢を持って意欲を持って学ぶ動機付けが難しい。

生徒指導で、最近始めて増加一途であった不登校の人数が、13万人から12万6000人に減りました。3ヶ月以上を不登校として、保健室登校も登校としてカウントしてあります。取材などを受けた時、スクールカウンセラー(臨床心理士)の配置が大きな要因ではないかと答えています。不登校は増加から減になりましたが、いじめと校内暴力は減少から、若干増えています。

小学校高学年では不登校が増えており、小学校へスクールカウンセラーを配置して欲しいという要望が増えています。小学校では、スクールカウンセラーの配置希望が28%、英語教師の配置希望が27%となっています。

現在、ピーク時に11万人いた高校中退者が8万人になりましたが、高校卒業後どうすればいいのかという相談もあり、高校へのスクールカウンセラー配置要望もあります。高校では、キャリアカウンセラー的役割も期待されていると思います。

学校という閉じられた社会で、先生とは違った目で見てもらう外部専門家としてのスクールカウンセラーが求められています。

教育委員会は、教師として不向きな方を別の部署に移す等人事について一定の力も持っています。地域の声を聞くことや、先生への研修(いじめ・不登校)もしています。

子供社会は、大人自身の社会の反映とも考えられます。子供への援助の専門家として、スクールカウンセラーの力を役立てて欲しい。皆さんには一層実力を磨いて欲しいと思います。

若林  彰:30年前は小学校の教員で生徒指導を担当していました。スクールカウンセラー事業は、平成7年に東京都で4校から始まりました。5年間は研究委託事業で、その後本格実施され、丁度10年目になります。東京都では、中学校650校全校にスクールカウンセラーが配置されました。小笠原諸島までもです。殆どが全員臨床心理士です。高校でも40校配置されており、さらに10校追加される予定です。スクールカウンセラー事業は、予算125000万円で行なわれていますが、国が半分出しています。勿論その予算に見合うだけの成果が必要です。かつて石原知事はスクールカウンセラーを信用しないと言っていましたが、今は、「いいね」までは言ってませんが「うん」というくらいにまで認められてます。

少しでも無駄なお金を削ろうというところで予算を確保するのは大切ですが、スクールカウンセラーを恒常的に配置していくことを主張してます。教育はすぐには成果の上がらないものですが、数値も必要と言われています。不登校が1万人から8000人になり、4年減少となりました。スクールカウンセラーが配置されているという効果があると思います。勿論スクールカウンセラーの配置だけが要因ではないと思いますが。

不登校については、不登校の生徒の減少は数に表れますが、予防的効果は数には出てきません。家庭訪問をしてスクールカウンセラーが両親のメンタルケアをしたりしています。

ここで、私の実の娘の話しをしたいと思います。今は高校生になっています。

中学校の時、自殺未遂を起こし不登校になりましたが、スクールカウンセラーのおかげで学校へ復帰することができました。原因は仲良くしていた友達にいじめられたということです。バッファリン等家にある薬を全部飲んで、胃の洗浄を受けました。その後不登校になり1週間たちました。教員である妻とも相談しました。犬の散歩に一緒に行っても中学校には近づけませんでした。その時は、スクールカウンセラーに相談しても仕方ないと思っており、転校という手段があると思いました。担任の先生(技術家庭)と娘と私で転校について話していました。その時、スクールカウンセラーがいますので、スクールカウンセラーとも相談してみてくださいと言われ、娘を残して私は家に先に帰りました。その後、娘が家に元気よく帰ってきて「楽になったから明日から学校へ行く!」と言いました。父親として不思議でした。娘にどういうことか尋ねました。分かりやすく手紙に書いて欲しいというと、「東京都教育委員会 様」と書き出しになっており(笑)、書いてくれました。

その手紙は新聞に載りました。「中学校1年で自殺未遂をして、転校を考えたが、転校のリスクも聞きました。スクールカウンセラーと話してみて気が楽になりました。一緒になって考えてくれるし、尋ねたことに答えてくれます。それにスクールカウンセラーは親や先生のようにすぐに答えを迫らず、安心させてくれます。」とうような内容です。この手紙を読むことは娘に了承してもらっています。このように私は、劇的な体験をしたのです。

今後の課題としては、スクールカウンセラーとしての資質の向上、特別支援教育、心のケアとばかりは言っていられない非行の問題があります。さらに、スクールカウンセラーは、非常勤職員のため研修を受ける権利・義務がないです。もともと資質のある人を雇っているということかもしれませんが。研修は、東京都臨床心理士会で自主的に研修を受けているようです。研修の均一化や警視庁を含めての新しい連携のあり方を考えていく必要があると思います。学校での教育のあり方では、スクールカウンセラーが配置されて不登校に対する学校の意識が向上することもあります。小学校や高校にスクールカウンセラーを配置するにはもうあと24億円必要となります。

司会 村上:他のシンポジストで付け加えることがあればお願いします。

梶田2001年から中教審の委員を始め3期目になります。小中教員教育育成部会長を務めていますが、臨床心理士に関することを私見としてお話しします。

法科大学院で順調にいったとはいえないので、そんなに数を増やせないと思いますが、九州大学で臨床心理士の専門職大学院があります。そして、明日328日には上越国際大学と話し合うことになっています。

栄養教諭が授業を持たない教諭として位置付けられました。スクールカウンセラーも授業を持たない教諭として位置付けられないかと考えています。

司会 村上:そろそろ時間なので河合先生にまとめていただきたいと思います。

河合:教育で心のケアの大切さが話されたと思います。若林先生は、自分の娘さんのお話しをしていただきました。課題に応える力を身に付けていくことが大切と思います。臨床心理士はクライエントに対することだけではなく、臨床心理士自身の人生観や価値観を持っていることが大切です。臨床心理士は奥深い勉強が必要な仕事です。人間相手なので、資格は始まりであり、研修はずっと必要です。先にスクールカウンセラーに12億円の予算が導入されているという話しがありましたが、お金に見合う仕事をしていくことも大切です。

最後に、河村議員が中心になって臨床心理士の国家資格化の議員立法を提出することも期待したいと思っています。