本当に従来のレット・イット・ビーに比べると今回のレット・イット・ビー・ネイキッド(以下ネイキッドと略)は本当に音が格段に良くなり、
一つ一つの音の輪郭がはっきりしましたね。楽器以外のノイズを取り去ることのできる現在の技術とアビイロードスタジオ2人のエンジニア(Allen Rouse, Paul Hicks)の仕事によるものですね。
ネイキッドを聞いたあと、従来のレットイットビーを聴くと、プロデューサーのフィル・スペクターの仕事がしっかり感じられます。ちょっともやっとした、イマジンでも感じられる雰囲気(いわゆるウォールオブサウンド)です。
アイミーマインとアクロクスザユニバースのストリングスは、なくても曲自体だけで充分聞かせれるということがネイキッドでわかりました。ちなみにアイミーマインは、映画に使われること言うこと理由で、ジョージ・リンゴ・ポールで再録したために最初に楽器を録音し、後でボーカルをオーバーダビングしたものです。さらに、アクロスザユニバースは、セッションでは何回も演奏されていますが、収録されたのはスペクターと同じようにセッションの1年半前のものからストリングスを取り除いたものです。しかし、最後のボーカルにエコーをかけて効果は出していますね。
レット・イット・ビーのホーンセクションはそれなりに面白いですが、ネイキッドだとなくても十分雰囲気が出ているのがわかります。
短いディグ・イットや、マギー・メイを入れているのはスペクターの方が面白い感じがします。
アイブガッタアフィーリングは、スペクターバージョンもいいですが、今回屋上コンサートの2曲をつないで、エキサイティングな作りにしており、ネイキッドはかなり編集されています。
ワンアフター909は、スペクターバージョンはオーダニーボーイのコーラスまで入っていて嬉しいです。スペクターのロングアンドワインディングロードは、ベストテイクを採用して、オーケストラでかなり味付けしてある感じです。聞きなれているせいか、これはこれでいいのかなという気もします。
今回のネイキッドのポールのバージョンは、映画で使用したテイクを使用して、シンプルでオーバーダビングなし、ストレートなバラードを表現しています。ストリングスがなくても、この曲が名曲だと分かります。歌詞がYou'll never knowから、You'll always knowに変わっているのは、今回のバーションが最終バージョンであるということでそのまま採用されたようです。メロディも若干違うらしいですが、それにしてもポールの声のみずみずしいことに驚かされます。
フォーユーブルーは、スペクターバージョンもナチュラルに仕上げてます。
そして、スペクターのゲットバック、演奏前後のおしゃべりは付け加えたものとはいえ、キュートです。しかし、ネイキッドは骨太のがっしりしたゲットバック、これぞロックという感じで仕上げ、オープニングに持ってきていてます。

まあ、ポールが料理を刺身と塩焼きで素材の良さを生かして出そうとしていたら、スペクターが調味料を一杯使って味付けして出したという感じですね。(ポールは菜食主義なので
例えとしては適切ではないですが)
ジョンとジョージが、その当時スペクターの味付けも悪くないじゃないかと思ってソロで起用したのも訳がわかります。
しかし、もともとビートルズが意図していたアルバムは今回の作品のようなものだったのでしょう。オーケストラやダビングは、サージェントからホワイトまでやりつくしているビートルズです。今回の目玉は、バンドのライブ演奏のみでアルバム1枚作り上げるというコンセプトだったわけですから、ストリングスや女性コーラスを入れたら、ライブ演奏のみオーバーダビングなしというコンセプトが全て台無しになってしまうわけです。
ビートルズが目指していたコンセプトアルバムを、スペクターは無視して、全力を尽くして別の味付けしたわけです。
もともとの曲がいいし、スペクターもストリングスの使用はうまいので、いいものに仕上がったわけですが、愛するビートルズのコンセプトアルバムを別のものにされたポールはどうあっても本来目指していた姿で発表したかったのでしょう。
おめでとう!!ポールよかったね。