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 細胞所見ワンポイント講座C 
Rhabdoid細胞の形態学的特徴と腫瘍》


 印環細胞の特徴な所見は、核が一方に圧迫され、細胞質内に一つの細胞質内空胞を有することである。このようなパターンを示すものは、胃癌をはじめ乳腺の小葉癌、大腸腺癌、膵癌などの癌で多く認められる。また、脊索腫、他の腺癌、 悪性リンパ腫、悪性黒色腫、高分化型脂肪肉腫などでも印環細胞様細胞が認められる。
 一方、核が一方に圧迫された印環細胞様の形態を呈する細胞で、細胞質にはライトグリーン好染性の封入体を有する、rhabdoid featureを呈する腫瘍が存在する。このような腫瘍で代表的なものは横紋筋肉腫である。形態学的にはrhabdoid featureを呈する横紋筋芽細胞を認めることが診断の鍵になる。
また、 横紋筋肉腫に類似したrhabdoid featureを呈する腫瘍として1978年、 Beckwith1)により初めて、小児の腎臓に発生するウイルムス腫瘍とは異なった悪性rhabdoid腫瘍が報告され、その後、Haas2)により“malignant rhabdoid tumor”と命名された。悪性rhabdoid腫瘍の組織細胞学的特徴は、広い好酸性の細胞質を有する大型で多角形の腫瘍細胞のシート状増殖であり、細胞質内に球状でライトグリーン好染性の硝子様の細胞質内封入体を有することから、その腫瘍細胞は"rhabdoid cell"と称せられている。1982年にはGonzalez-Crussi3)が、同様の組織像を呈する腫瘍が軟部組織にも発生することを報告した。その後も軟部・臓器発生例が報告され、一つの独立した疾患単位として取り扱われはじめた。しかし、rhabdoid細胞の出現は他の軟部肉腫や癌腫にも部分像として認められることから、独立した疾患単位として疑問視する意見もある。ParhamらはPoorly differentiated neoplasm with rhabdoid feature という名称を提唱している。軟部に発生する悪性rhabdoid腫瘍の診断は除外診断で、免疫染色・電顕を含めて注意深く観察し、類上皮肉腫、滑膜肉腫、悪性中皮腫、平滑筋肉腫や横紋筋肉腫を鑑別する必要があると述べられている。
最近、穿刺細胞診が行われるようになり、腎臓以外の臓器における同様の形態を示す悪性腫瘍の報告が相次ぎ、現在までに、軟部組織、脳、心臓、乳腺、肝臓、肝臓、子宮、膀胱、前立腺、食道など、腎臓以外に発生したrhabdoid featureを特徴とした腫瘍が報告されている。

肺癌でも著明な細胞質内の小球体(globule)を有する細胞からなる腫瘍があり、rhabdoid形質を伴う大細胞癌として分類されている。これらの細胞質内の小球体は中間径フュラメントからなり、ビメンチンとサイトケラチン陽性である。肺癌では、rhabdoid形質を示す領域(rhabdoid phenotype)を部分的あるいは広範にみることがある。rhabdoid形質は通常、大細胞癌の形態をもった低分化な領域に認められる予後不良な腫瘍といわれている。上皮・非上皮の悪性腫瘍において、このようなrhabdoid featureに遭遇した場合には、慎重なる検索が必要である。

【文献】

1Beckwith JB, Palmer NF. Histopathology and prognosis of Wilms' tumor : results from the First National Wilms' Tumor Study. Cancer 1978 ; 41 : 1937-1948.

2Haas JE, Palmer NF, Weinberg AG, Beckwith JB. Ultrastructure of malignant rhabdoid tumor of the kidney Hum Pathol 1981 ; 12 : 646-657

3Gonzalez-Crussi F, Hsuel W, Ugarte N. Rhabdomyogenesis in renal neoplasia of childhood.
Am J Surg Pathol. 1981 Sep;5:525-532.


川崎医科大学附属病院病院病理部