私たちの仕事

 「細胞診って何?」のコーナーでも書いたとおり、細胞診は人体から採られた細胞の中にがん細胞がないかどうかを調べる検査です。ここでは、細胞診検査の具体的な方法について簡単に説明しましょう。

1.細胞の固定

 細胞診検査のための細胞採取には、患部から注射器などで直接細胞を採取する場合と、痰(タン)や尿などのように体から自然に排出されるものの中に含まれている細胞を検査材料として用いる場合があります。
いずれにせよ細胞はナマモノなので、新鮮なものほど検査材料として適しているのは言うまでもありません。どんなナマモノでも時間がたつにつれて傷んだり腐ったりしてきますね。細胞も同じです。
         
そこで、細胞診検査用に採取された細胞は、顕微鏡で観察しやすい厚さにガラス板の上に塗り広げられ、即座にアルコール液の中へと浸けられます。
この処理を「固定」とよびます。固定によって細胞の変性はストップします。

2.細胞の染色

 しかし固定が終わっても、すぐに細胞を顕微鏡で観察できるわけではありません。というのは、一部の細胞(たとえば血液中の赤血球やホクロを作っているメラニン細胞など)を除いて、人のからだを形作っているほとんどの細胞には色が着いていないからです。そこで細胞に色を着けてやる、つまり「染色」が必要になります。これは、白い布をいろいろな染料に浸けて美しい色の織物にしていく作業とよく似ています。
細胞診でいちばんよく用いられている染色は「パパニコロウ染色」という染色方法です。パパニコロウ染色によって細胞は、紫、緑、オレンジ、ピンクなどに染められ、顕微鏡での観察が可能となります。ちなみに「パパニコロウ」とは、100年ほど前にこの染色法を発明したアメリカの医師、パパニコロウ先生の名前に由来しています。

  パパニコロウ染色

3.細胞の観察

さて、染色もすんで、いよいよ顕微鏡で観察!…、でも、顕微鏡で細胞のどのようなところを観察したらよいのでしょうか?
細胞ってどんなものか、皆さんも一度は学校で勉強したことがあるでしょう。思い出してみてください。顕微鏡で見た細胞は、「核」と「細胞質」からなっていましたね。憶えていますか?。これは正常の細胞もがん細胞も同じです。では、どこで正常かがんかを見分けることができるのでしょう。
まず第1のポイントは「核」にあります。核の中には遺伝子(DNA)が詰まっていて、細胞の分裂やその働きの割り振りなどを担っていることは「細胞診って何?」でふれたとおりです。そしてがん細胞とは、遺伝子が突然変異を起こし、そのために細胞の分裂が止まらなくなって無制限に増えていく、そんな細胞のことなのでした。がん細胞の核内では、果てしなく細胞分裂を進めるために、突然変異で傷ついたDNAが大量に作られます。その結果、核が大きくなったり、いびつな形になったり、また、パパニコロウ染色をすると正常のものよりも濃い色に染まったりします。核の形や色の変化をしっかりとらえること、それこそが、正常細胞とがん細胞を見分けるかなめと言えるでしょう。
核(遺伝子)は、細胞の働きや形など、すべてを取り仕切る指令本部のようなもの。つまり、核に異常があれば、それはそのまま細胞質の異常へとつながっていくわけですね。一般にがん細胞では、細胞質が正常に分化(細胞の働きに応じて、それに適した形へと変化していくこと)がおこなわれないため、正常細胞に比べて小さくなったり、染まる色の濃さが違ったり…といったような、正常な細胞には見られない特徴が現れます。これが、正常かがんかを見分ける第2のポイントです。
しかし実際には、強い炎症などでがん細胞ではない細胞が、まるでがん細胞のような形態をとることもあり、また一方では、がん細胞であってもがん細胞としての特徴をほとんどもたないものもある(一説には、そのようながん細胞の方が多いとも言われている)、ここが細胞診の奥の深いところなのです。
私たち細胞検査士は、顕微鏡を武器に、日々がん細胞と戦い続けています
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