知っていれば役立つ! 細胞所見ワンポイント講座1

小細胞癌を中心とした小型円形腫瘍細胞の鑑別法
 神経細胞の、内分泌細胞としての機能が明らかにされたことにより、神経内分泌の概念が確立され、内分泌細胞と神経細胞に共通したマーカーを発現する細胞群に対して「diffuseepithelial endocrine system」または「diffuse neuroendocrine
 system (DNES)」という概念が提唱された1)DNESの 細胞には、下垂体、副甲状腺、副腎髄質、交感神経節、膵島のように、臓器ないし集塊を形成するものと、気道系、消化器系、胆道系、尿道粘膜、皮膚、子宮頸 部、前立腺などの上皮細胞に介在して散在性あるいは孤立性に分布する一連の細胞があり、このような細胞に対する免疫組織細胞学的マーカーには、神経内分泌 系マーカーとしてchromograninA、NSE (neuron-specific enolase)Leu7 (CD57)、また非ホルモンマーカーとして synaptophy-sinが知られている2,3)
1992年、Wittchowらは、肺原発性小細胞癌のギムザ染色標本を検討し、「89%の症例で細胞質内に好塩基性細胞質封入体が認められ、これには診断的有用性がある」と述べた4)。我々のパパニコロウ染色標本における検討結果では、同様のものと思われるライトグリーン好性で1〜4?m大の細胞質封入体(図)が、肺原発性小細胞癌35例中31(88.6)に認められている。また、肺以外にも膀胱、前立腺、子宮頸部、子宮体部原発の小細胞癌の全症例で、肺原発の小細胞癌で認められたものと同様の細胞質封入体が認められ、90%以上の症例で synaptophysinchromograninAが共に陽性を呈した。
 小細胞癌細胞にみられる細胞質封入体の存在は、小型の非角化型扁平上皮癌、未分化癌、メルケル細胞癌、胎児性横紋筋肉腫、非ホジキンリンパ腫など小型細胞からなる腫瘍と小細胞癌を鑑別するうえで、細胞診断学的に重要な鍵となる所見である。
(川崎医科大学附属病院・畠 榮)
1)DeLellis,R.,Tischler,A.:The dispersed neuroendocrine cell system.Functional Endocrine Pathology(Kovacs K.,Asa,S.,S.L.eds.),Boston,Blasckweii,1991,493-508
2)佐野壽昭,長村義之:disperwed neuroendocrine systemの腫瘍の統一的分類.病理と臨床1999,17:1238-1241
3)安田政実,長村義之:神経内分泌系の概念と機能形態学的アプローチ.病理と臨床1999,17:1232-1236
4)Wittchow,R.,Laszewski,M.et al.:Paranuclear blue inclusions in metastatic undifferentiated small cell carcinoma in the bone marrow. Mod.Pathol.1992,5.555-558