KANの冒険
Quest3:東京あるき
夏だ。夏休みだ。交替勤務なんてしている俺にもそれは存在する。というわけで旅行の計画を立てた。東京で見逃した場所もある。つまり、行き先はまた東京だ。
が、今回は別の目的もある。某聖戦に参加、ではない。あれもまあ、一生に一度は行ってみたい気がするのだが、翌日が仕事ではちと無理がある。……話が逸れた。目的というのはオフ会である。
首謀者は、溜まり場とリンクを張っている草薙珠璃さん。確か、春頃にICQでやり取りをした時に立ち上がった計画だったはずだ。俺の勤務体制の目処が立っていなかったので、7月以降に計画を煮詰めようという話になっていた。こっちも職場の都合でどたばたと忙しかったのだが、何とか夏の聖戦後に連休が確保できた。
さてメンバーだが、一応モノ書き限定でしようという話になる。このテのを企画してどのくらいの数が集まるのかは知らないが、その方が手頃の人数になるだろう。
しかし、モノ書き……とりあえず、思いつくのはリンク先の方々のみ。活動している人に片っ端からメールを出す。結局連絡がつき、返事があった中で都合がついたのは二名だった。まあ、人それぞれ事情がある。地理的な問題や仕事の都合。無理は言えない。
その後は、俺と珠璃さんは携帯とICQとAIMで、参加者とは掲示板やメールでやり取りし、決行日と場所を決める。14日の12時30分、上野駅集合。内容が完全に決まっていなかったなんていうのは秘密だ(笑)
最終的に、参加者は四名。首謀者の草薙珠璃さん、東条麻紀さん、Lughさん、そして俺だ。
その間に準備。荷物もそうだが例によって宿泊届けを出さねばならない。しかも行き先もだ。オフ当日は未定だったので、それ以外の日に寺を回る事にする。増上寺、浅草寺、善養寺の三つだ。上司はあっさり納得した。……どうやら、職場の人間には、俺がこういう人間だという認識が定着しているらしい。噂では、課長が研究発表でもしてもらうか、などと口走ったそうだ。
冗談じゃない
そこまで高尚な人間ではない。俺は寺特有の雰囲気が好きなのであって、あんまし込み入ったコトには興味がないのだ。それに今回の、そして前回のもだが「某ゲームに出てくる寺です」などと言えるわけがない。
さて、8月13日出発当日。
仕事が終わると愛車のKawasakiZZ−R250で家へ帰る。荷物の準備はできているので、とりあえずタクシーの手配をしてメールと宿帳のチェック。んでもって岡山駅へ向かう。時期が時期だけに切符が取れるかが不安だったが、帰省のピークは過ぎていたらしく、無事にゲット。のぞみで一路東京へ――っと、そうそう忘れてた。珠璃さんにお土産持っていく約束だったな。……そうか、三人いたっけ。じゃ、この辺で手を打っておこう。
無事に東京駅へ到着。そこから宿泊地の新宿へ向かう。以前東京へ来た時に止まったビジネスホテルを予約済みだ。新宿で降り、ホテルへ向かおうとした俺だったが、歩いていこうか、地下鉄を使おうか迷った。普段なら歩く。が、夏だし暑いし、どうしようかと迷いに迷って結局歩いて行く事にした。……結果、後悔する事になる。
ホテルまで半分、の辺りで何やら配っている兄ちゃんがいた。つい反射的に受け取ってしまい、捕まってしまった。どうやら近くのギャラリーの呼び込みらしく、チェックインの時間があるからと言っても聞いてくれない。ちょいと話を聞いて撤収しようと諦め、ついて行くことにした。……弱いぞ、俺。
内容は良く覚えていない。まあ、いいなと思う絵――版画だったか?――はあったが、はっきり言って上等な絵に興味があるような人種じゃないのだ、俺は。しかもそれを売りつけようとする。来訪簿みたいなのに記帳した際に年齢と職業を嘘書いたのだが(21歳のフリーター)それでも手を変え品を変え勧めてくる。ホテルのチェックイン時間を先延ばしにする羽目にもなったりして、結局いいこと無し。大体、偶然通りかかった冒険者に60万もする絵を5年ローンで売りつけようとするな! 担当の良く喋るねーちゃん(年下。騙した年齢だと自分の方が年下だったので結構強気というか馴れ馴れしかったが)が席を離れた隙に、東京へ遊びに来ている友人w_tom氏にメールして、電話かけてもらおうと思った。少ししてTEL。が、それはw_tom氏からではなく、明日会う予定だった草薙珠璃さんだった。珠璃さん、ナイスタイミングっ!! そのまま独り言(笑)しつつ脱出。……二度と東京の街頭で物なんぞ受け取らんぞ……。
精神的に疲れたが、ようやくチェックイン。ホテルの従業員さん、遅れてすまん。悪いのはあのにーちゃんと、捕まった俺だから。
その日は特にすることもなく、汗を流した後、近くのラーメン屋でラーメンとコロッケを食う。w_tom氏とメールで何度かやり取りして、その日は寝た。
翌日8月14日。オフ会当日。5時10分に起床。とっとと身支度を整え、ホテルを出る。何故こんなに早いかというと、人を迎えに行くからである。今回のオフに参加する東条麻紀さんだ。……何故迎えに行くのか?夜間バスで品川着ということだったので、その後合流までどうするのか訊いてみたのだ。特に決めてなかったそうなので「寺でも回ってみる?」と誘ってみた。それなら、ということで集合まで行動することにした、そう言う事。
品川駅を出てバスターミナルへ。何台かは到着していたようで、それらしい人を捜してみる。むぅ……分からん。彼女のサイトでプロフィールは見ていたが、「身長:ちっちゃいね」だけではさっぱりだ。こんなことなら「今日、こういう格好して行くから」とメールしとけばよかった。到着予定の6時30分を過ぎても来ない。と言うか見つからない。姿形を知らないから当然なのだが……受付のおっちゃんに到着状況を訊いたりもしたが、どうも不明。そこで携帯へTELしてみる。
「もしもし、KANですが」
『あ、どうも』
「いまどこにいます?」
『待合所です』
なんですと……?
自分がいるのも待合所だったりする。二階から下りて一階を見回すと、携帯片手の女性発見。……ここへ来た時にいた人じゃん……(汗)
こうして何とか無事(?)に合流した。そのまま目的地を相談する。ここから近いのは目黒不動、もしくは等々力だが、最初は目黒不動にした。東急目蒲線の不動前駅で下りて、そこから歩く。以前来た事があるものの、記憶は曖昧だ。それでも、すんなりと到着。境内を適当にふらつき、本堂へ。仏像よりも何よりも、酒瓶と米俵に目がいったなんてのはここだけの話(笑)。
再び不動前駅まで戻り、乗り継いで今度は等々力駅へ。
そこから渓谷経由で等々力不動尊へ向かう。以前来た時は橋の工事中で下りられなかった渓谷も、今回は端から歩く事ができた。薄暗い渓谷の細い遊歩道をひたすら歩く。幸いだったのは、渓谷内の気温が低かった事だろう。いや、目黒周辺は朝だというのに暑かったからな。
そして等々力不動へ到着。今回ここへ来たのは理由がある。実は前回、境内の様子はメモっていたものの、不動周辺の地形を把握するのを忘れていたんだな、これが。前回の記事にも書いたが、等々力の境内は思ったよりも狭い。下手に《力》を使ったら、味方を巻き込みかねないくらいに。だから、既にUPしている第拾参話を読むと分かるように、戦闘フィールドを分割したかったわけだ。そういうわけで、周辺に公園やらがある事を確認。メモした。
再び渓谷を通って元来た道を戻る。途中蛇に遭遇したが、別段驚く事でもない。最初はミミズかと思ったが。久し振りに見たな、蛇。東京にもいるんだ、やっぱり。
とりあえず駅まで戻り、いい加減疲れたので近くのマックで涼んだ。
次は目青不動教学院。東急新玉川線の三軒茶屋駅から出て、地図も見ずに歩く。入り組んでいるが、前回来たから道は覚えている。その途中、魔人巡りの事が話題になった。
「夏休みだから、案外他にも巡ってる人とかいそうだよなー」
遭遇したら面白そうだなどと話しながら、結局誰にも出会わず、不動に到着。むう……
目青不動を見終わったが、時間はまだある。もう一つくらいは回れそうだと地図を開く。無理なく回れるのは目白不動くらいか。そういうわけで移動。
地下鉄へ下りようとしたその時、携帯から「風詠みて〜」が流れる。相手は珠璃さんだった。電話の向こうから聞こえる声は、起きたばかりだったらしく、元気がない。こちらは東条さんと合流した旨を伝え、また後で、ということで電話を切る。
次の目的地は目白不動。前回は都電荒川線に乗り、学習院下駅から徒歩で向かったが、今回は目白駅からバスと徒歩で向かった。
前来た時と変化はない。ただ、東条さんは驚いていたようだ。まあ、それは目青でも同じだったが。イメージと現実のギャップが大きかったのだろう。仕方のない事だ。俺だってそうだったし。だから祠を隠すなんて荒技をやってのけたのだ。どこの不動も目黒のように境内が広ければ適当に誤魔化せたのだが、知ってしまうとねぇ。まあ、他のSSと違う展開ってのになったから、ある意味良かったかもしれないが。
ま、魔人とは別の目黄不動はもっとひどいんだから、ここでくじけちゃ駄目だぞ東条さん(意味不明)
さて、そろそろ……というかまだ時間はあるのだが、もう一カ所回ると遅刻しそうだったので合流地点の上野へと向かう。着いたのは約束の一時間程前だったか。駅の構内も暑いので外に出たが、外もやはり暑い。適当な店に入って涼もうという事で、最寄りの喫茶店に入る。ここで二人してレモンティーを注文したのだが、その後で俺はある事に気付く。
「あのさ、さっき注文した時に、アイスって言ったっけ?」
「あ……」
結果、運ばれてきたレモンティーはホットだった。クーラーのきいた涼しい店内で、熱いレモンティー。ああ迂闊……。
外では、パチンコ店の宣伝をしている派手な格好をした一団が練り歩いていた。ああ、あれがちんどん屋ってやつだね。初めて見た。
飲み物がなくなったので長居するわけにもいかず、冷房が名残惜しかったが12時を過ぎたくらいに店を出る。待ち合わせの場所は上野駅の二階にある浅草口改札前との事だったのでそこへ向かった。しかし、大きい駅ってのはどうしてこうも複雑な造りなんだろうか。いや、他の人には大した事じゃないかもしれないが、まるでダンジョン歩いてる気分だ。
ともかく目的地へ着。時間には余裕がある。そこで再び「風詠みて〜」が鳴った。相手は珠璃さん。どうやら近くにいるようだが、どこにいるのかとのことだったので、周囲を見回してみる。改札口の向こうに携帯を持った男性がいた。向こうも気付いたようで合流成功。とりあえず挨拶する。現実世界では初めまして、ってやつだ。
さて、残る一人はLughさんだが。五分前になったので携帯にメールを送ってみる。少しして再び「風詠みて〜」が鳴るが、すぐ切れた。相手は不明。タイミングからして彼女のような気がするが、こちらの番号は教えてあっても、向こうの番号は知らないしな。一応掛け返してみようかと思ったら声が。やっぱりLughさんだったようだ。別の事で気を逸らせておいて接近とはやるな。
しかし、よく俺達だと分かったな。まあ、男性二名が妙なオーラを発していたのが見えたんだろう、多分(笑)
さて、全員揃ったので行動開始。まずは昼食にしようという話になる。その前にLughさんから「浅草行きたい」って意見が出た。……俺、明日行く予定なのだが。ちなみに皆さん行った事がないらしい。Lughさん、東京都民じゃなかったのかい? まあ、地元だからこそ行った事ないのか。俺も県内の遺跡は見てないしな。
とりあえずメシを食ってから決めようってことで上野駅から御徒町方面へと歩いていく。目的地は珠璃さんが知ってるラーメン屋。Lughさんは二日続けて晩にラーメンを食べたらしいが、諦めてもらおう(笑)
がしかし。珠璃さんが止まる。不思議そうな声を出して。その時、俺の脳裏にある予想が立った。
「ひょっとして、店潰れてる?」
どうやらその通りらしい。どうしたものかと話し合う四人。でも、みんな遠慮したのか、それとも面倒なのか「何でもいい」と仰る。
「そんじゃ、先に浅草行こうか。あっちなら食い物屋もあるだろうから」
行き先変更、浅草へ。でも、どのルート通るんだろう? みんな行った事ないんだろう? 俺は過去(2年前)に行った事あるが、覚えてるわけがない。
地図(路線表付き)を持ってたので、それを見ながら経路を設定。浅草へ向かうのであった。
そうそう。途中で珠璃さんが腰が痛いなどと言い出した。しかし何がおじいちゃんだ、まだ若いのに。そう言えば皆さんおいくつ? という話になったのだが……あれ? 俺が一番年上? しかも何? おっさんだと!? 失礼な、確かに実年齢より上に見られる事が多いのは確かだが、そこまで老けてない! 俺はまだ若い! 二十代だーっ! 四捨五入してもまだ二十代だーっ!(まだ、ね……フッ……)
乗り継いで歩いて浅草着。有名な雷門周辺は人が多い。観光地だし、当たり前か。これまた人の多い仲見世を通りながら奥へと進む。人形焼やら煎餅やら、雷おこしやら、多くの品が店頭に並ぶ。でも、どこの地域の土産物屋も、何かしら似たようなもの売ってるよな。東条さんは何やら土産を買って帰らないといけなかったらしいが、あれは駄目だとか注文が多いらしく「今から買ったら荷物になるし。帰りに駅ででも買えば?」という意見も出たのでここでは何も買ってなかった……と思う(苦笑)
途中、屋台から漂う匂いに引かれつつ境内へ到着。線香の煙を浴びたりして本堂へ入り、賽銭を放り投げる。ついでに皆でおみくじを引いた。三十回も振らなかったが、以前柴又で引いた時とは違って結果は吉。他の三人は凶だったらしい。……七割が凶? 随分偏っている気がするぞ。
ちなみにこの時、皆がおみくじを木に括り付けたのだが。「いいやつは持って帰るんだよ」との女性陣からのご指摘が。ああ、つられて括り付けようとしたさ。いや、既に括りかけていたさ(苦笑)
引き返す時は人通りが多い仲見世を避け、一本外れた道を歩く。いい加減腹が減ってきた。どこで食べるか悩む。誰もこの辺の地理を知らないしな。テンプラだ蕎麦だと彷徨った挙げ句、近くのイタメシ屋に入った。理由? いい加減暑さでたれてきてたし、それに食べ放題だったから、だと思う。
適当に注文して、皆で色々話す。主な内容は、やっぱり魔人の関係。SSのネタとか、書き方とか。HP運営の話とか最近のネチケの話とかな。
他にはゲームの話か。何かしら共通する話題があった。魔人はもちろんだ。スパロボ、GPMとかは未プレイの人もいたが。
そんな中、まあ、いくつか封印やむなしな話題もあったけども。
そうこうしているうちに、着メロの話になる。皆さん色々特徴があるようだ。ちなみに俺のは全部ゲーム系。でも地方限定ネタとかあるんだな。西日本の俺には分からなかったよ(笑)そんな中、ふと気付くとメールが来ていた。差出人はw_tom氏だったが、その内容は――ほう、そうきたか(苦笑)当事者に見せたら面白そうだが、まあいいか。とりあえずレスをして話に戻る。
そういえばテーブル挟んで線を引いたりしたな。属性がどうとかで。ん、誰がどんな属性でどういう区分けかだって? そりゃ……想像に任せよう。
そこそこ長居したなと思った頃、珠璃さんの携帯にTELが入る。相手の人――真紅さんもモノ書きさんとのこと。どうやらこちらに参加するらしい。次の目的地へ向かう前に合流地点へ向かう事になった。勘定を済ませて店を出て、駅へ向かう。店は涼しかったが、外はやはり暑い……。
電車に揺られて着いた先は秋葉原。そう、「色々な意味で」有名な秋葉原だ。相も変わらず人が多い。見渡す限りの人と電器屋。近くの店をひやかしたりしている内に真紅さん到着。挨拶して再び移動。
水道橋で下りて歩く。ボウリング場へ向かうとのこと。む、駅はそんなに大きくないように思ったが、どうもその割には人が多いな。と思ってたら目に飛び込んでくる建物があった。
「東京ドーム? ああ、ここにあったんだ」
初めて場所を知った、というか実物を見た(笑)今日も試合があるようだ。今更だが人の多さに納得した。
しばらく歩いてボウリング場に到着するが、人が多い。レーンも完全に埋まり、満員状態だった。
んでもって、更に問題。予約してなかったらしい。まあ、この人混みは予想外だったが。とりあえずエントリーだけしておこうということになったのだが、Lughさんの方はあまり時間が残されていないようだ。多分、始める頃には帰らないといけないってことで、彼女は不参加となった。
結局、その時間になっても順番は回って来ず、ここでLughさんは帰ることになる。それではさようなら――っと、そうだ、忘れていた。東京へ来る前に岡山駅で買っておいた土産をリュックから引きずり出す。その名も「吉備団子」。決して緑の葡萄入りではない。ごく普通の吉備団子である。何、白桃? ピオーネ? マスカット? そんなもん買えるか、自分ですら食ってないのに(笑)あれは庶民の食べ物じゃないよ、うん。
土産を渡してLughさんとお別れ。今日一日お疲れさま。
それからまた時間が経ち、ようやく順番が回ってきた。2ゲームで取ったらしく、さっそく始める。考えてみれば、久し振りにやるな。地元でボウリングする時は、大抵飲みの時だったりする。その後でビリヤードなどやり、飲みへ突入。それがパタン。つまり、最近は飲みをしてないってことだな。
……話が逸れた。珠璃さん、俺、東条さん、真紅さんの順で投球。途中、東条さんの爪が割れるというアクシデントもあったけども。うむ、旅に出る時はファーストエイド・キットは必須だな。次からは用意しておこう。何が起こるか分からないし。
一時間程でゲームは終了した。個人的には不満の残る成績だったが。平均120は欲しかった。腕が落ちてるな、やっぱり。
時間もいい具合になったので、ここで解散にしようかという話にもなったが、せっかくだからということで、晩飯を食べることにする。何を食べようかと近くの店を見るが、どうも決め手に欠ける。結局昼間に話題になったラーメンって事で手を打つことになり、上野まで戻ってそこからしばらく歩く。
店に入り、それぞれ注文する。ここでも色々な話をしたが、何故か毒属性について語ったような覚えがある。それが転じていつの間にか相手を笑わせることに目的が変わっていたような。
この時、俺は珠璃さんにメールを見せた。昼間w_tom氏から来たヤツだ。もちろん笑わせることが目的だったのだが破壊力はあまりたいしたことがなかったな……ちっ。ちなみに内容はこうだった。
『東条さんとでぇと中でしか? その後は珠璃さんも…ハーレムですな、旦那(邪笑)』
確かに掲示板でもやり取りしてたし、東京来てからも予定なんぞメールで連絡しあってたからなぁ。そりゃ知っててもおかしくはないんだが。ただ一つ間違いがあるとすれば……だから俺はこう返信したのだ。
『珠璃さん男や……』
ネット上の性別がアテにならないことが判明した瞬間である(笑)この時の珠璃さんの一言は「黙ってた方が面白いな」であった。ゴメン、返信した後だよ。
こうして夕食も終わり、珠璃さんは、真紅さんとともに埼玉へと戻った。俺は東条さんを品川まで送っていくことにする。途中東京駅へ寄って、土産物を物色。俺も買おうかと思ったが、まだ一日こちらへ滞在するし、荷物になるのも何だったので買わなかった。品川で下車し、バスターミナルまで送り届ける。東条さんは明日、用事があるということで、夜間バスでの日帰り強行軍。大変だろうけど頑張ってね。今日一日お疲れさま。
8月15日。
今日の目的は完全に寺巡りだ。増上寺と善養寺。浅草寺は昨日回ったから除外。まずは港区へと向かう。電車を乗り継いで赤羽橋で下車。そこから徒歩で増上寺へ。天気はよく、気温も高い。途中、水分補給をしながら歩いていくと、敷地が目に入った。脇から敷地に入れそうだったが「やっぱり、正面から入るべきだよな」と思い、遠回り。正門から中に入る。ここの境内は広い。とても広い。正面本堂を目にやると、背後には東京タワー。うーん、絵になるなぁ、と思った時だった。何かが引っかかるのだ。
「おかしいな……この光景、以前どこかで……?」
そう、見た覚えがあるのだ。しかし、東京なんて滅多に来る場所じゃない。写真か何かで見たのだろうかと記憶を探る。そして――
「あ、ここ来た事があるじゃねーかっ!」
そうなのだ。増上寺へ、俺は来た事があったのだ。といってもだいぶ昔の話。俺がまだ高校1年生の頃だ。こっちにいる伯父に色々と案内してもらったのだが、ここへはその時に来たのだ。もっとも、その頃は魔人もまだないし、別にどうという感想もなかったのだが……。
何だか複雑だったが気を取り直し、東京タワー方面へ。タワーには登った事がある。今更遠くの景色を見るのも何だし、外からその姿を拝むだけにしておいた。入場料ももったいないし……(笑)
途中、そば屋に入ってざるそばを所望。腹ごしらえをして、再び乗り継ぎの旅。今度は善養寺である。最寄りのJR小岩駅までは電車で。そこからは素直にバスに乗った。いい加減暑かったのもあるし、バスのタイミングもよかったからだ。
病院前という安易なネーミングのバス停で降り、少し歩くとすぐに善養寺だった。正門から入ると真正面、立派な松の木が目に飛び込んでくる。影向の松だ。
「うわ……すごくでかいな……」というのが口に出た感想。幹もそうだが、何より枝の広がり方が普通じゃない。某目黄不動(貧相な方ね(笑))の境内くらい飲み込んでしまいそうなくらいの範囲に、枝が広がっているのだ。カメラでもあれば写真に撮ったのだが、生憎とカメラは持っていなかった。何だか前にもこんなこと言ったような……。
松を堪能してから境内を彷徨う。すると端っこの方に例の石碑があった。浅間山噴火犠牲者供養碑。これ自体が、江戸川区登録有形文化財に指定されているようだ。よく分からないけど(笑)それはさておき説明の標識を読んでいく。そこで面白い文を見つけた。要約するとこうだ。「昭和30年頃に行方不明。47年に寺内で発見」……こんなもんが、行方不明? しかも、15年以上も寺のどこかにあったと……? なんで見つからないかな……どこぞに埋もれてたのだろうか……?
これでめぼしい場所は全て見て終わった。東京へと向かう電車に揺られながら、他にどこかへ行ってみようかと考える。パラパラと地図をめくり……ある一点で止まった。
「首塚……そういえば、あったな、そういうのが」
平将門の首塚である。何度か行ってみたいとは思っていたのだが、結局うやむやのままだったな。よし、行ってみるかということで、目的地決定。
東京駅で降りて、そこからは歩く。しばし歩くと川に出た。いや、川ではなく堀だ。ということは……ここって、皇居?(笑)そういや、東京駅のすぐ近くだったっけ。地図を見た時に気付かなかったのは迂闊以外の何者でもないなぁ(汗)ま、目的地は首塚だ、ってことで素通り。そして到着。
もっと、緑が多い所に寂しく建っている物だとばかり思っていたのだけれども、ぽつん、とその敷地があった。かろうじて残されているといった感じのそこは、ビルの陰のせいで薄暗い。もっとも、別に変な雰囲気を持っていたわけじゃないけど。素直に手を合わせて、首塚を後にした。途中で同じく首塚目当てらしい団体さんとすれ違う。何やら写真をぱしぱし撮っていた。
そのまま新宿に戻り、適当に腹を満たしてホテルへ戻る。今回の予定は全て終了。疲れを取るべく風呂につかり、やや早めだったが寝た。
8月16日。帰る日。以前と同じく、荷物を片づけて東京駅へ向かう。
職場に土産を買おうと思い、人数を数えてから、それに近い数の物を購入。何を買ったかは忘れた(笑)
新幹線の切符を買って、乗り込む。今回ものぞみに乗った。いや、ひかりと金額も千円ちょいしか違わないし、こっちの方がお得な感じがしたから。さて、席に着こうと通路を歩いていたわけだが、自分が座るはずの席に人影が……。自分の切符を確認したが、そこに間違いはない。「これって、もしかして重複発券か?」と危惧しつつ、声をかける。一つずれてただけで、向こうの勘違いでした(笑)
これもアクシデントといえばそうだが、他は大したこともなく、無事に岡山へと帰り着いたのだった。
今回の装備。
頭:なし。
身体:服。
手:腕時計。
足:運動靴。
携行品
携帯電話
リュック:ゼンリンまっぷ東京23区、上撰の旅:東京、ホテルガイド・首都圏。
ポーチ:MDウォークマン、MD×4、予備電池(単三×2本)、ペンライト、十徳ナイフ、筆記用具、タオル。
旅行カバン:着替え一式×三日分、携帯用充電器、MD用アダプタ、MD用充電器。
旅費・買い物等総計:69,328円。
入手品(持ち帰ったもの):職場への土産(お菓子だったと思うけど、詳細忘却)