KANの冒険
Quest1:伊賀上野へGO!
無性にどこかへ行きたくなった。別に人生に疲れたとかそう言った理由じゃなく。単に「家でゴロゴロするのもな〜」というだけの理由で。
しかし、行きたい所というのはたくさんある。京都だってまだ色々巡ってみたいし、奈良の遺跡群だってまだ見てない。島根の方も古墳があった。最近見つかった柱は見学不可らしいが、出雲大社も一度は見たい(あそこへ独りで行くのか……いい縁に巡り会えるか?)。東京の魔人巡りも全然だ。九州方面も行きたいし、富士山もいい。そういえば山口の秋芳洞もまだだったな。
県内の気になる遺跡もまだ見ていないというのに気分は県外へ……ま、県内は手間がかからないからいつでも行けるさという安直な考えからだが。
ちょうど勤務体制上、連休ができたのでその内一日を費やして日帰り旅行をすることにした。泊まりもいいが、いかんせん急な思いつきなので止めておく。行き先は……よし、奈良方面にしよう。早速、仕事の昼休みに某紀伊■屋にて「○撰の旅24 奈良・大和路」を購入。併せて「る○ぶ:奈良を歩こう」も買う。休憩時間の合間に行きたい所に付箋を付けていくが
「こ……こんなにあるのか……(汗)」
なんとまあ、行きたい場所の多い事。とてもじゃないが1日で回るのはどこ○もドアでも使うか、空間転移でもしない限り不可能だ。もちろん私はそんなもの持ってないし、使えもしない。いったい何処にしたものかと「○撰の旅」のページをめくっていると、奈良・大和路とのタイトルにもかかわらず伊賀上野のページ。
「伊賀……忍者……如月?(爆)」
こう考えてしまう辺りかなり染まっているのだろうが、ここに決めた。伊賀流忍者博物館と上野城をメインにしよう。忍者の使った武器や道具、一度は実物を拝んでみたいと思っていた。しかしこれだけではちと寂しい。他にどこかないかとページをめくり……
「室生……近いな……。でも室生寺って、以前職場のレクの絡みで、バスツアーで立ち寄ったっけ……寺の関係者用(と思われる)駐車場に高級車が並んでたの見てびっくりしたっけな〜。そんなに儲かるなら俺も伯父の後継いで住職になれば良かったかな〜(住職を継ぐ云々の話は実話です。結局実子二人を含む親戚筋の誰一人継ごうとはせずに別の寺から人が来たけど)」
そんな事を考えながら、地図を見る。ある物件(笑)で目が止まった。
「龍穴神社?」
何でも龍が棲むという洞穴があるらしい。龍穴の単語で龍脈が浮かんできた私はやっぱり染まっているらしい……。
結局伊賀上野と室生にすることにした。
まずは計画だ。本当は時刻とかも気にせず行き当たりばったりな旅が好みなのだが、たまには計画を立てて行動してみようと思い立つ。
家に帰って、昼間だというのにパソを立ち上げネットの海へ。まずは交通手段だ。とりあえず、節約を兼ねて京都までは鈍行で……むう、以前中学の時の卒業旅行時は、午前三時か四時頃の岡山発があったはずだが……しかも土曜日なので運休が多い。仕方ない、新幹線だ。次に京都からは――
とまあ、こんな調子で上野までの計画は完成。ネットは偉大だ。さて、それじゃ次は室生だ。最寄りの室生口大野駅までは順調だった。のだが――
「で、龍穴神社まではバスか……えっと、奈良交通で……時刻表は――!?」
マウスを持つ手が止まった。
「全然本数がないやんけ〜っ!」
室生寺方面への路線がいくつかあったのだが、室生口大野駅に着いた頃にちょうど使えるバスが一本もない。
「歩くか……? バスで15分って事は……歩けば1時間くらいか。しかし体力はともかく時間を考えると……」
下手するとどこかで宿を取らなければならなくなるかも知れない。仕方なく、室生は諦めた。今回は、だが。
旅行当日。3月10日。5時に起床。着替え等をすませる。向こうは寒いだろうから少々厚着。汗かきさんなので、暑くなった時用に薄手の上着も準備。
外に出ると当然暗い。しかも寒い。ふと空を見上げると月が真円を描いていた(ように見えた)。いいモン見たなと思いつつ、徒歩で最寄りの備前西市駅へ。そこから電車で岡山駅まで行き、新幹線の切符を買う。もちろんひかりだ。のぞみなんて贅沢、できるものか。朝一だし、自由席でも問題なし!でも一度は乗りたいな、のぞみ。
ひかりに揺られること約70分。京都に到着。やはり寒い。とりあえず目的の奈良線のホームを探す。すぐに見つかったが発車まで時間があった。小腹が空いてきたなと思ったその時、鼻孔をくすぐるスパイシーな匂い。近くにあったカレー屋さんからだった。
「朝からカレーか……うーむ……」
一瞬悩んだが何を悩むことがあろうか。職場近くの一皿盛り放題で390円のセルフのカレー屋を愛用し、泊まりの日には昼夜2食ともカレーだったこともある(だって、安いんだ)私が……。
結局入店。カツカレーを所望(朝っぱらから)するが生憎と朝はビーフカレーとコーヒーの「モーニングセットB」しかないらしい。それを注文し、食べる。
途中で入ってきた初老の夫婦がコーヒーをすすりながら店長(らしき人)と世間話。不意に漬け物の話になり、女性の方が「漬け物は体にいいのよ」と私に話しかけてきた。そうですか、と相づちを打つ私だったが実は私は漬け物が苦手だ。心の中でゴメンナサイと謝りつつ、カレーを平らげて店を出た。
奈良線に乗り換え、奈良の手前の木津駅で降車。ここから加茂駅まで行って、また乗り換えるのだが、待ち時間がヒマになった。MDを数枚持参していたが、耳はともかく手元が寂しい。売店で130円のライターとマ○ルドセブンのスー○ーライトを買う。1本に火を付けた時点で
「何で煙草なんて買ったのだろう?」
と自問。普段吸わないくせに。酒が入った時限定で、しかも買わずに吸う人から強奪する(強盗だ)自分が何故? ガムかアメにしておけば良かったと後悔した。やがて電車が到着。それに乗って加茂駅で降車。さて、次の電車は何処で乗るのかな、などと思いつつ
「すみません、伊賀上野まで行きたいんですけど、何処で乗ればいいですか?」
と駅員に尋ねると
「今出たよ」
とフレンドリーかつ、無情な一言。指さす方を見てみれば、降車した時に正面に止まっていた、紫色した電車が去っていくところだった。乗り遅れ……計画は目的地に着く前に挫折した。
仕方なく駅を出る。次まで約1時間。近くの飲食店に入り時間を潰すことにした。結局ここでラーメンを注文。さっきカレーを食べたばかりだろうというツッコミは却下だ。
次の電車には乗り遅れることはなく、いざ伊賀上野へ。乗ったのは2両編成のまるで路面電車みたいな車両だったが、1時間に一本というダイヤのせいか、すし詰め状態。その中にガールスカウトの女の子が数名、保護者付きで乗っていた。
旅の途中で小さい子供に会ったら、持ってるお菓子をあげる事がよくある。自分が子供の時にそうされて嬉しかったからなのだが、今回は何も持っていなかったので断念。どっちにしても私の間合い(笑)に入ってこなかったので、持っていてもあげる機会はなかったが。
伊賀上野駅に着くと伊賀線に0分程で上野市駅に着く。この時思ったのは
「最寄りの駅からでなくて、伊賀上野駅から歩いても、そう時間かけずに目的地へ行けたんじゃ?」
元々歩くのはそれほど苦にならない人間である。中学2年の時(だったと思う)に兵庫県境付近から5泊6日で岡山市の少年自然の家まで仲間と歩いたのはダテではない。まあ、過ぎた事はもう遅い。
予定では伊賀流忍者博物館と上野城だけのつもりだったのだが、それに加えてだんじり会館とのセットで入場割引があるとの情報を入手。室生を諦めていたので時間の余裕はある。セットの割引券を購入し、まずは忍者博物館へ。
ここの忍者屋敷は別の場所にあったものを移築したらしい。行くとくノ一がからくりの説明をしてくれた。お約束のどんでん返しとか武器の隠し場所とか。他の見学客に実演をさせるという趣向があり、酔っぱらいの上司らしいのにせっつかれたやはり酔っぱらいらしい若いの(私よりは年上に見えた)が実演に参加。勢い余って、どんでん返しの向こうでどこかに身体をぶつけたらしく、派手な音。同僚達に笑われていた。
しかしくノ一を見て思ったこと。
「ピンクの忍び装束って……馬鹿げてるよな」
くノ一さんゴメンナサイ。きっと好きで着てたのではないのでしょう。口にはしません。心の中と、このページだけに留めておきます。
とまあ、そんな事はさておき、屋敷の見学も終わって地下へ。手裏剣やら水蜘蛛やらの道具が展示されていた。忍び甲冑とかも。なかなか格好いいので、頭の中で如月に着せてみた。彼は柔らかいから(亀なのに)これを着れば防御力は格段に上がりそうだ。動きは鈍るかも知れないけど。
それと、よく水の上を歩く道具だと言われる水蜘蛛。実際は泥沼とか湿地といった足場の悪い場所を進む時に体重を分散させるための物だ。その説明もちゃんとあった。さすが。
あと、手裏剣の実演ができるとの話を聞き、参加。1回5枚で200円。金を取るんだななどと思いつつやってみた。
結論――修行が足りない(当たり前だ)。5枚のうち、「的」に刺さったのが1枚。「的」を支える板に刺さったのが2枚。板に弾かれたのが2枚。
上野城は見晴らしが良かった(爆)。他にも県の重文指定の兜とかあったけど、あんな動きにくそうな物をかぶって戦ってた藤堂高虎(だったはず)ってすごいな、ある意味で。だって、兜の飾りが不自然なくらい大きいんだもの。あんなモンかぶってたら、さぞかし目立った事だろう。功名目当ての雑兵の、格好の的だ。カメラがあれば写真でも撮っとけたのだが。デジカメ買おうかな?
続いてだんじり会館。ここはその名の通りだんじりが展示してある。何でも上野天神祭のものらしい。煌びやかなだんじりを見てると、これが動いてるところを見てみたくなった。機会があれば祭りに来てみようか。
それと天神祭の時の行列の衣装が展示してあった。供奉面との説明書きがある。役行者と鬼の行列。大人の鬼、子供の鬼とあったが大人の鬼を見てると
「あ、これって鬼道衆っぽい」
と思った。衣装を忍び装束にかえてやるとそのまんまだ。まさかとは思うが、これを参考にしたのだろうか? ともかく鬼道衆のイメージが目の前で固まった瞬間だ。
他にも、全国の鬼に絡んだ祭りのマップが壁に貼り付けてあった。我が故郷岡山は、桃太郎伝説があるにもかかわらず、二カ所のみ。意外な気がしたが、このマップは随時更新されてるらしい。鬼にまつわる祭りがあったら一報を、みたいな書き置きがあった。こういった祭り、日本全国どこでも一つはあるのだろうと思っていたら、南九州の一部と沖縄には一つもなかった。これも意外だった。
こうして目的は果たし、あとは土産を買うくらいだ。せっかくだからと手裏剣を三枚買う。鉄製らしく、研げば刺さるようになりそうだ。せめて的に当たるように修行してみるのも一興か。あとは酒。徳利に入ってる地酒があり、それを購入。しかし、いくら伊賀だからって、「忍(しのぶ)」って銘はどうだか?。
そして帰路へ。上野市駅から伊賀上野駅へ到着。次の電車はすぐ来るはずだ。とっとと移動し、ホームへ立つ。
しかしここでまたもや失敗。目の前――反対のホームに電車が止まった。ホームを間違えたらしい。慌てて階段を駆け上がり、移動するが時既に遅し。また乗り遅れた。
「せめて、時刻表にどっちのホームかくらい書いておけ!」
と思ったが、駅名看板には矢印があり、自分がいたホームの看板についていた矢印は反対方面を向いていた。
結局また一時間程待ち、何度か乗り継いで無事に京都駅へ。さて、時間は16時頃だが腹が減ってきた。朝方、中途半端な時間に食べたせいだ。地下街を彷徨い、以前寄った事のあるトンカツ屋を見つける。ここにしようとも思ったが、満員だったので断念。ここ、おかわり自由なのに。仕方なく近くのレストランでセットメニューを頼んだ。
腹もふくれたし、新幹線の切符を買おうと歩く。途中、ある喫茶店のウィンドウが目に入った。そこにあった物体に目を奪われる。
「すぺしゃる・じゃんぼ・ぱふぇ?」
平仮名で書いたが、実際は片仮名だ。とにかくデカイ。高さ50センチくらいありそうな化け物だ。値段を見ると5000円。こんなモン頼む人間いるのか? そもそも一人で食べきれるのか? カップルとかで食うんだろうか? こんなモン食ったら、他の食べ物入らんぞ。等と思いつつその場を離れた。しかし……すごかったな。
途中で本屋を見つけ、DPSを買う。さすが京都。岡山だったら店に並ぶのは月曜だというのに。ちょっと得した気分。
こうして新幹線に乗り、無事に岡山へ。ただ、着いた時には雨だったので、タクシーを使って家まで帰った。傘を用意しとけばよかったな。そうすれば千円は浮いたはずだ。
今回の装備。
頭:なし。
身体:服、コート。
手:腕時計。
足:運動靴。
携行品
携帯電話
リュック:時刻表、タオル、薄手のジャンバー。
ポーチ:MDウォークマン、MD×3、携帯食×1(カ○リーメイト・チーズ味)、予備電池(単三×2本)、ペンライト、十徳ナイフ、筆記用具。
旅費・買い物等総計:26155円
入手品(持ち帰ったもの):手裏剣×3(鉄製・十字型)
お酒×1(伊賀地酒『忍』)
電撃PS 172号。