「変わる建築士制度」
―カードに得意分野を明示―
昭和25年に誕生した建築士法は、半世紀を超える年月を経て、今大きく変わろうとしています。そこで今回は建築士がどう変わるのか?を紹介したいと思います。
建築士会では平成15(2003)年より、社会へ向けた信頼できる建築士への有効なアクセスとしての職能表示制度ともいうべき「専攻建築士制度」を新たに創設し、実施を始めました。
■専攻建築士制度
これから目指すべき新しい建築士像は、地域環境への配慮を始め、良質な社会的ストックとしての条件を備えた建築「環境建築」を造り、育て、守ってゆくために必要とされる建築士なのです。
それには@幅広い基礎的素養。A高い専門能力。B健全な職業倫理。といった、三つの資質を有する技術者「新しい建築士像」ととらえています。
建築士の現実の業務活動は、技術の高度化の流れの中で業務領域は多岐に分かれざるを得ない状況になっていて、消費者側としても、業務を提供してくれる建築士が、どの業務領域を担当し、どのような責任を果たしてくれるのか明らかでないところでした。そこでこの度、この要求に答えるべく消費者保護の観点から提唱されたのが「専攻建築士制度」です。
■八つの専攻領域
専攻建築士には@まちづくり専攻A統括設計専攻B構造設計専攻C設備設計専攻D建築生産専攻E棟梁専攻F法令専攻G教育・研究専攻の八つの専攻領域があります。お医者さんに診療科目があるように、建築士にも得意を明示してもらおうというものです。
■発注のメリット
このように建築士の詳細な情報が開示されることで、建築に関わる多様な専門家の位置づけなども明確になってきます。また一定レベルの能力と実績のある専門建築士が顕在化することで、そうでない建築士との区別が始まると考えます。
今後ホームページなどで公開されますので「信頼できる建築士」を選択しやすくなります。結果、設計や工事の発注などで、より良い人(専攻建築士)を確保することができ、「建築士の質の担保」や、より良好な町並み、景観を生み出すことにつながると考えています。
志のある建築士は、この制度に大勢が参加することになると思います。ユーザーの皆さま方も今後建築士に依頼する時は、このことを要件の一つに加えて選択していただければ幸いです。
得意を明示する「専攻建築士経歴証カード」
【2010年11月1日(月) 岡山日日新聞掲載】