見直される大規模木造建築
地震、火災も大丈夫
木造の良さが見直され、大規模な木造建築が可能になりました。
また、今年から公共建築にも「木材の利用促進に関する法律」が整備されて、これからはどんどん木造の公共施設が誕生しそうです。
今まで木造と言えば、火災や地震に弱いといったイメージが強く、また、戦後に制定された法律が木で造ることのできる大きさなどの規制を厳しく制限した為、大きな木造建築を建てることがきわめて難しい状況にありました。
しかし考えてみると、木造だからといった理由で地震や火災に弱いわけではありません。
地震に対して強度が必要なところには、木材を太くしたり大きくしたりすれば良いし、火災に弱い点も現在の技術で耐火性もクリアーできるようになってきました。
技術の進歩は著しく、木造ビルも鉄やコンクリートに代わって増えてきそうな動きにあります。
もともと日本は森林国であり資源も豊富にあります。木材は鉄やコンクリートと比べて製造時にかかるエネルギーもずっと少なくて済むので、木造建築をたくさん建てることで、街は森林以上のCO2貯蔵効果が期待されます。併せて低炭素社会の実現にも貢献できると考えられています。
では、具体的に木の良さを活かした建物を取り上げてみましょう。
まず、子供が一日の大半を過ごす「学校」は、木を上手に取り入れた空間づくりで、木とふれあう生活ができ、自然を大切にする心を養うことで、次世代を担う子供達の教育環境に大きな期待が持てます。
「病院」の木造建築では、木のやすらぎ、木のぬくもりがストレス対策にもなり、人々の心に対するサービスにもなり得ます。
また、街を見ると「岡山駅西口駅舎」でも上家や手すり格子に木が使用され、古くからの日本の木の文化が、あたたか味のある街づくりに貢献しています。他にも庁舎、老人ホーム、美術館などと大規模な建物にも木造が見直されてきています。
岡山駅西口駅舎の木造上家
木造は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造に比べて、全ての性能を総合的に評価してみても優れている点が多く、技術開発で使いやすくなったこともあります。また何と言っても建物重量が軽くなり、基礎のコストが抑えられるので工事費全体からしても安くなるメリットが挙げられます。
日本人は昔から木造が好きで、木は生命感のある魅力的な素材です。木で大きなビルが建てられること自体があまり知られていなかったので、今までは木造でビルを建てたいと考える人は少なかったと思いますが「えっ、このビルが木造なの?」といった時代がこれからやってくるでしょう。
私も木の研究グループの一員としてこのような取り組みに参画していますので、今後いろんな場面で木造建物の研究成果を披露して行きたいと思っています。
【2010年8月30日(月) 岡山日日新聞掲載】