一級建築士事務所 

    木に 住む

【設計方針】   ヒマラヤ空間工房の家づくりに対する基本的な考え方です

□ 木構造についての考え方

  家づくりにおける伝統技術(伝統工法)は日本
の風土に対する智慧の集積です。従って、職人
技術を生かすことや、伝統的な家のつくりを学ぶ
ことは大切です。その上で、新しい現代の技術を
取り入れて行きたいと考えます。

T) 骨組みについて
  管柱は12cm角、梁巾も12cmで通し柱は15cm以上です。通常、特に大壁は、管柱や梁巾は
  10.5cmで通し柱は12cm角の場合が多いのですが、伝統工法による継手・仕口の欠き込みに
  よる断面欠損や、現在大量にストックされている杉材の有効利用を考えて、少し骨太です。
  柱・梁が骨太であると、開放的な間取りや空間が可能なのと、部分的に骨太な骨組みを見せる
  ことができます。また、長い目で見ると、改築(リフォーム)の時に有効です

U) 耐力壁について
   耐力壁とは、地震や風による水平力に抵抗する壁のことです。筋カイがよく知られています
  が、他には構造用合板を用いたものや土壁などもあります。標準仕様として、外周部には構
  造用合板を使用し、内部は合板を使用したくないので、筋カイとしています。外周部に構造用
  合板を用いる主な理由は、筋カイにみられる急激な破壊がなく、徐々に破壊していくことや、
  窓の上や下にできる小壁や腰壁などの雑壁にも合板をはるので、雑壁効果が期待できる
  からです。ただ、合板は湿気に弱いので、外壁に通気層を設ける、通気工法とします。

V) 基礎について
   基礎は、コンクリート打放し仕上のベタ基礎を浮き型枠によりベースと立上がりを一度で打設
 するベタ基礎一体打ちを標準としています。こうすることで、強度があがり、打ち継ぎ面の防水
 およびシロアリの侵入を防ぎます。通常、コンクリートの厚さは底盤部分が15cm、立ち上がり
 部分は平屋の場合で12cm、2階屋で15cmです。配筋は、住宅金融公庫仕様書によっています。
 また、湿気対策として、防湿フィルムを敷き、基礎パッキンを使用したスリット換気を採用してい
 ます。スリット換気は、基礎を傷めず、土台の乾燥にも良く、床下をまんべんなく換気することが
 できます。それから、床下高さは、メンテナンスを考えて、人が這って行ける高さ(40cm位)を
 確保しています。


□ 素材についての考え方

素材は、できるだけ本物を使いたいと考えます。
本物とは、ムクの木や漆喰を基本として、それらと
バランスがとれる自然素材です。また、国内の
森林資源の有効利用を考えて、国産材を積極的に
使用したいと考えます。

T) 構造材について
   柱は杉・桧、梁は杉・地松および米松を使っています。特に、杉は戦後大量に植林され、
  現在伐採の時期を迎えています。これらの杉を使うことは経済的であると共に、環境に
  とっても重要なことです。杉を梁として使う上で気をつけることは、断面を大きめにすること
  です。少し骨太になりますが、梁をみせることで、杉のもつあたたかさを生かすことができ
  ます。また、地松同様、丸太として使用することで、空間のアクセントになると思います。
  柱の場合は、通常の断面で問題ありません。

U) 仕上材について
   壁は漆喰、珪藻土などの左官材をよく使います。色は白に近いアイボリーがほとんど
  ですが、質感を雰囲気に合わせて変化させることができます。また、水にぬれやすいところ
  や汚れやすいところなどには、杉や桧の縁甲板を張ります。床は肌にもっとも触れるところ
  なので、贅沢しても良いと考えています。贅沢といっても厚さのことで、30mmの杉厚板や
  地松厚板を使っています。
  また、床暖房の使用など状況によって広葉樹の床板を使っています。天井は、野地板を
  化粧で見せる場合や壁と同様に左官材を塗る場合があります。


□ 平面プラン及び空間構成についての考え方

木造の場合、平面プランや空間構成は、木構造
と深い関わり合いがあると言えます。構造に負担
を掛けることなく、外や内に開放的な間取りや
空間を造りたいと考えています。

T) 平面プランについて
   平面プランを計画する時、敷地の特性をどのように生かすかがポイントであると考えます。
  もちろん、敷地には長所もあれば短所もありますが、実際には、眺めが良くても家の中から
  はあまり良く見えなかったり、反対に狭い敷地でも狭さを感じさせない家もあるので、どんな
  条件でも設計次第で良い家はつくれると思います。ある意味で、設計するのが難しいのは、
  住宅団地の敷地かもしれませんが、要望を実現する上で、テーマを見つけることが大切です。

U) 空間構成について

   空間構成というと難しく聞こえますが、部屋と部屋のつながりのことです。空間構成は、
  個々の部屋が独立しているというよりは、連続性を感じさせたいと思います。この連続性が
  感じられることによって、開放感が得られると共に、家としての一体感が生まれます。
  たとえば、吹抜けをつくったり、天井を連続させたりします。そして、場合によっては引戸等
  によて、開けたり閉めたりできることや、吹抜けが通風や換気の役割をもつように、
  機能的であることも必要であると考えます。


□ 住宅の性能についての考え方

住宅の性能は以下の3タイプに分類できます。
 1.軒の出や窓の位置などにより日照・通風・換気
    を調節すること
 2.断熱材やペアガラスなどの建築材料の利用
 3.空調機や暖房機などの設備機器の使用
以上の3タイプをうまく組み合わせて、省エネルギー
で快適な空間の実現します。

T) 1について
   軒の出をある程度深くすることによって、夏の日射を防ぎ、場合によっては、立て簾を
  立てかけることで、気温差は5℃くらい違います。そして、空気の流れを考えた窓の配置
  にすることです。一般的には、2方向に窓があれば良いのですが、階段室などを利用して
  風が抜けるように工夫したり、天窓や高窓を組合せると、自然換気に有効です。ただし、
  位置を考えないと逆効果になる恐れもあります。

U) 2について
   断熱材は、次世代基準でリサイクルを考えて、ペットボトルの再生品から作られる
  パーフェクトバリアを使用します。そして、耐力壁に構造用合板を使用する場合、外壁の
  内部結露防止のために、室内側に防湿フィルムを貼っています。また、壁を小舞下地土壁
  にした場合でも、床面及び天井・屋根面にしっかりと断熱材を充填すれば、岡山県南で
  あれば問題はありません。
  それから、ペアガラスや断熱サッシは、結露防止としても有効です。

V) 3について
   設備機器の進歩は目を見張るものがあります。省エネルギータイプのものや深夜電力を
  使用するものなど、長い目でみて、コストパーフォーマンスのよいものを選ぶ必要がありま
  す。また、設備機器に頼り過ぎないことも必要ですが、人や建物を補助する意味でも、設計
  段階から適切に計画する必要があると思います。たとえば、開放的な居間には、ペレット
  ストーブをお勧めします。木から作られた燃料を使い、家全体が温まり、空気を汚しません。


□ コストについての考え方

ローコストとは、安ければ良いというものではなく、
コストパーフォーマンスの良さだと思います。従って、
坪100万円でもそれ以上の価値が認められるなら、
ローコストですし、坪40万円でもそれ以下の価値
ならハイコストです。よって、ローコスト化のカギは、
発想の転換にあると考えます。一定の質を保ち
ながら、常識や固定観念にとらわれないプランや
素材の使い方を工夫することです。

T) 坪単価について
   坪単価は必ずしも正確な指標であるとはいえませんが、今までの実績から言えば、
  坪50〜65万円の間が多いです。同じ坪単価でも、住まいによって、吹き抜けがあったり、
  軒の出が深かったり、ベランダやバルコニーがあったりそれぞれ要望に応じた特徴があり
  ます。予算を坪単価で割れば、目安として建築可能な床面積となりますが、工夫次第で
  ローコスト化は可能です。

U) ローコストの手法について
   一番のローコスト化は、床面積を小さくすることです。ある意味で無駄なスペースを省き、
  合理的な動線の間取りにします。またボリュームを抑えることも重要で、天井高さもメリハリを
  つけると良いと思います。仕上材は、節のある板材や中塗り仕上げなどにしてザックリとした
  感じも良いと思います。また、木部の塗装など施主施工でやれば、手間はかかりますが、
  その分愛着がわくはずです。設備に関しては、展示処分品などをさがして、施主支給品
  として取り付けだけをやってもらうことも可能です。


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