■■『クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』■■ |
| 2002.4.21 |
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| 。。。。。 |
えっ、まだ観てない?
上映は、5月10日までらしいですよ。
どうぞ、だまされたと思って観に行ってくださいな。
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「しんのすけたちの時代は平和なのじゃ」
姫や殿の口から、幾度も発せられるこの言葉。
しかしながら、戦国の世が「有事」で、現代日本が「平和」な「平時」なんて、そんな単純な図式を描いているわけでは決してありません。
いえ、映画自体は、現代日本がどーしたのかなんて一切、触れていないのですが・・・・・。
パッと見は、戦国時代の悲恋物語です。
姫と青空侍(イジリマタベエ←漢字わからん)の悲恋も丁寧に描いてあって、それだけでせつなく哀しくて、自分がボロボロ泣いているのはその悲恋のせいなのだろうか、と、錯覚しそうになりますが、実はそれだけでないのが、『クレしん』のスゴイところ。
戦にあけくれ、お国存続のためには、大切な娘を大国に嫁がせるなんて常識。そしてすきあらば、戦を仕掛け、領土拡大を狙うそんな戦国時代。
こんな戦国の世の中は、現代日本とたぶりはしませんか?
理想やプライドなんて、いったいどこに消えてしまったのか。
というか、そもそもそんなものがあったのか。
金儲けのためなら、表示の偽装やクレーム隠しはお手のもの。下請けつぶしも、貸ししぶりもなんでもござれ。世界一大きくなったというあの銀行の醜態ぶりはいったい何?
サラリーマン&ウーマンという企業戦士はいったい何を信じて何のために戦っているのか?
生き残るため?
じゃあ、どこまで戦って、どこに行き着けば、平和に暮らすことができるの?
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ひろしたちの話をきいて、姫をオオグライなんとかという大国に嫁がせるのをやめた殿もなかなかカッコいい指導者だし、青空侍もお茶目でカッコよくて、すんごくいい男。
子どもたちのお供で(もしくは子どもをダシに)映画を観に来たお父さんたちは、きっと自分が青空侍になったようないい気持ちでご覧になっていらっしゃったのではないかと思います。
青空侍の奇襲と野原一家の活躍が首尾よく成功。
家来が闘うスキにこっそり逃亡しようとする敵の大将にしんのすけが言います。
「あれもこれも全部おまえのせいなのに逃げるのか。逃げるな」
そうだ、逃げるな。責任とれよ。おまえのせいだろう。思わず拍手、「そうだ!そのとーり!」と掛け声までかかりそうです。
オオグライなんとかの首をとろうとする青空侍を、しんのすけが止めます。
そうよね、「責任とって辞任する」のが本当の責任のとり方なのかといえば、そうじゃないものね。
馬に乗って姫の待つ城に帰る青空侍。
当時の戦が、お互い殺しあうまでするものではなかったのかどうかは私にはよく判りませんが、敵兵が引き上げていくのを認める青空侍の姿は、これまた余計にかっこいい。
ここでまた、お父さんたちは、「くぅぅぅ、かっこいいいーーー」と青空侍と自分を重ねたことでしょう。
誰もがハッピーエンドを信じていた瞬間、ドンと音がし、青空侍が倒れます・・・・。
彼をここで殺してしまわなくても、話自体をまとめることは十分可能ですし、そういう終わり方であっても、高い水準の作品であったことは間違いないと思います。
だけど、殺さねばならなかった。
彼を殺すことで、青空侍になりきって酔いしれていたお父さんたちを現実に引き戻します。
お父さんたちは、そのままめでたしめでたしで姫と暮らしていたのではダメだから。
そう、お父さんたちには、しなければならないことがあるから。
・・・・だけど、何をどうやって??
あんなにカッコいい青空侍すら殺されたのに?
青空侍は死の間際、しんのすけに「おまえと出会った理由がわかったような気がする」と言います。
正直、私はここらへん、もうウルウルで、青空侍が何を語ったのか、詳細に覚えていませんが、私はこう解釈しました。
「妻や子どもがいたら命が惜しくて満足な戦ができない。身内が戦の最中、倒れても気にせず進め」
などと言っていた青空侍が、「守るもの」(愛する姫でしょうか)の大切さを知ります。
そう、手柄や領土拡大のためでなく、愛するものを守るために戦うこと。
それはスバラシイかもしれない。
だけど、その戦う相手にも愛するものや大切に思うものがいるということ・・・。
(青空侍が誰に撃たれたのかについては、明確でなかったのですが、それは、戦で大切な誰かを失った者の仕業だと思います)
野原一家と見上げた青空は、爽やかでしたか?
私は、手も足もでないような絶望感すら感じてしまいました。
「いったい、どうしろというのか?」
前作『オトナ帝国』は、未来のために戦おう、という前向きなメッセージでしたが、今作は、じゃあ、いったいどんな未来を目指してどうやって戦うのか、そして、その戦いは正しいのか、というところを問われたような気がします。
この調子だと、次回作は、いったい何処へどうすすんでいくのでありましょう?
とにかく必見。
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