2000/06/08

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平成12年 6月定例会

「優良田園住宅」が岡山にできないか
〜自然と共生する住宅建設の可能性を探る〜

 優良田園住宅の建設の促進に関する法律というのがあります。たとえば、退職後に自然とともに暮らしたいと思ったとき、都市に近くても農山村地帯に家を建てるには色々と制限があるので、事実上困難です。それをある程度緩和して、自然環境との調和を図る住宅建設を認めようというものです。

 市街化調整区域であっても、場合によっては住居が建てられることになりますので、そのためにはしっかりした指針が必要です。宮城県の仙台市の近郊にある柴田町では次のような内容の方針を作って、造成の工事が始まっているそうです。

@農用地の利用に支障がない地域であること。
A既存の集落に隣接又は近接していることの
B周辺の景観と調和すること。
C外柵は「生け垣」によること。
D造成は極力最小限にとどめること。
E生ゴミの処理計画を作ること。
F植栽計画を作る。
G合併浄化槽を設置すること。
H宅地内の舗装をしないこと。

 水質の保全や生態系の保護に配慮したものであり、岡山市での可能性についても論議されるベきだと思います。

 これを促進するために、不動産取得税の特別措置の適用対象になりますし、固定資産税の減免措置の導入も可能と考えられます。また、住宅金融公庫の特別融資が利用できるなどの道も開かれており、聞くところによると、全国的にも関心が高まっているそうです。


◆(羽場頼三郎君) 午前中の締めくくりになると思いますが,質問させていただきたいと思います。
 今回はテーマを絞りましたもんですから,先ほど増川議員が質問されたんで,実はどきっといたしました。優良何とか住宅と言われたんで,同じだったらこれは全部削除しなくちゃいけないんじゃないかと思ったんですが,ちょっと違いました。私の方は,優良田園住宅について御質問をさせていただくということでございますので,ひとつよろしくおつき合いのほどお願いしたいと思います。

 優良田園住宅という言葉は,余り耳なれないというか,私も,つい最近までは耳にしたことがない言葉でした。で,どういうことなのかなあということでいろいろ調査もさせていただいたわけですが,この優良田園住宅というものについて,市の方も,どういうお考えでいらっしゃるのか,それをお聞きしたいと思っております。

 この「優良田園住宅の建設の促進に関する法律」というものが制定されたということを私も聞いたわけですが,それがどういったものであるか,これをお聞きしたいと思います。

 まず,法律の趣旨でございますが,我々の住環境,これが自然との間に生きるという意味で,いわゆる共生ですね,そういう共生関係にあることが望ましいわけですが,しかし一方で,自然を破壊することにより開発された土地に,家を建てざるを得ない,こういう矛盾に突き当たるわけです。

 もっとも,自然を生かせばいいということで,洞窟に住んだり,木の上に小屋をつくったりと,これだったら別に自然環境がどうこうということはなく,自然の中にそのまま生きるわけですが,そういうわけにいきませんから,自然を多少壊しながらも生きていくということになるかと思います。

 ただ,その中でも,極力自然に手を加えずに自然を生かした方法で家をつくって,そこに住もうじゃないかと,こういう発想になってくるんじゃないか。

 そこで,こういうふうにですね,田園地帯──田園地帯という言い方がいいかどうかわかりませんが──にゆとりを持って住みたいという,そういう国民の希望にこたえようと。しかし,こたえる以上は,何らかの一定のルールをつくって,その中で住宅建設を促進すると,こういう考え方で物事を進めようじゃないかというふうに考えられるわけです。そうした趣旨の法律だというふうにとらえてよいのかどうか,まずお聞きしたいと思います。

 そして,ここで言う優良田園住宅というものは,大体どういうようなものを指しているのか。住宅といっても,これは集合住宅といいますか,高層住宅,ああいうものもありますし,いわゆるわらぶきの屋根がある純然たる農家もあります。家といったらもうそれだけでいろんなイメージがあるわけですが,どういうイメージを持ったらいいのか,これを具体的にお示しいただきたいと思います。

 それから,農村や山村など都市の近郊で,かつよい自然環境に恵まれているところに住宅を持ちたいと思っているが,幾ら思っても,簡単に家は建たんわけです。で,現在では,そういうところにどういう規制が存在しているのか。その規制というものの目的と,この優良田園住宅の建設の促進との関係はどういうふうになっているのか,どのように考えたらよいのか,お聞きしたいと思います。

 岡山市は,先ほどもお話に出ましたように,全国でも有数の農業市と言われており,そうした農・山村の環境というものが市域の中に含まれておりますので,この法律の適用になると思われるその地域というものが,岡山市に実際に存在するのかどうか。存在しなければもう話になりませんが,実際にそういう土地といいますか,地域というものがあるのかどうか。この法律の適用の可能性についてお伺いしておきたいと思います。

 そして次に,この優良田園住宅の建設を考えたときには,国,県,市それぞれあるわけですが,どこが主体的に取り組むというふうに考えたらいいのか,これをお示し願いたいと思います。

 これがもし市であるとすれば,市としての取り組む基本的な考え方をお教え願いたいと思います。

 実は,私もちょっと聞いたり調べたりさせていただいたんですが,仙台の近郊に柴田町という町がございます。これは「樅の木は残った」という,あれは山本周五郎でしたかね,その物語の舞台になったところなんですが,その柴田町に今この優良田園住宅がスタートしているということなんです。そこでは,町の基本的な方針として幾つか決めているんですね。

 1つは,もちろん農業には現実として使われている土地ではないと──これは当たり前なんです。農業に使われている土地に支障を来さないこと。

 そして,既存の集落に,隣接もしくは近接している場所であるということ。これは私の推測するところなんですが,やはり地域的な連帯というものを想定しているんじゃないかと思います。

 それからもう一つが,周囲の景観と調和していること。やはり,自然環境を大切にするというわけですから,緑の中に真っ赤な屋根がぼうっとあったりするような,そういうのはちょっとおかしいんじゃないかという意味じゃないかと思いますけれど,いずれにしても,景観との調和ということも大切です。

 そして,ここからなんですけれどね,その外さく──外さくと言っていいんでしょうか,外側にブロックの塀なんかつくらないで生け垣にしてもらいたいと,こういうわけです。生け垣でちゃんと家を囲ってもらいたい。

 それから,土地を造成するに当たっても,もう極力最小限にとどめるということが大前提。これが5つ目でしたか。

 それから,生ごみですね。住めば当然ごみが出ますから,そういう生ごみの処理はちゃんと計画的にやっていく。具体的に言えば,例えば生ごみは土から生まれているものだから土に返すと。コンポストを利用するとか,この岡山でもちょっと試みをやりましたけれど,そういう発想で生ごみの処理を計画してもらいたい。

 それから,そういう自然の中に住むわけですから,当然植栽計画が必要だと,そういう植栽計画もつくってもらいたい。

 それから,この柴田町では,浄化槽は,これはもう必ず合併浄化槽でやってもらうというふうになっている。

 それから,大事なことなんですけれど,この宅地の中は,土そのものを生かそうというわけですから,舗装をしてもらっちゃ困る。車を置く場所ぐらいはしょうがありませんけれど,それ以外のところはとにかく舗装はさせないと,こういう発想なんですね。

 そういった発想で,一部造成が始まっているということをお聞きしているわけですが,こういった優良田園住宅についての情報について,市はどの程度把握されているのか。

 岡山県内で,この優良田園住宅の建設に向けて,自治体として基本方針というものが必要なわけですが,その策定をしようとしている動きがどれくらいあるのか。

 また,全国的な動きについても,もし把握をされていれば,どういうふうにとらえているのか,お聞きしたいと思います。

 最後に,その優良田園住宅の建設をするに当たっては,どういうような優遇措置を考えられているのか。これはいろいろあると思うんですね。

 また,住宅金融公庫などの融資──融資がないとなかなか家も建てられませんので──といったものの関係についてはどうなっているのか,わかれば教えていただきたいと思います。

 恐らく私の質問で午前中は終わるかもしれませんね。これをぱっと簡単に答えてしまえば,午前中で全部終わってしまうんです。そんなに難しい質問じゃあなかったと思います。岡山市の中で,我々が今後どういうふうな生活をしていくのかという,住環境についての質問ですので,ぜひ前向きな答弁をいただきたいと思います。
 よろしくお願いしたいと思います。(拍手)

◎市長(萩原誠司君) 御苦労さまでございます。

 午前中の最後,羽場議員の優良田園住宅の質問にお答えします。
 まず法律は,一連の景気対策の中で平成10年7月に施行された法律でございますが,単なる景気対策というよりも,しっかりとした住居基盤というものをつくろうという趣旨に基づいてできております。良好な自然環境を有する農山村地域等に優良な住宅の供給を促進しようと,健康でゆとりのある生活の確保を図りたいということでありまして,市町村は県の知事さんと協議をした上で,基本方針,建設計画の枠組みを設定して建設の促進を図れというのが骨格であります。

 その骨格に基づいてイメージされているその優良田園住宅の姿でありますが,農山村地域並びに都市近郊,まさに議員お尋ねのように,岡山の風土というのは,その風土としては非常に合っているわけでありまして,良好な自然環境を形成している地域に一戸建てをつくれと,集合住宅じゃないと。で,敷地面積が300平方メートル以上──大体100坪以上──と,ちょっと狭いかなという気もしますけれども,東京から見ると,もう広過ぎるぐらいなんでしょう。それから,建ぺい率が3割以下,容積率が5割以下,階数が3階以下というのが骨格であります。加えて,地域地域において,先ほどの柴田町──柴田郡柴田町というのがあるんですけれども──のように,もう少し微細に景観であるとか自然保護であるとか,そういうところに配慮することも可能なような話となっているようであります。

 そして,どうやってこれを進めていくかという具体論でありますけれども,ある意味では,今まで開発制限をしていたところにやれということになっておりますんで,ちょっと難しい問題が当然あるわけでありまして,無秩序にやられてしまったんでは,これはもうどうしようもないということであります。また,農業の健全な発展を阻害する形でやってもらっても困るというようなところがあるもんですから,例えば農振法の農用地区域の適用除外を必ずやらにゃいかんとか,農地法の転用とか,都市計画法の開発許可等関連の許認可というものをきちっとやっとく必要があるわけであります。

 それから,適用地域につきましては,各自治体の主体的な判断事項ということで,市なら市というものでそのイニシアチブをとることができるわけであります。

 そして,岡山市は取り組みをどうするんだということが,議員の御質問もここが一番焦点になるわけでありますが,岡山市にとっては,制度的に非常に難しい問題も残っておるわけであります。例えば,都計法が改正されて新しい法環境になっているとか,農振法の区域設定の見直しというようなことが,議論になっているということで,それらの方向性というものがまだ揺れている状況ですから,揺れているものと揺れているものをかみ合わせますと大揺れになってしまって,大変混乱するので,その辺のところを少しきちっとするというのが前提になっておるわけであります。その上で,優良田園住宅制度との整合性の確保というのが次に出てくると,こういう段取りになるわけでございます。

 岡山市におきましては,現在ちょうど市街化調整区域における土地利用方針の検討というものが並行して進んでおります。基本的には,めり張りのある形でいこうよということでありますが,その中で,例えば調整区域に容積率600%で,何か突然ビルが建ったりするというようなことよりは,断然法的な意味で整合性が高い考え方であるということは,私どももわかっておりますので,今後その中で地区計画を設定する際に,優良田園住宅地域というものの設定も選択肢の一つとして検討の対象にしていこうという,これはある意味では非常に前進した考え方になっているわけでありまして,御報告を申し上げます。

 そして,5点目でございますが,仙台市近郊の柴田郡柴田町というところ──ぜひ一度行かれた方がいいと思うんですが──については,ある程度聞き取り情報は持っております。大体議員のおっしゃったところにも符合するわけでございます。

 そして,岡山県内ではまだありません。全国的には,3,300市町村のうち,福井県福井市,新潟県上越市,宮城県柴田郡柴田町,北海道川上郡東川町,それから北海道夕張郡由仁町ということで,3,300分の5という状況でございます。

 その中で,私どもとしては,この宮城県の仙台市の近郊であるとか,あるいは福井市とか上越市とか都市近郊型のものを少し勉強をせにゃあいかんなというふうに考えておるわけであります。

 優遇措置につきましては,一番根本的な優遇措置というか,奨励措置というのは,その地区を指定する行為そのものがポイントになってきて,そしてその地区がこういうイメージだと。先ほど議員もおっしゃいましたように,コンポストかどうかとか,あるいは合併浄化槽必置であるとか,もうついているとかですね,あるいは泥だとか,木だとか,そういうところのイメージがきちっとできて,それに呼応する方々の購買意欲というか,建築意欲というものに刺激を与えるのは,これは最も重要な優遇措置であるわけです。

 お尋ねの中でもありました借りれにゃあいけんよという話につきましては,住宅金融公庫の住まいのひろがり特別融資というのがありまして,少し普通の融資よりも対応がよくなっているということであります。また,宅地造成融資等もあるわけでございます。さらに,税制上の優遇措置もほんの少し前向きなプラスアルファがあるということになっているわけであります。
 以上でございます。

◆(羽場頼三郎君) 丁寧な御答弁をどうもありがとうございました。

 私も午前中に済むと思ったものですから,少し前振りを少なくして,淡々とやったんですが,今の御答弁からもおわかりいただけますように,我々の住環境を,市町村みずからが主体的に,ある程度ルールをつくって,いいものをつくっていこうと,こういう法律の趣旨ですから,ぜひ前向きに進めていただければいいんじゃないかなあと思います。

 先ほど答弁の中にもありましたが,全国的には,そういう地方公共団体がもう既に取り組んでいるという中で,これは4月1日のが抜けていたかなあ。宮城県の松島町でも,これはもう既にやっておりまして,だから6市町ぐらいがやっているようですね。実際に動き出しているのは柴田町が一番早いみたいで,実はせんだって私もちょっと場所だけは確認に行ってまいりました。

 県内でも,実はかなり動きがありまして,県内で申し上げると玉野市,総社市,それから建部町,和気町,それから船穂町,鴨方町,寄島町,成羽町,神郷町,久世町,新庄村,奥津町,鏡野町,中央町と,これらのところが,この策定を一応予定しているんですね。策定に向けて動き出しているということでありますから,そういう県内の動きもあるので,私もちょっと質問をさせていただいたわけです。

 特に気になったのは,岡山市の近郊が結構名乗りを上げているわけですよ。そうすると,向こうがやって岡山がやらなければ,岡山の中で仕事をした,例えば,今度はその仕事が終わって退職後に,どこかに家を持とうと思ったら,もうそれだったら岡山市からちょっと外れて,それこそ玉野へ行ったり,総社に行ったりということになってしまいかねないので,せっかく岡山に住んでいただいているんですから,そのまま岡山に住めるような,そういうことが必要じゃないかなあという気がいたします。

 先ほどもちょっとありましたけれど,大体どういうイメージかといいますと,私もいろいろ考えたんですが,豊かな退職ライフといいますか,退職後に自然の中で暮らすとか。それから田園的なところから通勤するとか。それからもともと自然の中で暮らしたいという,そういうタイプの人とか。それから,東京とか大阪の都会に住んでいて,自然の恵みのある岡山の方に戻ってくるとか。もしくは私みたいに,県内ではありますけれども,これはJターンというんでしょうか,そこまではいかないけれども,岡山までは戻ってくるとか。そういう人たちが住宅を求めているんじゃないかなあという気がいたします。

 先ほどもちょっとあったので,その辺のところを情報として,ぜひつかんでいただいて,前向きな検討をお願いしたいなと思います。

 今回,前振りがなかったですから,もうすっきり前振りも後づけもなしで,質問の方も終わらせていただこうと思います。

 ただ,1つだけ気になっているのは,私がこういう質問をしようかなと思ったら,途端に,幾つかの不動産会社の方から問い合わせがあったんです。「どんなことを言うんですか」とかという問い合わせがあったんですから,やっぱり関心がある業者の方は多いのかもしれません。ただ私は,こういう問題を,業者主導でやるのか,行政主導でやるのかというのがちょっとね,方向性として考えたらいろいろあると思うんです。

 先ほどちょっと市長の御答弁の中には,行政がちゃんとやらなくちゃいけないじゃないかと言われていたんで,恐らく行政主導型じゃないかなと思うんですけれどね,で,行政主導といっても,我々市民の考え方を入れた行政主導なのかどうか,もしこの辺のところで,御答弁をいただければ……,ちょっと繰り返しになりますけれど,業者主導的な形でやるのか,それとも市民の参加的な行政主導でやるのか,そういう方向だけお聞きして,再質問にしたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

◎都市整備局長(石塚昌志君) 行政が主導か業者が主導かといったことでございますが,業者の方もかなり関心はお持ちのようでして,私どもの方にも問い合わせがございます。そういった面では,業者さんのお考えなどもいろいろお聞きしながら,行政としても主体性を持って考えてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。


2000/06/08

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