∬ 鬼はそと! 福は……そと? ∬

 二ヶ月ぶりにヒイロとデュオの二人は、一週間の休日を手に入れた。
 いつもは休日になると、デュオがヒイロを半ば強引に誘い出し、時間を楽しむのだが、今回だけは違っていた。
 ヒイロがデュオを誘い出しのだから実に意外である。
 事の発端はヒイロの些細な怪我から始まった。
 その怪我全てがデュオのせい。
 あの運動神経抜群のヒイロが、デュオを庇って家具の角で足の小指をぶつけたり、ナイフで指を切ったり、挙げ句の果てに携帯許可有りの短銃の手入れ最中に、倒れ込んで来たデュオで利き手の三本の突き指等々。
 とても、怪我とは呼べない怪我ではあるが、全てデュオが関係していた。
 何度も言うが、ヒイロの怪我は全てデュオのせい!!
 因みに、此処数日間の二人の運勢を言うと最悪・最高だった。
 ヒイロの場合、恋人関連で己に災い有り…大凶。
 デュオは、恋人と過ごせば己に一切の災い無し…大吉
 ようするに、デュオはヒイロにとって有害で、ヒイロはデュオにとって無害。
 そんな二人の状況は、プリベンター内で恰好の話題となった。
 プリベンタースタッフ曰く、『最高熱々カップル』が、この間だけは『最悪凸凹カップル』だった。(どっちが凸か凹かは気にしてはいけません)
 そんなある日、『此処数日のデュオって、ヒイロの恋人と言うより疫病神と化してるね。この休暇を利用して厄払いしてきたら?』
 カトルから極上の微笑み返しに、デュオの気分↓状態なのは当然の反応であり、その言葉から大きなヒントを得たヒイロの行動は………

☆★☆    ★☆★    ☆★☆


「さっびー!!」
「ここ日本には四季があり、今は冬季の二月だかな。寒いのは当然のことだ。我慢しろ」」

 空港の外に出て開口一番のデュオの一言に、ヒイロの一喝が入る。

「折角の休日が…ヒイロと一緒に南国の南半球で過ごすはずだった…俺のプランが…」
「場所は違うが、二人で旅行には変わりないだろ。俺のプランに不満があるなら、一人で南国の南半球に行って来い」

 実に不満顔なデュオに向けて、ヒイロは旅客機内でデュオから奪った髪留めのゴムを弾き飛ばした。
 案の定…ゴムは、半ば駄々をこねるデュオのおでこに…クリティカルヒット!!

「イッてー。これが、仮にも恋人にする仕打ちか?」

 殺人的な痛みに必死に耐えて顔を上げれば、既にヒイロの姿はなく、デュオの側にあったのは二人分の荷物だけだった。
 そして、デュオは立ち去ろうとするヒイロの後ろ姿を追いかけた。
 見事な逃げ技を見せるヒイロと、実に情けないデュオの二人を目の当たりにした他の客人には、一昔も二昔も前の○○国際空港離婚(通称:○○離婚)の1シーンに立ち会った心境であろう。
 但し、この二人場合、妻から一方的に見捨てられた夫の図であるが………。


 そして、人前で半ドツキ漫才を演じて見せた二人が向かった先は………。

「あのーヒイロさん…此処…何処?」
「見て解らなければ聞いても解らないと言うことだ」
「もしかして…此処が…噂の日本の文化遺産…神社?」

 目の前に構える古びた神社に、デュオの瞳は点と化していた。

「此処で何をするつもり?」

ヒイロの行動と思考が読めない状態のデュオは、恐る恐るヒイロに訪ねた。

「此処での日時と、この国ならではの風習行事は?」
「AC200年2月3日、"鬼は外"…"福は内"って、豆をまく節分行事だよな」

 過去に聞いた事のある節分行事に、デュオは豆をまく真似をして見せた。

「ご名答。俺としては、厄年でもないに疫病神のお前に愛想が尽きた。お前に関わるとろくな事がないからな、本来の意味と異なるが……俺、自らお前の厄払いをしてやる。逃げる事は認めない」

 物静かに語るヒイロの手には、多量の豆が入った箱があった。が、豆はそれだけでなく、デュオが運んだ荷物一部がヒイロの足下にあり………その中身は、全て豆である。

「ヒイロ?」
「問答無用。可愛さ余って憎さ百倍!」

 ヒイロは大きく振りかぶり、手一杯に握り締めた豆をデュオめがけて投げつけた。
 消える魔球ならぬ、消える豆と化した豆は、次々とデュオにヒットする。

「ス…ストップ。お前が豆を投げたら、器物破損と人身傷害罪になるぜ」
「安心しろ。此処は神社には違いないが、半径2キロ内に見える物全て3Dの偽造映像だ。例外は、俺が持って来た豆だけだ」
「勘弁してくれよ」
「自称、死神が逃げるな」

 器物破損にならなくても、充分に人身傷害罪の領域に違いなく、デュオは逃げまどう。
 そして、節分の豆まき・厄払いの名を語った、ヒイロ風の節分は迷惑としか言い様のないし、その標的となるデュオは逃げる事も叶わず、持ち玉ならぬ持ち豆が尽きるまで生傷が絶えなかった。
 デュオの方も地面に散らばった豆でヒイロに反撃をしようと思ったが、ヒイロの視線が恐くてそれをも断念した。
 一発でもぶつけたら、100倍返しだと言わんばかりの無言の威圧感。
 そんな環境でのデュオの運命は…………………。

☆★☆    ★☆★    ☆★☆


4「あれっ、予定より早い帰国ですね」
3「思ったより、無事だったようだな」
5「奴は無傷で、お前は随分と無様な姿だなデュオ」
2「あのなー、俺の心は蜂の巣の様に傷付いたんだぜ」
4「でも、蜂の巣なら甘くて良いじゃないですか」
3「カトル…それは、フォローになっていない」
5「馬鹿馬鹿しい俺は仕事に戻る」
4「ヒイロからの熱烈な厄払いの感想は?」
2「言葉を間違えるなカトル。あれは、俺の厄払いでなく。あい つのストレス発散の犠牲だ」
4「君がヒイロの疫病神になったのが第一原因でしょう」
2「自分の事を棚に上げて話をするな。俺を疫病神って言った 挙げ句に、ヒイロに厄払いを進めたお前が言うな」
4「そうだっけ?」
3「自分で地雷を踏んでどうするカトル」
4「ねっ、トロワこれが終わったらティー・タイムにしようよ」
2「俺の存在を無視して、二人で逃げるな」
1「一人が淋しいなら、俺が相手をしてやる」
2「ヒイロ。お前のストレス発散の犠牲になったから、今度はお 前が俺の発散相手になってくれるよな」
1「何が望みだ」
2「野暮な事聞くなよ」
1「なら、此処で直ぐ払ってやる。ソフトとハードのどっちだ」
2「えっ、此処で?ハードで頼むぜ」
1「了解した」


2「ヒイロ…もっと、優しくろ。痛いだろうが」
1「五月蠅い黙れ。舌を噛み切るぞ」
……………デュオのストレス発散は・・・ヒイロのマッサージでした。
まさにこれが・・・や お い・・・『山無し 落ち無し 意味無し』

終    話

コメント
   数日前、友人を迎えに行く車の中で考えた駄文です。
そして、友人からは、「14日の存在を無視して節分ネタか!お前は、女じゃない!!」と、力説されちゃいました。
21とも12とも判別不可能なギャグ駄文・・・ギャグの第一作品目なり。
PS 誤字・脱字は気にしてはいけません。笑って見逃して下さい。