小話その6
〜キリリク2・知ってるつもり?の巻〜


さて、今回はキリリクシリーズ第2弾。インドラ様についてのお話です。
私がインドラ様に対して思うのは、
そんなにお先真っ暗な人生、なにが楽しかったんだ!?
ということです。
これは、本当に小説メインな話になるので、ちょこっと説明しますと、
インドラ様は元々、シヴァ様に仕える身、いってみればアスラ側の人でした。
それが大戦中に「ヴィシュヌの首をとってこい」とシヴァ様に言われて天空殿にのりこんだところ、
創造神ブラフマーと闘うことになり、倒されてしまいます。
それからまもなく、破壊神シヴァとアスラ神軍が天空界から追放され、大戦は終結するのですが、
そのとき運良く(?)天空殿にいたインドラ様は追放の対象から外れることになりました。
そしてヴィシュヌ様に命を助けられたインドラ様は、
大戦後、デーヴァ神軍総司令官として生きることになるわけです。

で。

ここまでだと、実は半ばシヴァ様に強制的に従わされていたインドラ様としては、
めでたしめでたしなのですが、そうはいかないんですね。
なにしろ、「追放」なわけですからいつかは戻ってくるわけで、
そのための準備をいろいろやるのが自分であろうことは明白です。
大戦時にヴィシュヌ様に助けられて恩義を感じている上、
元々無意味な争いを好まないインドラ様にしてみれば、
そんなことしたくはないと思うんですが、
自分の体が自分の意志よりシヴァ様の命令を優先してしまうので、
抵抗するのは到底無理。

・・・では、どうするのか。

自分がシヴァ様の手駒になってしまう前に、
アスラ神軍の再来に耐えうるだけの力をデーヴァ神軍につけさせよう。
と、こうインドラ様は考えたのではないか、と私は思うのです。

てなわけで、そんな、いやーな未来が決定しているインドラ様が
ヴィシュヌ様と愛する天空界のためにやったことが
八部衆の皆さんの回想シーンにでてくる厳しい修行や、
迷い水の氾濫時に代表される「お優しいインドラ様の行動」になるわけだと思うのです。
八部衆の諸君には楽しい(いや、修行とかは苦しかったと思うけど)思い出だったあのころは、
インドラ様にとっては、迫り来る危機から天空界を守るため、
残された時間でいかにじたばたできるか、という必死の挑戦の時期だったもしれません。
ひょっとしたら、そのときにはもう、自分が死ぬことまで考えてたのかな、
なんて考えてしまうのは私だけでしょうか?

そして、異動宮接近に伴って、いよいよ裏の活動をはじめたインドラ様は
皆さんの知っている通りの結末を迎えました。
シュラト、ヒュウガとの死闘の末、破れたインドラ様は、彼らに自分の過去を見せます。
それによって彼らは「やはりインドラ様はあのときのままの優しいインドラ様だった」
ということに気づくのですが、
直後現れたガイの攻撃から彼らを守って、インドラ様は力尽きてしまいます。

インドラ様が死ぬ直前にレンゲちゃんに残した
「一人の神将、一人の女として、愛するもののために生きろ」という言葉、
そしてなぜか浮かべた安堵の笑みに、私はなんとなく思いました。
レンゲちゃんの想いをシカトしたり、インドラ様は、一人の男としては失格だったかもしれない。
でも、天空界の親父としては、最高の親父だったのではないか、と。

いろいろありましたが、インドラ様の天空界に対する愛は本物だったと私は思います。
そして、それをいわば子供達のようなヒュウガ達にわかってもらえたのだとすれば、
彼の人生は幸せだったのかな、なんて。

今は(多分)天霊界で隠居生活を送っているインドラ様。
まだまだ天空界から目は離せないみたいですが、
今度は一人の男として良き余生を送ってほしいものです。

---以上、小話でした。

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