妖花散華

Act 1.


トライローが死んだ。

地面の下の本体を叩かれ、ただの抜け殻となった化け物が
断末魔をあげて塵となっていくのを、オレはただ眺めていた。
「美しく片をつける」
そう自信満々に人間界に降りていったあの女は、
無様にも自慢の術を破られて戻ってきた。
手をだすなと言われて傍観に徹したが、形勢は完全に逆転していた。
修羅王のパワーの前に、奴の術は効をなさず、
それでも死に物狂いで勝ちにしがみつこうとして、
なりふり構わず戦った。
その結果がこれだ。

ああ、美しいねえ。まったく、反吐が出るほど美しいよ。
そこまでして、勝とうとした、お前の執念がよ。

奴の趣味は最後までわからなかった。
何が美しくて、何がそうでないのか。

完全に、手詰まりだったじゃないか。
それなのに、華々しく散るでもなく、
潔く諦めて助けを求めるでもなく。
醜い化け物に成り下がった挙句、
一人、惨めに地面の下で死んでいった。
お前がそれを選んだ理由はなんなんだ?

ふと視線を化け物からずらせば、
トライローを倒して、喜びはしゃぎまわる八部衆共がいる。
オレがまだココにいるっていうのに。のんきなもんだ。

その輪の後ろにとりのこされた化け物の残骸は、
奴らにとっちゃもう過去のもので、
オレにとっても、なんの意味も持たない塵の山だけれど。

仮にも同じ「三人衆」を名乗った女だから、
ついでに仇でもとってやるかと、狙いを定めた。


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