オレは呆然とオレの上にのっかっている「それ」を見ていた。
いや、「それら」というべきか。
月明かりに照らされたダブルベッドの上には、
トライローがベッドの下で飼っている妖魔樹共がてんこ盛りになって、
どす黒い葉と枝と触手を蠢かせていた。

・・・何をやっとるんだ、コイツ等は。

「・・・オイ」

こんな奴らにビビッてた事実がもう恥ずかしいやらムカつくやらで、
オレがいつも以上にドスの聞いた声で呼ぶと奴らは慌ててベッドの端に後ずさった。


ゾロリゾロリゾロリゾロリ・・・


謎の音も、正体を見てしまえば簡単なことだった。
奴らの手であり足でもある枝分かれした触手やら枝やら葉っぱやらが
あちこちとこすれあう音だったわけで。

「帰れ。お前らの巣はあっちだろ」

トライローのベッドを指してやると、奴らは一斉にギギ、と抗議の声をあげた。
いや、抗議しているとわかったのが不思議だけれども。
そしてその理由までなんとなく分かってしまったことがもっと不思議だけれど。

「ひょっとして・・・暑いからか」
「ギ」

聞いてみれば案の定当たりだったらしく、奴らは一斉にうなずいた(多分)。
・・・確かに、窓際のこっちは風が通って微妙に涼しいんだよな・・・。
だからオレもこっちで寝てたんだけど。
まあ、この熱帯夜にベッドの下に詰まってろ、なんてのも酷といえば酷だ。
とはいえ。
無理だろ。いくらダブルベッドだとはいえ。
オレ、妖魔樹と添い寝なんかしたくねえよ。

やっぱり帰そう。
少々脅せば奴らも巣に帰らざるを得ないだろ。

そう胸に決め、オレは、力いっぱい殺気を込めた視線を奴らにむけた。




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