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そのころ。 破壊神シヴァの住む黒塔では、 今年度の反省会が行われていた。 塔の最上階にあるシヴァの間。 シヴァの玉座の前に、4人の十二羅帝たちが横一列に正座している。 火帝クビラ。地帝ハイラ。日帝アンテラ。月帝サンテラ。 ただ一人、シヴァの傍らに控える冥帝ビカラは シヴァの説教の終わるのをひたすらに待っていた。 シヴァの説教が長いのはいつものことだが、今回は特に長い。 すでにかれこれ1時間は経っている。 (この状態で、よくもこれだけ話せるものだ・・・) ビカラはひっそりとため息をついた。 一応おとなしく座ってはいるものの、 4人がシヴァの話を聞いていないことは明白だった。 今頃意識は完全に街へと飛んでいるはずだ。 彼らは、例のパーティのことを知っているのだから。 ひょっとして、シヴァの話が長いのは、 早く解放されたがっている4人への嫌がらせなのかもしれない。 飛び出したくてうずうずしている4人を眺めながら、 ふとそんなことを思う。 それで主の気が晴れるのならそれはそれで良いことだ。 けれど、今日に限っては少し困る。 ビカラはちらり、と窓の外を見た。 結局召喚に応じることの無かった風帝バサラの行方が気にかかる。 私怨を原動力として動いているバサラは、隙あらば行動を起こそうとする。 こうしている間に、彼が店を襲撃してしまっては全てが台無しだ。 それはメキラとの約束を破ることになり、 同時にそれは完璧主義である彼のプライドにも大きな傷をつけることにもなる。 (今回のことはシヴァ様の了解もとりつけたはずだが・・・) 何気なく考えたことがふとひっかかった。 もしや、と目線でシヴァの様子を伺ったビカラは、 思わず無表情を崩しかけた。 シヴァが、こちらを見ていたのだ。 毒々しいまでに紅い唇がにやり、と笑う。 気が遠くなりそうになったのは、その邪視のせいだけではなかった。 シヴァの真意に、気づいたのだ。 (・・・嫌がらせされているのは、私か?) ぞくり、と背筋が寒くなる。 反射的に「なんとかしなければ」と考え、 あっという間に「なんとかなるわけがない」と答えにたどり着き、 すっかり絶望に打ちひしがれていると、 あちらもついに耐え切れなくなったのか、クビラがぽつりと口を開いた。 「・・・酒、飲みたいなぁ・・・」 それにつられてうんうん、と頷いたハイラは、シヴァにぎろりと睨まれて 慌てて床にはいつくばる。 「ククク」「臆病者め」 それをアンテラとサンテラが嘲笑した。 普通に正座をしているせいか、その姿には妙な違和感があるのだが、 まあ、それは置いといて。 「誰が臆病だと!?」 ハイラが立ち上がると、 アンテラ、サンテラも、立ち上がりいつものポーズで相対した。 「お前以外に」「誰がいる」 「おのれぇえい!!」 「貴様ら、表へでろ!!!」 3者はそのままにらみ合う。 が、それも続かなかった。 「愚か者!!!!」 シヴァの怒声が響き渡る。 続いて、黒い稲妻が広間中に走った。 「「「「ひぃぃぃいいぃぃっ!!!!」」」」 稲妻に追い立てられ、 4人は一目散に部屋を飛び出していく。 黒い稲妻は激しく荒れ狂い、広間だけでなく塔自体をを半壊させた後、 ようやく鎮まった。 呆然と部屋の入り口を見つめていたビカラは、 ククク、というシヴァの笑い声で我に返った。 「・・・どうだビカラ。肝が冷えたか」 振り向くと、シヴァは満足気な笑みを浮かべていた。 「・・・は」 短く返事をして頭を下げると、シヴァはひときわ大きく笑って 玉座からゆっくりと立ち上がったのだった。 |