Act.2

誤算だった。
まさかアレを耐え切る奴がいたなんて。

裂光弾が生んだ爆風の中から飛び出してきた龍王の槍は
寸分違わず、オレの右胸の古傷を突き刺していた。


他の場所なら、まだ何とかなったのだ。
それなのに。

どうして知っているんだ。アイツが。

忌々しい古傷が、突き刺された衝撃で再び目を覚ます。
全身がこわばって、
昔のように、奴の首を斬り飛ばすこともできない。

畜生。
ヴィシュヌも居ない。
八部衆だって半数だ。
それなのに、オレは負けるのか?


龍王の体から、業火が巻き起こった。
炎は龍へと姿を変え、動けないオレの体を丸呑みにする。

龍王火炎戟。
普段なら鼻にもかからない程度の術だが、
ソーマを失った身体で直接受けるとなれば、話は別だ。

呪詛の言葉を吐く間にも、
業火は容赦なく残ったソーマを削り取っていく。
同時に、膨大な熱量がオレの身体を物理的にも限界に追い込んでいた。
もう激痛は通り越して感覚が無い。
身体が、砕ける。


「死にたくない」


頭をよぎった思いに、自分自身で驚愕する。
そして同時に、ストン、とあの時感じた疑問が腹におちてくる。
そうか、トライロー。お前も。

お前もそう思ったのか?

身体が焼け散る最期の瞬間、
俺は無意識に残ったソーマを全て頭に集めていた。
首だけでも生き残る、僅かな望みに賭けて。


トライロー、もしもお前が見ていたら。
これも「美しい」と言って笑うのだろうか。





お姉さまはきっと「人が生きようともがく姿」が美しい と思ってるのだと思う。
だから自分も「生きよう」として行動した、みたいな。

あっくんの戦ってる姿が美しいとか言ってたけど、
あっくんが無意識に「生きようとしてもがいている」のを 見抜いていたってのもアリかと。

とかいいつつも。
疑問その2である、何でお姉様は助けを呼ばずに 一人で戦うことを選んだのか?については・・・

単純に「かっこ悪いじゃない!」でオシマイだったりする罠。

update 2012/01/26


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