視察後。



神将候補者達の、棒術訓練の視察を終え、
先程までの凛々しい英雄姿はどこへやら。
本来の彼の姿である、
ぼさぼさ頭の猫背姿で、図書室へ向かうイルヴァーナ。
その途中で、どこからともなく現れたメキラが
声をかけてくる。

「イル〜、聞いたよ?女の子口説いてたんだって?」
「は?」

ぽかんとするイルヴァーナ。

「またまた、とぼけちゃって…トライローって本科生。
 降三世明王になってくれー、って言ってたって」
「ああ・・・」

ようやく合点が言った様子のイルヴァーナは、
平然と答えた。

「教官から推薦されたから、見てたんだけど…
 なんかフワフワしてたから、ハッパかけただけだよ」

「…そうなの?オレはてっきり、ユエの後釜候補だと認めたのかと」

メキラがそういうと。
イルヴァーナは、一瞬きょとん、とし。
その後、ははは、と笑うと、さも当然のように言った。

「ユエの代わりなんていないよ。…そうだろ?」

それはそうだ。
確かにそうなのだけれど。
候補生担当の女官情報によると、
そのトライローと言う候補生は、
元からイルヴァーナに憧れていた子らしい。
そしてそんな彼女は、
視察直後、さっそく居残り稽古をするなど、
気合いが入りまくっているという。

(それって、お前、その子…可哀想じゃねえか?)

心中、そう呟いたメキラは。

再び図書室へ向けて歩き出したイルヴァーナを
慌てて追いかけるのだった。




「届け」の後日談。とてもトライロー姉様には見せられない。
イルは天然女タラシです。
そのうえ女心に無頓着なのが犯罪的。
あと、ユエ=先代降三世明王です。
ちなみにイルとユエは戦友ですが、恋仲ではありません。
update 2012/03/15


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